クラウンレース(Crown Race)というパーツはフォークの上面にあり、ヘッドチューブ下端のベアリングと接触する薄い金属パーツです。カーボンバイクでは使われないこともあるので、その存在を意識したことがない方も多いと思いますが、バラ完でフレームから自転車を組む場合「クラウンレース・インストーラー」と呼ばれる専用工具を使って自分で打ち込む必要が出てきます。
今回1.5インチ(=1 1/2インチ)のテーパードフォークにクラウンレースをインストールするための道具を自作する必要に迫られたので、やってみたことをご紹介します。
しかし、最初にお断りしておきます。この自作工具は使い勝手も良くなく、作業過程は危険も伴うので整備経験が少ない方には決しておすすめしません。
クラウンレース・インストーラーの仕組み
私はCYCLUS製のクラウンレース・インストーラーを持っています。きちんとしたものです。これはメチャクチャ重たい金属製の筒で、クラウンレースをフォークコラムにある程度まで手で押し込んだら、この筒をコラムにかぶせて垂直にカンカン動かして使います。
重さがあるので、上から落とすだけでもクラウンレースがある程度下に入っていくほどです(ハンマーを使わずに入ってしまうこともある)。レースの全ての面に均等に接触し圧がかかるので、レースが斜めに入ったりすることもなく、これで数回叩くだけでコラムの奥まで落とすことができる優れものです。今回もこの道具を使う予定でした。
塩ビ管で自作したクラウンレース・インストーラー
しかし最近手に入れたカーボンフォークにクラウンレースを入れようとしたところ、はたと気付きました。そのフォークは「1 1/8 – 1.5インチ」のテーパード管で、上のクラウンレース・インストーラーは「1 1/8インチ」のストレート管用。下まで入っていかないので、当然使えません!
専用工具の作業性の良さと安全性はよく理解しているので、すぐに対応品かアダプターを購入しようとしました。しかし当時、どれも納期が1ヶ月のものばかり!クラウンレースを自分で入れる人はほとんどいないのでしょうか、モノがあまり流通していません。
さすがに1ヶ月は待てないため、今回は塩ビ管で自作することにしました。完成したのがこちら。
クラウンレースを持ってホームセンターに行き、塩ビ管コーナーでサイズが合うものをチェックしたところ「VU 40」というサイズ(呼び径40mmらしい)がピッタリでした。1mで売っていたので、作業しやすいよう33cmくらいにカット。クラウンレースへの接触面は、切り口がギザギザな自分でカットした部分ではなく、きれいな反対側を使いました。
さて、このパイプをフォークコラムに被せ、上からハンマーでガンガン叩き入れるわけですが、簡単な作業ではありません。本当はパイプの上にキャップがあればハンマーの力がある程度均等に伝わって作業しやすいのですが、私が行ったホームセンターではこのパイプに合うキャップは売っていませんでした。キャップがあるかないかで天と地ほどの差があるでしょう。
最初はゴムハンマーで優しくコンコンと叩いてみました。しかしそんな生易しい力では全然無理。やむなく重く大きいショックレスハンマーでパイプの上をガンガン叩きます。フォークは何かに固定しておくことはできないので片手で持ち、パイプの下端を左手でクラウンレースに密着させたまま、右手で上端を叩く、という作業です。
専用工具を使いましょう
作業完了まで30分近くかかったような気がします。途中で腕が疲れ、集中力も切れてくるので、ハンマーがパイプからスカッと外れてしまったことがあり、かなり危ない作業でした。私の場合はなんとか作業を終えられましたが、パイプ下端の断面とクラウンレースの相性が悪ければ表面を痛める可能性もありますし、ミスをするとフォーク本体を壊したり怪我をする恐れもあります。
ちゃんとしたクラウンレース・インストーラーを使い、レースがどのように入っていかなければならないかを見たことのない方には決しておすすめできない自作工具です。時間もかかりますし、体力も必要で、それに危ない。余程の事情がなければ専用工具を使うべきでしょう(作業してくれるショップがあるならお願いするのも手)。
正直、私はこの自作工具で作業したことをどちらかと言うと後悔しています(今回のクラウンレースがかなり入りづらかったこともあります)。
下の工具はAmazonで2,360円。海外発送で到着まで1ヶ月かかりますが、急ぎでなかったら絶対こうした専用品を使いたかったですね。こういうものなら作業は数分。塩ビ管は2〜300円で買えますが、労力が半端ではないので個人的には全くおすすめしません。専用工具でやりましょう。