軽さは正義、などとよく言われます。そして巷ではホイール外周部の軽量化、たとえばリムやタイヤやチューブの軽量化が有効だ、などと言われます。同じ100gを削るにしても、ホイール外周だとそれが「何倍にも」効いてくる、などと言う人もいます。
サイスポ4月号の特集は「軽さは正義」
じゃあ実際に何倍なんだろう?
サイクルスポーツの2019年4月号の特集はこういう疑問に網羅的に答える内容になっていて、読み応えがありました。特集タイトルはズバリ「軽さは正義」。
八重洲出版 (2019-02-20)
執筆はCBNレビュワーにも人気が高い安井行生氏、「ロードバイクの科学」の著者ふじいのりあき氏、宇都宮ブリッツェンの増田成幸氏、なるしまフレンドチーフメカニックでレーサーでもある小畑郁氏等々、錚々たるメンバー。理系の自転車ジャーナリスト、ガチな自動車エンジニア、トップクラスのロードレーサー、プロのメカニック、と様々な方面からの布陣。
特にふじいのりあき氏(藤井徳明氏)はその名著「ロードバイクの科学」でさんざん勉強させてもらったこともあり、あの方はこう考えているのか、と興味深く読むことができました(ロードバイクの科学、いま調べたら絶版または増刷待ちみたいで驚いています。これは常に買える本でないと…)。
スキージャーナル
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「ロードバイクの科学」はニュートン力学的世界の中で自転車の原理や挙動を理解できる画期的な本でした。しかも非常に実践的で、私はこの本で学びながらはじめてのホイールを組みました。名著です。
体重を2kg減らすのと、自転車を2kg軽くするのと、どちらが効果的か
体重を2kg減らすのと、自転車を2kg軽くするのと、どちらが効果的なのか。サイスポ4月号ではこれをワット数で測定しています。その結果をここに書くのは適切ではないので、実際にどのくらいの違いがあるかに興味がある方は是非本を手にとってもらいたいところ。
これ、おもしろかったな。読んでいて発見がありました。よくロードバイク乗りのあいだで「軽量パーツ買ってる暇があったら痩せとけ!」みたいな小言・冗談が言われたりしますが、果たしてそれは正しいのか。有効なのか。読めばわかります。
大型サドルバッグの悩み
最近私はドイターのサドルバッグLのような大型サドルバッグを使う機会が増えてきたのですが、以来、どうも「走りが重くなった」気がしています。もともと荷物が多い時はリュックにモノを入れるタイプだったのですが、その頃よりも大型サドルバッグにモノを詰め込んだ時のほうが、より多くの出力を要求されるように感じます。
平たく言うと、走りがダルい。ロードバイクのあの軽快さがちょっとスポイルされてしまう。
夏場なんかは背中が開放されていたほうが放熱しやすいのでリュックを使わないメリットはあるのですが、そうでなければ大型サドルバッグにいろいろ入れて走るのはあまり気持ちよくない時があります。
特に山岳サイクリングではそうです。なぜか。そういう理由もサイスポの特集で書かれています。興味がある方は読みましょう。
「軽さは正義」から「どんな軽さが私にとって正義か」へ
軽ければ軽いほどいい、ということは何年も自転車に乗っていると肌感覚として当然のことのように思えてきます。
じゃあどこがどんなふうに軽かったらいいんだろう? と考えるのが次のステップ。
でも、その場合でも唯一の正解というものはありません。体重80kgのAさんにとってその軽量カーボンハンドルはフニャフニャすぎて不快なものかもしれない。でも体重55kgのBさんにとっては最適解かもしれません。
CBNという自転車レビューサイトには、そういう「私にとっての正義」がたくさん投稿されています。それがCBNレビューの面白さの真髄なのですが、閑話休題。
「軽さは正義」から「どんな軽さは正義か」。そしてさらに「自分にとってどんな軽さが正義なのか」。そんなふうに考えていくのが大事なんだろう、と今月のサイスポを読んでいて思ったのでした。
最近のサイスポは毎号かなり「攻めた」内容になっていて、感動します。ネットがいくら便利になっても、今月号などは簡単に収集できないデータと知見が凝縮されています。雑誌でしかできないことをやっている。つまり、価値があることをやっている。
こういう雑誌なら毎号お金を払って読みたい。最近の世の中は、真面目で価値のあるものが必ずしも生き残れない仕組みになってしまっているけれど、サイスポはうまくやっていってほしいものだと思います。
八重洲出版 (2019-02-20)