脚力、根性、そして知識やセンス。そのすべてを持たない、押しも押されぬヘタレ自転車乗りであるところの自分。そのライドは、すべてを機材の性能に依存しています。
つまり「機材の差」が、「走力の差」と完全一致状態になっているのです。そうなると「機材の走行性能を把握すること」は、今後の輪行ライドでルーティングを検討する際に外せない課題として浮上してきます。
▼写真も自転車も、すべてが機材頼み。あまりにも悲しい現実…!
横浜のグリーンサイクルを覗いたら、なぜか売買契約が締結されていたブロンプトン。「房総半島の海岸沿いは、かろうじて走れる」という知見だけは、シェイクダウンの時に獲得できました。
しかしながら、これからのことを考えると「もう少し踏み込んで走行性能をチェックしておきたい」というのが、正直なところです。
そうなると、次は「ブロンプトンは峠を超えられるのか?」という部分を試さざるを得ない…ですよね?
地獄へようこそ(はぁと)!
というわけで到着したのは、小田急電鉄小田原線の秦野駅。本来であれば、街中を楽しく走っておいしいものを食べる、ゆるゆるでふわっふわなポタリングをスタートさせるべき場所です。
それなのに、なぜか自分が向かう先は延々12kmの上り坂が続く、地獄のライン戦線。どうして…どうしてこうなった…?
▼準備はいいか、小隊諸君。では、戦争の時間だ!
思い切りハズレた、事前の予想。
ヤビツ峠(表)は走り始めて間もなくのところで、蓑毛の坂がキッツイ斜度で容赦無く殴りかかってきます。「コンパクトクランク+32T」という、軟弱者にもほどがある乙女ギアを装備したロードバイクで挑んでもボコボコにされるのが必定です。
なんですが、実は以前にこんな経験をしています。
小径シティサイクルで蓑毛の坂に挑んだら、ロードでアタックした最速時に匹敵するタイムで蓑毛をクリアできちゃった
そう、坂の途中で自爆して押し歩きになることを覚悟していたのですが、「小径」さらに「シティサイクルならではの軽いギア比」のおかげで、なんかスルスルスルっと登坂できてしまったのです。もちろん、そのあとの行程は時間かかりまくりでしたが…。
なので今回のブロンプトンでのアタックも、蓑毛についての警戒心は皆無。そこまで心配しなくて大丈夫だろうと、ナメた考えでいました。心底、本気で。
蓑毛がどんなにキツくても、いちばん軽いギアでクルクル回せばクリアできる
…そう思っていた頃が、自分にもありました。
だがしかし!そんな予想は幻想に過ぎなかったのです。そのふざけた幻想は、あっさりぶち壊されて、蓑毛にたどり着くはるか手前でこう感じざるを得ませんでした。
これ…蓑毛を超えるの無理じゃね?
うちのブロンプトンは、6速のモデル。そのいちばん軽いギアの組み合わせでも、斜度4〜5%を超えたあたりからでしょうか。きっちりトルクをかけることを意識して踏み込まないと、ペダルが回せなくなります。
そして6〜7%を超えてくると、シッティングからダンシングに移行したくなります。ブロンプトンのギア比、小径シティサイクルほどは軽くはないんですね(脚の負荷から勝手に推察)。
坂の手前にある鳥居に着いた時点で、もうヘロヘロ。それでもなんとか登坂を続けますが、変な声を出しちゃいそうなぐらい脚が重いです。ギアはとっくの昔に、いちばん軽くなってます。もうあと2段、いや5段ぐらい、軽いギアが欲しい!!!
ブロンプトンでのダンシング登坂は、なんだか新感覚。
そんなわけで、蓑毛の坂の終盤に近い蓑毛バス停手前のいちばん斜度がキツい部分は、ずっとダンシングでした。
ブロンプトンでのダンシング、自分が車両に慣れていないせいもあるのでしょう。フラつきやすくて、結構怖いです。ロードみたいに、加速するためのダンシングは非常にやりにくいと感じます。
なんですが坂を登る時のダンシングについては、思いのほかやりやすい。確かにフラつきやすい感じはあるのですが、ハンドル位置が高いので姿勢としてはロードでダンシングするより全然ラクです。
アップライトな姿勢で歩行時に近い体の使い方をする、これまでにない感覚での登坂になりました。なんだかとっても新感覚。
まぁ、だからといって、きつい斜度の登りがラクになるはずもありません。もう完膚なきまでに叩きのめされて、全身ズタボロです。
その後の登坂も、貧脚ぶりを存分に発揮。ただでさえ遅いのに、さらに時間をかけてようやく峠にたどり着きました。かかった時間はロードの1.5倍程度ですが、感じる疲労感の大きさがもう桁違いです。
僕はもう疲れたよ、パトラッシュ…。
▼Stravaの「ヤビツ峠コンビニスタート」セグメントのタイムは59:49。アベレージは10.2km/h。遅さに磨きがかかる。
ブロンプトンで峠に向かうと、結局どうなる?
ブロンプトンで登坂していて、なによりキツかったのが「6速あるのに、斜度とギア比が噛み合うポイントが極めて少ない」ということ。
どのギアを選んでも、重かったり軽かったりでなかなかピッタシいきません。「帯に短し襷に長し」を、こんなところで痛いほど感じてしまうとは思いませんでした。
考えてみると、これはとてもヤバイ体験です。「ブロンプトンでヤビツ登れちゃったー!」という達成感は、「あともう少し選べるギアがあれば…」という感情にサクッと上書きされてしまいます。
ブロンプトンは、無改造で乗るのが正解。よりによって変速機構をカスタマイズしようとするなんて、いくらなんでも有り得ない!…そう思っていました。
なんですが実際にブロンプトンでヤビツに行ってみたら、どうなったでしょう? 社会復帰できなくなる禁断の領域に手を出したくなる方々の気持ちが、心の奥底から思いっっっきり理解できてしまった自分がここにいます。これは、あまりにも危険すぎです!
結論、ブロンプトンで峠に行くと廃人になる。
つまり、これからも普段通りの社会生活を営んでいきたいのであれば「脚力のほうを、自転車に合わせるために鍛えまくるほかない」ということです。
こうなったら、もはや仕方ありません。ZWIFTの「The Uber Prezel(128.3km/2,335m UP)」でも逝っときますか…。
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