これからスポーツサイクルを始めようとしている入門者の方と思われますが、トレックストアに注文した「Marlin 5」というMTBの2022年モデル(定価$669.99)を受け取りに行ったところ、公式サイトに記載されているものとは違うパーツが付いていた。私は詐欺にあったのでしょうか? という質問を海外掲示板Redditに投稿されています。
ロードバイクやクロスバイク、MTBの完成車を何度か買ったことのある方なら「あー、それは普通にあるよ!」と思われる話かもしれませんが、入門者の方には不思議に思えるところがあるだけでなく、最近のコロナ禍も手伝って事情が少し複雑になりつつあるようにも見えます。
出典 Did I Get Scammed By Trek?(私はTrekに騙されたのでしょうか?) – Reddit
グリップもサドルも違う。ペダルもない!
以下、スレ主さんの投稿の概要です。
- 注文したTrek Marlin 5 2022モデルを受け取りにトレックストアを訪れた
- しかしグリップはスペックシートに記載されているBontrager XR Endurance Comp(ロックオンタイプ)ではなかったので店員に指摘したところ、間違っているのはあなただと言われた
- その後店員は他のトレックストアと連絡を取り、他の店舗でも同バイクには同じグリップが付いていると告げた
- ペダルも付いていなかったので質問したところ(スペックシートにはVP-536が付属と記載)「実際に乗る用ではないけれどテスト用のペダルなら付属する」との回答
- その後、サドルはスペックシート記載のBontrager Arvadaに近いものであるようには見えるが、ロゴがないことに気付いた
- ブレーキもTektro HD-M275(油圧ディスク)ではなく、”radius”というラベルのあるものになっていた
- ブレーキローターもTrekサイトに掲載されているものと同じではない
- 私はショップに騙されたのではないかと心配している。何故パーツが変更されているのでしょうか? 私は明日、クルマで1時間半かけてこの自転車を返品しに行こうと思っているのですが…
ある程度の仕様変更は普通です
多くの方がご存知のように、完成車パーツの仕様変更はよくあることですよね。サドルやグリップ、ロードバイクならバーテープ、ハンドルやシートポストのモデルや、場合によってはブランドも違うこともあります。
大部分の完成車スペックシートには「これらの仕様は予告なく変更される場合があります。また画像はイメージであり、あくまで参考情報として提示されています」という但し書きが付されることがほとんど。また、エントリーレベルからハイエンドまで、ペダルが付属するとしてもあくまで「乗って帰るためのとりあえずのもの」であることが多いです。
サドルやグリップ、バーテープ(時にはハンドル)やペダルといったコンタクトポイントは個々人による好みが大きく異るため、最初から高価なものが付いてくることはどちらかというと少ないでしょう。それらは必要に応じて後で自分で交換するもの、という不文律があるためです。
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そのため上のスレ主さんも他の方々から「いや、そういうのは自転車業界ではよくあることだから、あまり気にしないほうがいいですよ。でも店員さんはもうちょっと丁寧に説明してくれたほうが良いかもね」というアドバイスをもらっていて、和やかな会話になっていました。
コロナ禍で製造工場はパーツ調達に必死?
というわけで、トレックストアの店員さんが自分のMTBから良質なパーツを外して安いパーツに付け替え、元のパーツを横流ししようとしていたんじゃないか… と疑心暗鬼になっていたスレ主さんは自分が詐欺にあったわけではないことを知り、ホッとしたようです。
しかしディスクブレーキがTektro HD-M275ではなく、”radius”という聞き慣れないブランドの製品に交換されていることについては多くの方が「そこだけ気になる」と発言。
この”radius”ブレーキはスレ主さんが投稿された写真を見ると一応油圧ディスクではあるようですが、現時点ではAliexpressでしか確認できない謎ブランドの製品です(相当前から流通はしていますが公式サイトなどは存在せず)。
このブレーキが気になるなら返品する理由になるとは思う、割引を要求したくなるのもわからないではない… と多くの方が言っています。私もここは同意。Tektro HD-M275も廉価なパーツですが、さらに安いと思われる無名ブランドのブレーキだとちょっと心配です。
しかしこうした謎パーツまで採用されているのはコロナ禍が関係しているようです。組み立て工場は、必要なパーツを調達できないことによる完成車の納品遅延よりも、近い性能のパーツを調達してなんとかブランドに納品する。ブランドもそれは受け入れる。という構図があるようです。
ただ、こうした細かい仕様変更は販売スタッフにはうまく伝わっておらず、それに加えて物理店舗はもう何ヶ月もクリスマス商戦時期さながらの繁盛ぶりらしく、経験の少ない従業員も新たに雇用しているため、現場も混乱しているのではないか、との指摘もありました。
サドルがちょっと違う!ロゴがない!タイヤも何か微妙に違う!といったことはこれまでにもよくありましたし、これからもあると思いますが、「Tektroじゃなくてradiusという聞いたこともないブレーキが付いてきた!」はコロナ時代の新しい現象であるような気もしました。
いずれにしましても、当分は自転車パーツの供給不足が続きます。radiusのブレーキが気に入らないから返品する、と決断したとしても、Tektroブレーキ付属のバイクがすぐに手に入るわけではないので、すぐに乗り始めたいのであればある程度妥協して受け入れる必要もあるでしょう。
そのTektroですが、なんと2年分のバックオーダーがあるという噂も!