SENSAH EMPIRE PRO 2x12を実際にロードバイクに取り付けて50kmほど走ってみました。この記事ではセットアップ時に気付いたことや初期使用感を中心に書いていきたいと思います。
※今回はあくまで「初期」使用感です。
インストールとセットアップについて
使ってみた感想に入る前に、組み付け中に感じたことなどを軽く書いていきます。
カセットスプロケットの取り付け
SENSAH EMPIRE PROに付属する12スピードカセットのいちばん良いところは、シマノのマイクロスプラインやスラムのXDドライバーといった特殊なフリーハブを使用することなく、現状でシマノやスラムの11スピードカセットを使えているホイールであればポン付けが可能なところです。手持ちのホイールですぐに使えるのはとても嬉しいですね。
私の場合は、Mavic Cosmic Eliteというチューブレスレディホイールに付いていたアルテグラの11スピードカセットを外して、SENSAHの12スピードカセットをそのままハメるだけで問題なく使えました。スペーサーとかそういうものも不要です。ここは何の問題もありませんでした。ロックリング工具もシマノ用がそのまま使えます。
なおロックリングの締結トルクは40Nmが推奨値。
チェーン長の調整
SENSAHが推奨しているチェーン長の調整は一般的なもので、「アウターチェーンリングとスプロケットの最大ギアにチェーンを渡した長さ+2リンク(1リンク+付属のミッシングリンク)にすればOK。全然難しくありません。その長さで実際にうまく行きました。
あとチェーンには特に表裏はないようです。悩まなくていいので、楽ですね。
シフター・ブレーキレバーの取り付け
シフターのハンドルバーへの取り付けも至って普通。6mmヘックスボルトを6-8Nmで締めます。
シフターのアウターケーブルの位置は2つ選択肢があるのですが、私はR8000アルテグラと同じ「斜め」のルーティングを選びました。これで問題なく動作しています。ちなみにインナーワイヤーはシフターに取り付けた状態で付属していたので、そのまま使っています。SRAMと同じですね。
自前で用意したブレーキインナーは簡単に入れられました。シマノなどと一緒です。ただ、アウターはR8000に付属しているような先の細いノーズキャップは入らないので、シフター側にはぶった切ったアウターケーブルをそのまま入れる感じになります。
ハンドルへのブラケット締結の推奨値は6-8Nmです。
リアディレイラーの取り付けと調整
リアディレイラーの取り付けも特に問題なし。一点気をつけたいのは、Shimano R8000 Ultegraのリアディレイラーと比較した場合ですが、アウターケーブルが少し長めになりました(使い回そうと思ったら短かったw)。
調整はシマノと同様、ハイ・ローの調整と、Bテンションボルトの調整をやるだけです。この3つだけ。詳しくは下の記事をご参考に。
リアディレイラー固定時の推奨トルクは8-10Nm。
▼ 追記:リアの変速の様子を動画で撮ってみました。
フロントディレイラーの取り付けと調整
フロントディレイラーの取り付けと調整も特別なところはありません。アウターチェーンリングの歯先とケージのあいだの距離が1〜3mmになるように、かつチェーンリングと平行になるように設定する、という当たり前の手順を踏めば良いだけです(ただ、後述しますがやや精密さが求められる印象です)。
そしてシフトアップした時にケージが外側に行きすぎてチェーンが落ちたり、ディレイラーケージに当たってノイズを出すようであればケージの可動域を調整する。ハイ側とロー側をそれぞれ調整する、というのも一般的なFDと同じです。ケージのインナープレートとチェーンの距離は0.5mm-1mmが推奨値。
しかしSENSAH EMPRIRE PROでいちばん調整がデリケートなのがこのフロントディレイラーでした。可動域もプレートの平行出しもかなりギリギリのセッティングが求められる感じで、結構時間がかかった…
と言っても30分くらいじっくり、丁寧に様子を観察しながらの作業で済むと思いますが、普段ディレイラーの調整をショップに依頼されている方であればちょっと苦労するかもしれません。外側にトリム操作した時にクランクに当たらないようにしつつ、いい感じでアウターに乗るようなセッティングを出すのに私も苦労しました。
必要な工具はプラスドライバー。フロントディレイラーの調整は、屋外では困難を極めるので自宅でほぼ完璧に詰めておきましょう。
フレームへの締結は5-7Nmが規定トルクです。
実走してみた
R8000 Ultegraで組んであるバイクにEMPIRE PROを移植して乗ってみました。クランクとブレーキキャリパーのみアルテのまま。故にチェーンリングはシマノ11スピードのものそのままです。
ブラケットの感触は違和感なしです。形状がR8000アルテグラのそれによく似ているからでしょう。
そろそろと乗り出し、リアの変速をパチパチ試してみると…
楽しい! 安っぽくない! 音が気持ちいい!
というのが第一印象でした。
戸惑ったところも勿論あって、リアのシフトアップがかなり軽いのでブラケットを握り込んだ時に間違って変速させてしまうことがよくありました。でもすぐ慣れました。
リアの変速はレバーを軽く内側に倒すと「カッ」という音がして、それでシフトアップします(ギアが重くなります)。レバーをさらに内側に押すと「カッ・カッ」とクリック音が2回聞こえて、シフトダウンします(ギアが軽くなります)。
シフトアップは1段づつですが、シフトダウンは一気に2枚飛べます(SRAM同様、ストロークは長いです)。
フロントディレイラーはトリム機能があって、アウターxロー(いわゆるBig-Big)やインナーxトップのようにチェーンラインが厳しい時、チェーンがフロントディレイラーのプレートに擦ったら(というか絶対に擦る)微調整できます。
フロントディレイラーについては個人的にもうちょっとだけ調整を詰めたいので、あらためてまた書きたいと思います。自宅のワークスタンドでは完璧に調整できたつもりだったのですが、実走したらまだまだだったことが判明。
操作や作動感はさすがにシマノのFDのほうが上だと感じますが、これも設定次第かもしれないのでとりあえず意見は保留。シマノを使っている方だとトリムを含めた変速操作が慣れないかもしれません。
FD、ちょっとデリケートなのは間違いないです。FDばかりはなぜかカンパもスラムもシマノに及ばないとよく言われますが、どんな秘密があるんでしょうね。
私はスラムのダブルタップを自分で組んで所有したことがないのですが、CBNのダブルタップ関連レビューを読むとその多くの使用感はこのEMPIRE PROにも当てはまります(長所も弱点も)。フロントディレイラーも似ているかも?(何故似せたw)
ブレーキレバーの動きはしっかりしていて好感が持てました。レバー、わりと剛性あると思います。効きは悪くありません。R8000のSTIに比べて劣る感じは特にないです。
まだ50km程度乗っただけではありますが、とりあえずの印象としては
という感じで、想像以上に良いものでした。あと、使っていて楽しい!
誰におすすめできる?
50kmほどをメチャクチャいろんな変速を試しながら乗りましたが不具合などはまったくなく、トルクがかかっている時の変速もリア・フロントともに良好です。ただ、私はレースをやらなのでそういうシリアスな使い方でどうなのかは判断できません。坂道はかなり乗りましたが、ヒルクライムに行ったわけではありません。
値段を考えるとセカンドバイクに組み込んで楽しんでみよう、という方が多いと思いますが、
用途をセカンドバイクに限定するのは、ちょっともったいないかもしれない
というのが正直な感想です。クオリティ、高いです。
あとは、左レバーの機能がもったいなくはなりますが、1xで使うのも大いにアリじゃないかと思います。ブレーキレバーとしての感触も安心感があっていいので、TRPのHY/RDなどと合わせて1xのディスクロードで使うのも面白いんじゃないでしょうか。
11-34Tのカセット(歯数構成は11-12-13-14-17-19-21-23-25-28-31-34)も、1xで使うのにピッタリですよね。個人的にはまんなかへんのレンジがもう少しクロスレシオのカセットも出てくれると嬉しいです。カセットの単品売りは本当に切望。1xのバイクに入れたい。高くても買う!(笑)
長期使用での耐久性や補修部品の供給性など未知数のところはありますが、既に10スピードや11スピードで実績のあるメーカーなので、そこは期待を持って使っていきたいと思います。
ブラケットで親指が当たるあたりはSRAM同様に空間があるのでブラケットカバーの耐久性も要観察。でもきっとなんとかなる(してくれる)でしょう。保守パーツが増えればユーザーも安心して買える→ユーザー増える、というわけなので用意しない理由がないでしょう。amazonの同社製品レビューを読むとサポートも反応良いようですしね。
あらためてまとめると「低価格中華製品にありがちな安っぽさ、オモチャっぽさは全く感じられない」のが好印象でした。技術的に枯れた機構を丁寧に、うまく仕上げていったな、という感じです。
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