カナダのサイクリストが舗装路をダウンヒル中、熊と衝突したというニュースを海外メディアが伝えています。
出典 ‘Glad to be alive’: Man T-bones bear while cycling in North Vancouver
サイクリストと熊、それぞれが取った決断とは
- ノースバンクーバーのサイクリストがローワー・シーモア・コンサベーション保護区で熊に側面衝突し、現在回復に向かっている
- Kevin Milner氏は火曜日の夜8時30分頃、シーモア・バレー・トレイルウェイの8km道標付近(舗装路)をダウンヒルしている時、角を曲がろうとした時に黒い熊を目撃した
- 30歳の同氏は一瞬で判断を下さなければならなかった ーー 急ブレーキをかけ、同じように仰天している熊のすぐ隣で停車するか。それとも熊をかわしつつ前進するか。
- 不運なことに、Milnerと熊はどちらも同じ出口戦略を選択した
- 「私がその決断を下したとき、奴も走ることに決めて道路を横切ってきた。ちょうど私の前に出てきて、私は奴の肩甲骨のちょうど後ろに突っ込みました。私は熊の上で回転しました。ほとんどキスしかけましたが、空を飛んでいったように思います」
- Milnerは身体の側面から着地し、熊は藪の中に姿を消した
- ほどなくして他のサイクリストがたまたま通りがかり、助力を申し出た。2人の若い女性が携帯の電波が入るところまで南に下り、911に通報した。もう1人、e-bikeに乗った男性がMilnerのそばで待機した
- 彼らは15分間待った。だが次にやってきたのは、救助隊ではなかった
- 「(e-bikeの男性は)ウソだろ、おい。戻ってきた。熊が戻ってきた、という感じだった」とMilnerは語る
- 熊が衝突でMilnerよりもダメージを受けていなかったのは明らかだった
- 「この熊どもはピックアップトラックみたいに頑丈じゃないか。俺は死ぬ、と思いました」
- 熊は付き添いの男性が怪我人から追い払おうとしても動じることはなかった
- 「あいつは好奇心たっぷりで、よう、どうしたんだよお前は、という感じで私を見ているように思えました。それから草を食べはじめました。この日は奴の勝ちでしたよ」
- この時になるとアドレナリンが吹き出し、Milnerはもう助けを待っていられなくなった。唾には血が混じっており、内臓を損傷したのではないかと不安になったが、歩くことも、脚を上げることさえもできなかった
- Milnerはそばにいた男性に、彼のe-bikeを貸してくれないか、自転車にまたがるのを助けてくれないかと頼んだ。満身創痍ながらも、Milnerは森の入口まで乗っていくことができた。途中で、助けを呼びに出ていた2人の女性を通り過ぎた
- 「(e-bikeについて)あれは最高だな」
- ブリティッシュコロンビアの医療救急隊が森の入口で合流し、同氏はライオンズ・ゲート・ホスピタルに搬送された。彼は治療スタッフからミニ・セレブのような扱いを受けたという。一晩入院し、検査と経過観察が行われた
- 熊との遭遇で彼が受けたダメージは、肩甲骨骨折・心筋挫傷・肋骨打撲・擦過傷・痺れであった
- 「胴体の左半分がまるごと歯医者にかかったみたいでしたよ」と、息を切らせながら同氏は語る
- リン・バレーで育ったMilnerは、これまでずっとローワー・シーモア・コンサベーション保護区でライドを続けてきた。だがそれはもう終わりになるかもしれない、と彼は語る
- 「保護森林で私がライドする理由は、クルマの交通を避けたかったからなんですよ? でも熊に衝突した今となっては、クルマのいる道路を走っていたほうがより安全なような気がしています」
教訓:多分なし
これはもう回避しようがない事態ですね。よく道を歩いている時に、向こうからきた人をよけようと横にそれたら、相手もこちらをよけようとして同じ方向にそれてきて、またぶつかりそうになってしまう。あの状況だったわけですよね。熊を相手に。しかも、こちらは止まれない。こういうのを「連続回避本能」と呼ぶらしいです。
サイクリストが熊に遭遇した、というニュースは珍しくないとは思いますが、瞬間的に下した判断が裏目に出てしまったことだけでなく、たまたま通りかかったサイクリストがいたり、熊が戻ってきたり、e-bikeが活躍したなどのエピソードはまるで映画のワンシーンのようです。
明るいライトは当然つけていたでしょうし、やれることは他になかっただろうな、という気がします。しかもカーブの先での出会い頭。ただ、熊は薄明薄暮(早朝や月明かりのある暗い時間帯)に活性が高いと聞くので、深い山の中を走るのは明るい昼間に限定したほうが良さそうではあります。
なお参考までに、このニュースではダウンヒル中の事故ですが、ヒルクライム中も気をつけたほうが良いように思います。特に疲れて地面を見てしまっている時です。著名な登山家の山野井泰史氏は、奥多摩の山でトレラン中、下を向いて坂を登っていた時に前方に熊の親子がいることに気付かず、そこに突っ込んでいくことになって襲われたそうです。