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油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

TRP Hylex RSというドロップハンドル用油圧ディスクブレーキのブリーディング作業をしたので、その模様をご紹介。TEKTRO(TRP)の専用キットを使用して作業しますが、オイルを注入しつつブレーキシステム内のエアを抜く、という作業の本質は一緒です。

用意するもの

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

メーカーやロード・MTB用の区別なく、ブリーディング作業一般で用意しておくべきものをリストアップしました。そんなにたくさんはありません。

  1. キャリパーをフレームから外すヘックスレンチ
  2. ブリードポートを外すトルクスレンチなど(メーカーにより異なる)
  3. メーカー指定のブレーキフルード(ミネラル・DOT5.1等。互換性はないので注意)
  4. メーカー提供のブリーディングキット(シリンジ・じょうご・ブリードブロック等)
  5. ニトリルグローブ(2〜3セット)
  6. ワイプオールのようなペーパー
  7. ディグリーザーまたはアルコール溶剤

ブリーディングキットについては、作業内容を理解している場合は市販製品を使っても良いと思いますが、ブリードブロック(ピストンストッパー)だけは自前で用意しておく必要があります。

TRP Hylex RSをブリードする

今回ブリードするのはTRP Hylex RSです。油圧ディスクブレーキの長すぎるホースを専用工具でカットしてみようという記事でも紹介した製品です。これを「TEKTRO BLEED KIT」を使ってブリードしていきます。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

まずは手袋をしましょう。途中で一度交換したほうが良いので、予備も準備しておきます。

またバイクの下には、オイルが垂れてもいいように何か敷いておきましょう。オイルはアルコールで拭かないと取れないので、床に垂らしまくるとあとで苦労します。

次にキャリパーからブレーキパッドを外してしまいます。外す理由は、作業中にオイルがパッドに垂れたらパッドが逝くからです。これは絶対に外しておきましょう。

外したらキットに入っているブリードブロック(別名ピストンストッパー)を挿入し、ボルトで軽く留めておきます。このブロックを入れておかないとレバーを握った時にピストンが出すぎてしまいます。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

バイクの設置ですが、基本的に地面に平行にセットします。リザーバータンクがあるレバーはブレーキシステムの最も高い位置に来るようにし(普通はそうなる)、ブリードポートは地面に対して水平にします。キャリパーはフォークやフレームから外しておきます。

TRP Hylex RSのレバーフードをめくり、T15トルクスでブリードポートにアクセスします。ここにTEKTRO BLEED KIT同梱のシリンジ(中身は空)をねじこみます。キットに入っている注射器はねじこみ式なので便利です(Oリング付き)。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

そのシリンジですが、こんなふうに組み立てます。根本のほうもねじこみ式で、容易に抜けないようになっています。これはシマノキットのシリンジにはない長所です。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

ブレーキフルードを20ml(テクトロ推奨量)吸引します。TRP/TEKTROはシマノ同様、鉱物系のミネラルオイルです。SRAMやAVIDのDOT5.1オイルは塗装や皮膚への攻撃性が高いので注意。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

オイルを入れたシリンジを、キャリパーのブリードポートにねじこみます。Hylex RSの場合、T15トルクスでアクセスできます。(注:写真ではキャリパーをフォークに取り付けたままになっていますが、外した状態で作業しましょう。このキャリパーはポートが横についているため、最後にシリンジを外す時にオイルがこぼれる場合があります)。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

ここまでできたらテクトロ式のブリーディングはもう簡単です。ゆっくりとシリンジを押し、オイルを流しこんでいきます。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

するとレバー側のシリンジにオイルが押し出されてきます。この時、ブレーキシステム内にトラップされた空気も出てきてくれます。

油圧ディスクブレーキのブリーディング TEKTRO(TRP)のキットを使った場合

キャリパー側のシリンジを最後まで押しこんだら、今度はレバー側のシリンジからゆっくりとオイルを戻していきます。

それが終わったら最後にもう1度だけ、シリンジ側からレバー側にゆっくりオイルを流していきます。

これでブリード作業自体は終了です。キャリパー側のシリンジを外し、ブリードポートのフタ(ボルト)を閉じます。次にレバー側のシリンジを外します。

どちらの場合も、オイルが少量漏れる場合があるので手元にペーパーを待機させておきましょう。

ここでうまくエアが抜けたかどうかを確認するために、ブレーキレバーを握ってみます。スカッ、と奥まで握りこめてしまった場合、おめでとうございます、作業は失敗ですw

その場合、もう一度「キャリパー側からブリード→レバー側からブリード→キャリパー側からブリード」の手順を繰り返します。うまく行ったら、レバー側のブリードポートを閉じます。

ブリード作業後にやること

ブリードが終わってブリードポートも閉じた後は、まずレバーやキャリパーに付着したオイルを拭き取ります。この時、ディグリーザーやアルコール溶剤を染みこませたペーパーを使うのが便利です。普通のカラ拭きではベタベタが取れないので注意。

次にブレーキパッドをキャリパーに戻すのですが、その前にニトリルグローブを交換します。そうでないとパッドにオイルが付着する場合があります。オイルで汚れたブレーキパッドは使い物にならなくなります。1〜2,000円が無駄になるのでちゃんとやったほうが良いです。ペアで10円のグローブを惜しまず使いましょう。

まとめ:テクトロ式ブリーディングは超簡単

シマノの最近のディスクブレーキのブリーディングはやったことがないのですが、昔より簡単になったとは聞いています。ただシマノのキットはホースが外れやすいという声がCBNレビューで寄せられています。

参考 SHIMANO TL-BT03S ディスクブレーキ シンプルブリーディングキット(CBNレビュー)

それに比べるとテクトロのシリンジは溝切りされているので便利。シリンジをキャリパーから外す時だけ気をつければオイル漏れも少なく済みます。

また最近のシマノもそうだと聞いていますが、テクトロ式のブリーディングでもシリンジやキャリパーやホースを指でコツコツと弾いたりという職人芸は不要です。レバーをこまめに握ってエア抜きをするといった作業も必要ありません。

やるべきことを理解して、何のためにその作業をするのかを理解した上で取り組めば、ショップに依頼しなくてもできます。勿論、これは無理だと思ったらショップに依頼するのも良いでしょう。工賃は片側2〜5,000円とまちまちのようです。両側で4,000〜10,000円。自分でブリードキットとフルードを買うと5〜6,000円で何回も作業できます。

今回使ったツールたち

今回の作業で活躍したツールのうち、手袋とペーパーをご紹介。どちらも日頃のメンテナンスで活躍します。ニトリルグローブは1ペアあたり10円くらい。ワイプオールは1枚あたり14円くらい。作業スペースにはいつも手が届くところに置いておくと便利です。

ワイプオールを使うようになってからウエスはほとんど使わなくなりました。ニトリルグローブはサドルバッグにも入れてあります。

本記事で紹介したTEKTRO BLEED KITは5,000円くらいなのですが、長すぎるブレーキホースのカットに必要なカッターやスモールパーツ類も同梱されているのでお買い得でした。シマノ真っ青のクオリティ。ホースカッターについてはシマノでも使えます。シリンジをシマノのブレーキにねじこめるかどうかは不明。

2021年6月現在、このBLEED KITはパッケージとデザインが若干変更されていますが、内容物は私が購入したものとほぼ同じになっています。

ブレーキホースのカットについては下の記事で解説してあるので、興味のある方はどうぞ。

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著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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