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私が高額な謎中華カーボン製品を買わない理由

最近、私の周囲でとあるブログ記事が話題になりました。リンクを張りたいところですが、いろいろ問題になると面倒なので、我慢しておきます。

何が書かれていたかというと、「名前を言ってはいけない某ブランド」(有名なファブレス・ブランド)にロードフレームをセミオーダーしたら、とんでもないブツが届いた、という話です。

そのブランドは企画と開発をやって、台湾か中国のカーボン製品製造工場に製造を委託。それを受け取り、顧客に発送する、というビジネスを展開しているようです。

ちなみにこういうビジネスは、やろうと思えば誰でもできます。台北国際サイクルショーに潜入して、誰か一人とでも名刺交換をしたが最後、以後毎日ずっと何十通ものセールスメールがスパムのように送りつけられてきます。あなたのブランド向けにOEMやりますよ、というメールが、何十社から送られてきます。

台北のサイクルショーでは絶対に見知らぬ人と名刺交換してはいけません。それか潰してもいいメールアドレスを用意しておいたほうがいいです。そっちを教えておきましょう

閑話休題。ある人が上の「名前を言ってはいけない某ブランド」にロードフレームを注文したら、いろいろと仕様が違っているだけでなく、ダウンチューブに意味不明な穴が開いていて、これ何ですか、と聞いたところ、技術的な説明もなく、その穴は問題ない、と言われたそうです。

これは、面白かったw だって、問題ないわけがありません。いや、もしかしたら問題ないのかもしれないけれど、だとしたらやはり問題ない理由を技術的に説明する必要があるはず。その説明がないとしたら、その穴はやはり「スペックから外れたもの」と考えるのが自然でしょう。

他にも色々と不備があって、渦中の人物はなんとかそのフレームの返品に漕ぎつけたようですが(それも一筋縄ではいかなかったらしい)、結局何が起こったかというと、私の想像では、

  • 中華工場がスペック通りのものを製造しなかった
  • さらに、そのブランドが商品を検品することなく顧客に納品した

という二重のミスがあったのではないかと思います。

そのフレーム、18万円もします。

結構リスクの大きい値段だな、と思います。

WiggleやCRCやPBKのようなショップも、独自ブランドのホイールやフレーム、完成車を出していて、製造はもちろん台湾の会社に委託しているわけです。そういう台湾の会社は、台中など国内で製造する場合もあるけれど、よりコストの安い中国大陸の福建省あたりに工場を持っていたり、そこに製造委託する場合もあります。

上で名前を出したようなショップは資本力が大きく、品質管理にもそれなりのコストをかけられるのです。相対的に。つまり「よく管理された中華製品」を扱っていると言えます。

しかしそこまでの経営資源がないブティック的なブランドだと、こういう品質管理はかなり難しいものになります。中華系の工場からの納品物を上手に管理するには、ロットの大きい取引をしてこまめに現地に赴くか、ほぼ家族に近いレベルの強力な信頼関係を構築する以外に方法はないからです。

サイクルショーで知り合いました。商談成立しました。たまに発注します。大口顧客ではありません。という会社に対して、要求される品質を満たした製品を安定的にずっと供給してくれるかというと、難しいでしょう。契約書? それは紙切れです。信用は? あなた以外に顧客は山ほどいます。

ただ、その工場主の娘さんが日本に留学しようとしていて、東京で賃貸マンションを探している時に保証人になってあげたりすると高品質なものが届き続ける可能性はあります(笑)。

彼らは、よく言えば「絆」を大事にします。悪い言い方をすれば、縁故主義。

さて、こういう「管理が十分でないと思われる中華製品」ですが、私だったら高額なものは買いません。18万円は、ちょっと出しにくい。2〜3万円くらいなら出せますが、それ以上出すのなら「よく管理された中華製品」つまり有名海外通販ショップのプライベートブランド製品を買います。ホイールとかフレームとか。

あとは安くても黒中華カーボンハンドルやカーボンステムは買いません。これは折れたら命にかかわるパーツ。シートピラーやサドルなら、スプリントするような乗り方はしないのでお遊びで買ってもいいかな。でもレースやる人はやめたほうがいいと思う。

Aliexpressとかおもしろいものは売っているけど、ガチな使い方は怖い。ヒルクライムレースでほとんど座らない軽量サドルとかならありだと思う。ボトルケージとかもいいんじゃないかと思います。あとカーボン製品じゃないけどバッグとか。

もちろん考え方は人それぞれで、いろんなリスクを承知した上で買うのなら問題ないでしょう。でも私は、よくわからない中華ブランド製品、管理が不十分と思われる中華工場委託製品で、高額なものは買わないですね。

買いません、というか、怖くて買えなくなった、というのが正直なところです。私はこれまで仕事やプライベート両面で、多くの中国人、台湾人と一緒に仕事をしたり、交流したりしてきました。必要に迫られて北京語も勉強するうちに、中華圏の文化や商取引の実態についていろいろとわかってきました。

勿論中華圏と一括りにはできません。厦門の人、上海の人、北京の人、それぞれマインドの傾向が違います。台湾でも本省人と外省人とでは考え方が違う。だから一緒にはできないのですが、日本人の常識、日本的な価値観はそう簡単に理解してもらえないことだけは、経験的に学んできました。

約束とか平気で破ります。これは中華圏に限らず、日本も含めてアジア圏は「契約」という概念が薄いことに原因があると思います。あと、彼らは家族、身内を大事にします。それは裏返すなら、家族や身内でないものは、いつでも切り捨てるという考え方です。

だから、こちらが小規模な事業者で、彼らとうまくやりたかったら、よっぽど信頼関係を築かないと難しい。

そして信頼関係を築くのはそう簡単なことではありません。何年もかかります。

ついでに書くと、身内になら工場の製品を横流しもします。その結果、本来通販できないはずのものがありえない価格で出回っていたりします。そういうものは、たまに謎の穴があったり、シリアルナンバーが削られていたりします。こういうことは、自転車業界に限らず、ほぼ全ての製造業であります。

この結果、正規品なんだかニセモノなんだかよくわからないグレー中華製品が流通することになります。

CRCやWiggleで扱っているPrimeのホイールは「よく管理された中華製品」の代表格と言って良いでしょう。いまのところ品質について悪い話はあまり聞きません。入っているはずのスモールパーツが入っていなかった、みたいなことはたまにあるようですが、問い合わせれば対応してもらえますし、製品自体に問題があることはあまりないようです。CBNでもわりと評価が高いです。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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