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離島とキャッシュレス経済について

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先日、離島に自転車旅行に行きました。その島では、ほとんどの食堂や商店でクレジットカードが使えません。港の施設や大きめのホテル、一部のスーパーで使えるところもありますが、比較的人口が密集している港にある食堂でお昼を食べる時でも、クレジットカードが使えるところはほとんどありません。

また、レジで現金で支払っても、こちらからお願いしなければレシートを渡してくれないところがほとんどです。私は確定申告しなければいけない人間なのでレシートを保管する必要があるのですが、この島でレシートをもらうことは諦めました。

この島の町の食堂で「レシートをお願いします」と言うことは、どこか場違いな、間違っていることのように思えはじめたからです。

下の記事でも書きましたが、サイクリストにとってキャッシュレスは大変ありがたいものです。茨城県の霞ヶ浦近辺を走っている時、自動販売機の多くで交通系ICカードを使えたのは感動しました。

サイクリストとしてはキャッシュレスがありがたい
茨城県の「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の一部を走ってきました。廃線路の跡地を利用した全長40.1kmのサイクリングロードで、もとの駅のうちいくつかが休憩所として整備されています。そのひとつ、筑波休憩所でドリンクを買おうとしたら、PASMOが...

離島にも浸透しはじめたPayPay

とはいえ、その離島に今年2度目の訪問をしたところ、前回は見かけなかったこんなのぼりがありました。話題の「PayPay」です。なんと自家製のサンマをキャッシュレスで買える…!

離島で見かけたPayPayののぼり

ついに来たか、と思いました。と同時に、

いや、いいよ。この島、キャッシュレスじゃなくてもいいよ。

と思ったのも、事実です。

そりゃぁキャッシュレスのほうが便利です。クレジットカードも使えるのなら、毎月の支出も確定申告をする際にも管理が非常にラクなのです。私はどちらかというとキャッシュレス推進派です。メリットのほうがデメリットよりもはるかに大きい、というかデメリットを感じません。

でも、この島はそういうのから無縁でいいんだ、とも思ったのです。

この島にはコンビニはひとつもなく、都市銀行はみずほ銀行の支店がひとつ、あとは地銀がひとつあるのみで、ATMは郵便局にしかありません。だから、こういう離島に旅する時は、現金を多めに用意しておく必要があります。

また、食事やお土産物屋さんで買い物をする時は、離島に限らず地方の小さい町でもそうですが、なるべく小銭で払うか、1,000円札で払うのがベターです。1万円札を出すと、大体イヤそうな顔をされるか、迷惑がられます。

観光客が来るのはわかっているのだろうから、お釣りを用意しておくのが筋だろう、というのは観光客側の論理です。今時Airpayでも楽天Payでも何でも用意できるだろ、というのも、観光客側の論理です。島の経済はちょっと違う仕組みで動いています。

いつもの自分の習慣やルール、行動原理が通用しない、と思ったら、相手を非難するのではなく、そこには自分の知らない論理が流れているのだ、それはどういうものだろう、と好奇心を持って接したほうが、旅は楽しいものになります。これは人間関係についても言えることですね。

「しまぽ通貨」のこと

さてこの離島ですが、PayPayの他に「しまぽ通貨」という地域通貨も使えます。

公式サイト 東京諸島へお得に行こう!電子しまぽ(しまぽ通貨)ホームページ

これは東京都が助成しているシステムで、東京の島嶼部をより多くの観光客に訪れてもらうための、地域振興策です。私達が「しまぽ通貨」を8,000円で購入すると、現地では10,000円分の通貨として使えます(そのうち3,000円分は宿泊用以外には使えません)。差額の2,000円分は東京都が負担してくれます。

しまぽ通貨

期間限定の地域通貨であり、私がいつも使っているVisa, Mastercard, JCBのようなクレジットカードとの連携機能はありません。スマホでアプリをダウンロードしてこの通貨を買って、現地でもスマホで決済する、という仕組みです。

この「しまぽ通貨」に加盟している食堂や商店は結構増えていて、小さいたい焼き屋さんでも使えたりします。一応、キャッシュレスです。

島京梵天

島京梵天

ただ残念なことに、東京から進出したあるゲストハウスがこの「しまぽ通貨」のシステムを悪用し、差額のマージンを騙し取る、という事案が今年の春に発生し、「しまぽ通貨」は初回購入時に本人認証が必要となり、割引率も下がったりと、使い勝手がやや悪くなってしまいました。

参考 しまぽ通貨の不正利用について

と、またまた話が少し逸れてしまいましたが、こうした離島でもキャッシュレス化が進みはじめている状況は、不思議なことに、嬉しさよりもある種の危機感を感じました。

というのも、キャッシュレスやクレジットカードは確かに便利だけれど、それに慣れきってしまっている都市生活者の、時には傲慢な行動論理も同時にこれらの島に持ち込まれる機会がさらに増えてくるように思ったからです。

先に紹介したゲストハウスによる不正は、それを象徴するような事件だったように思います。

システムの導入自体のハードルは、各種助成金があればそれほど大変なことではないでしょう。しかしそれ以上に大切なのが、現地での経済活動の理解です。それなしにキャッシュレスのインフラを導入しようとしても、たぶんうまく行きません。

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2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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