ホラ、キャリミーいー
もひとつ キャリミー
ヨーグルトスカッチ派、nadokazuです。
というわけで、本日の駄文はこちら!
キャリーミーって、どんな自転車?
Pacific CarryME。キックボードと見まがうような8インチサイズのタイヤを装備した「極小径自転車」です。このあまりにも小さなタイヤのおかげで、折り畳み時のフットプリントは実に「A4サイズ」に収まります。
市販されているどの自転車とも、ほぼ被らないポジショニング。ブロンプトンにもDAHON K3にも到底辿り着くことができない、コンパクトサイズの境地に達してしまった「究極の折り畳み」と言える一台です。
すごいです…これが…折り畳み自転車の高みなんですね…。
▼ 参考記事
キャリーミーで、どう遊ぶ?
超絶コンパクトになる、究極の折り畳み自転車キャリーミー。そのストロングポイントは、なんといっても「圧倒的な輪行しやすさ」。
ホイールが必要とするスペースが極端に少なく、そのうえ変形フォームは縦型。扉の脇の謎スペースにだって、余裕で収まってしまいます。さすがに満員電車には乗車できませんが、座席がほぼ埋まっている程度の混雑具合なら先頭/最後尾車両への移動の必要性を感じません。いつもの輪行では欠かせない、車両最後尾座席の確保だって不要!乗車する列車がホームに入線してきたとき、最後尾座席空いてるかな…というヒヤヒヤ感に怯えることが無くなります。これ、輪行の革命なのでは?
そのうえ普通の輪行自転車では通り抜けることが困難な、狭い狭い階段を登る普通車グリーンの2階席にも余裕で持ち込めちゃう。それこそ路線バスにだって、すんなり乗せてもらえる可能性が大きいでしょう。
キャリーミーなら「目的地に行く」だけでなく、「目的地と目的地の間を移動する」ためにも輪行が活用できるのです。
たとえばJR東海が駅スタートで様々なテーマに沿って歩く「さわやかウォーキング」という企画を実施していて、そのコースマップをパク…参考にするとイイ感じのゆるポタコースが見つけられるのですが、キャリミを使えば
輪行して沼津に行く → 沼津駅周辺のコースを走る → 沼津駅から伊豆長岡駅まで輪行して別のコースを走る → 輪行で帰宅する
みたいに、1日に複数のコースを回ることも容易です。
「それ普通のスポーツ自転車なら、エリア間の移動も含めて自転車移動で済むでしょ?無駄じゃね?」
とも思えてしまえるのですが、キャリミを使ったサイクリングのオモシロさって「自転車で走って楽しむこと」とは別のところにあると思うのです。
後述しますが、キャリミは「走って楽しい」自転車ではありません。スポーツ自転車に乗り慣れていると、むしろ走ることが苦行に感じるレベル。
けれど、この「歩くよりは速いけど、普通の自転車より圧倒的に遅い」というスピード感こそが、キャリミの真骨頂。
「ゆっくりだけど、効率的にいろいろ見て回れる」という、ふだんのサイクリングとは別のベクトルで楽しみ方が広がります。「暗渠・川跡めぐり」「史跡めぐり」「鉄道遺構さがし」みたいな「観察/探索する」という遊び方には、ものすごく向いてると思います。
ただ、そのためには下調べやポイント間移動の最適化を含めた「旅の企画力」が、極めて重要。「輪行した旅の先で走れば、それだけで楽しめる」という、普段の輪行サイクリングとは別のプランニングスキルが求められます。
「自転車だけが好き!」なのではなく「自転車は好きだけど、ほかにも色々なことが好き!」というタイプの方に向いているのかもしれません。
キャリーミーはやめておけ!と言いたいケース。
「キャリーミーは極小径車だけど、その気になれば長距離も走れるし、いざとなったら登坂もできる」
SNSに投稿された数々の偉業を見て、そんな風に思ってはいらっしゃいませんか?
「富士山スカイラインでキャリミ目撃→即特定」https://t.co/4XDqm1nWGO
が伸びてるみたい。私も読みに行かないと! 作成者:@nadokazu— Togetter(トゥギャッター) (@togetter_jp) August 16, 2023
私は、完璧にそう思っていた一人。ですが試乗でキャリミのペダルを踏んだ瞬間、実はそれがとてつもなく大きな誤解であることに気付きました。
キャリミ、激烈に遅いです。
平坦は、インナーローでずっと走り続けてるような感覚。ペダルこそ軽いのですが、踏んでも踏んでも、ちっとも前には進みません。そして斜度が3%を超えると、こんどはアウタートップで登坂するような踏ん張りが必要になります。その辺にある普通の坂が、キャリミで走るとアッと言う間に激坂化。悲しみの押し歩きを余儀なくされます。
徹頭徹尾こんな感じなので、一般的な範疇で語られる「普通の自転車生活」を送ることはキャリミだと不可能です。
「ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!」
と言われても、甘んじて受け入れるほかないでしょう。
DAHON K3で平坦路を200km走るぐらいなら、時間さえかければ誰がチャレンジしても普通に達成できます(n=1)。ですがキャリミは、遅さの世界観が異次元レベルで違います。
数百キロ走ったり、渋峠や富士山五合目に登坂したりできるのは「類い希なる特別な才能の持ち主」だけとしか思えません。
「遅いのが楽しい!」
ぐらいに訓練された感情を持っていないと、あまりにも低い走行性能に頭を抱えることは間違いありません。
「意外に走ってくれそうだから、輪行ラクラクのサイクリングを楽しめそう」
そんなイメージを持ってキャリミを検討している方がいらしたら、わたくし全力で止めにかかりますよ!!
自転車セールの季節!冬の終わりは、危険がいっぱい!
春になると、自転車に乗りたくなる。それは遺伝子レベルで本能に刷り込まれた、人間の習性です。
それを見越しているのでしょう。自転車店は、ここぞとばかりにセールやキャンペーンを張りまくります。そうなると普通にネットを彷徨っているだけでも
「車体価格10%分の用品をプレゼント!さらに輪行袋も無料!」
「残りわずか!」
こうした極めて危険性の高い情報に、大量接触してしまうことが避けられません。
凶悪にも程がある煽り文句による強力な精神攻撃は脳を焼き、正常な判断力を喪失させます。抗うことなど、できるはずがありません。
「新しい自転車、いつか買えればいいなぁ」
ぐらいにしか思っていなかったのに
「買うなら今だろ!!乗るしかないこのビッグウエーブに!!!」
と感情が強制的に上書きされてしまいます。自分の意思に関係なく物欲機関車が全力の暴走を始め、気がつくと外泊証明書にしては大きい書類にサインしてしまうのです。
これこそが恐るべき闇の組織による、精神操作の真実です。私が後先なにも考えず、物欲に身を任せたわけではありませんからね?【本当】
キャリミで走ってみた!
誰がどう見ても明らかな不可抗力によって、キャリーミーを購入することになりました。でもまぁ、納車されてしまったものは仕方ありません。というわけで、さっそく走りに行ってきました。
輪行して下車したのは、京急線の横須賀中央駅。そこから走り出して、到着しました!ヴェルニー公園!!
ミニベロを置くと残念な写真になるサイクルラック(©@IMAGEDRIVEさん)で、残念な写真を撮ったり
ヘリコプター搭載護衛艦(空母ではない)をバックに写真を撮ったりしたあと
横須賀駅から輪行して帰路に着きました。
ヴェルニー公園内は押し歩きなので、走行距離は数百メートル。輪行のラクチンさだけを思い出にして、キャリミの初ライド終了です!
さらにキャリミで走ってみた!
キャリーミーの代理店であるパシフィックサイクルズジャパン(株式会社ファビタ)さんのYouTube動画を見ていて、とあることに気付きました。なんだかこの公式動画、自分の住んでいる横浜市鶴見区の解像度だけが異様に高いんですよ。地元民でなければ知らない激坂、見覚えしかないパン屋のほか、鶴見の超マイナーなスポットがバンバン登場します。
いったいどゆことー?と思っていたら、それもそのはず。本社所在地、同じ鶴見区内でした。そのうえTyrellの超絶高品位塗装を請け負っている、カドワキコーティングの関連会社っぽいです。驚愕。
というわけで、サクッと里帰りライドもしてきました。
自宅からの距離はホンの数キロですが、走行スピードは桁違い。本当に「歩くよりはマシ」と言って差し支えないだけの時間がかかりました。
そして走行距離とまったく比例しない、脚に残った強い疲労感。なんだか、普段のサイクリングとは異なる筋肉が酷使されまくった印象です。
鶴見川沿いを走っていても、ペダルが軽すぎてスピードがまったく出ません。普段ならギアを上げるところですが、キャリミはシングル。脳内シフターをいくらクリックしたところで、ギア比は当然変化なし。まさに苦行!
夢じゃありません…!現実です…!これが現実…!
チェーンリングを巨大化させたり、スピードドライブを装着したりするカスタムをよく見る理由が本当によくわかりました。
ただし!
苦行レベルに遅いからといって、そんなのは試乗した時点で承知の上。スピードの限界値が極めて低いのが、むしろ面白くて笑えてしまいます。
「おっそーい!! たーのしー!!」
なんだか自分の感情に、新しい扉が開いた気がします。
まとめ:刺さる人には深く深くぶっ刺さる、唯一無二の1台。
一般的なスポーツ自転車と大きくかけ離れた、あまりにも尖りすぎたスペック。普通の自転車の文法から、完全に逸脱している「やばいやつ」。それが、キャリーミーという自転車です。
自転車乗りの走行スキル(脚力を含め)が不可欠な、操縦性と走行性能。それなのに自転車乗りとして楽しもうとする使い方には、あまり向いているとは言えません。「ラクに輪行して、サイクリングをそこそこ快適に楽しむこと」を目的にするなら、DAHON K3のほうが「絶対に間違いの無い選択」でしょう。
しかしながら「コンパクトになる」というただ1点だけにおいて、キャリミは一般的に市販されている他の折りたたみ自転車の追従を許しません。ファニーな外観やキャラクター性を含めて「唯一無二」だと、心の底から断言できる存在です。それだけに、ツボってしまうと突き刺さり方は尋常じゃない深さになります。
どこにだって連れて行けて、どこでも自転車に乗れる。そんなキャリーミーという1台でしか実現できない体験や楽しみ方が、間違いなくあります。
というわけで本稿をご覧の皆様、今度の週末は自転車店でキャリミに試乗してみませんか?