フレーム・完成車製品レビュー

究極の折りたたみ小径車ブロンプトンは、ほぼ無改造のまま乗るのが正解である

ブロンプトンという自転車の特徴や魅力については、星の数ほどのメディアや個人ブログで昔から語り継がれてきた。私がそこに追加できるものは、基本的に何もないが、最近はこの自転車を「ほぼ吊るしの状態」で乗っている。そのことについて書いてみたい。

昨年購入した人生3台目のブロンプトン。ほぼ純正パーツのみで運用中

筆者のブロンプトン遍歴:S6Lを推す理由

筆者は現在までにブロンプトンを3回購入している。1回目は10年ほど前だろうか。一時期乗らなくなったので、処分した。2回目は、ガールフレンドに贈り物として購入した。3回目の購入は去年。

思えば最初のブロンプトンは、あれこれとパーツを交換して改造しまくった。その前に何台かの小径車に乗っていたせいだと思う。小径車というのはとにかく自転車乗りを「改造」へと誘惑する恐ろしい乗り物である。

まずペダルをMKS(三ヶ島製作所)の折りたたみタイプに換えた。しかも数種類のタイプを試した。サドルはブルックスのレザータイプに変更。これもワイド、ナロー、穴あきと様々試した。グリップもブルックスやエルゴンを試した。シートポストを引き出した時に常に一定の長さにしてくれる「加茂谷」のパーツ、同じく加茂谷のスプリング付きクランプ。小径車ショップオリジナルのリアキャリア。ひと通りの改造を試した。

最初に購入したブロンプトンはMハンドルのM3Lというモデルだった。最初に書いておこう。もしあなたがロードバイクやMTBといったスポーツサイクルに慣れ親しんでいるのなら、買うべきブロンプトンは1種類しかない。それはS6系のモデル、つまりSハンドルの6速変速(内装3速+外装2速)のモデルである。私はMハンドル・内装3速のM3Lを、イギリスからパーツを取り寄せS6Lに改造したことがある。

去年久しぶりに買いなおしたブロンプトンもS6L。なぜS6Lが良いのか。Mハンドルは、ハンドル位置が高すぎる。低剛性のため「しなり」がショックアブソーバーとして機能する面白さもあるが、少しでもスポーティーなライドを志向する人には窮屈だろう。往復10km程度ならMハンドルでも問題ない。でも100kmのライドには向かない。Pハンドル? ポジションが多いという意味では、あれもいい。

Brompton Pハンドル(生産終了品) photo by Vinvin F don d’Usagi

ブロンプトンのPハンドルモデルはその後2019年に生産終了となっています。またMハンドルも2017年に若干仕様変更され、ハンドル高は27mm低くなりステムが27mm高くなりました。つまり絶対的なハンドル上面高はそのままに、ハンドルの剛性が少しだけ高く(つまり以前よりも固めの感触)になっています

6速変速は必要だろうか。用途にもよるが、私にとってブロンプトンはスーパーの買い物から日本のラルプ・デュエズと言われる長野県の車坂峠までをカバーする・カバーできる自転車である。ブロンプトンでヒルクライム? バカじゃないの? いやいやいや。可能です。実際私はいくつものキツめの峠をブロンプトンで走っている。全然走り切れます。ただし、6速モデルなら。M3Lだとギヤ比の問題で断念したことがある。

そんなわけで私のオオスメは「S6L」というモデル。リアキャリア付きのS6Rというモデルもある。これは、もし日本一周やキャンプしながらのツーリングの予定があるなら、検討してもいいと思う。そうでなければ、必要ない。オーバースペック。高さの低いストレートバー・ハンドルと、6速変速を備えたS6系モデル。とにかくこれが私にとって最高のブロンプトンである、とだけ書いておく。

私がブロンプトンの改造をやめた理由

最初のブロンプトンは、その後ロードバイクやMTBの使用頻度が増えてそうした自転車が増えた時に売ってしまった。それから数年後、昨年になって私はまたブロンプトンを手に入れた。そして前回と今回の違いは、私がこの自転車をほとんど吊るしの状態で乗っている、ということである。基本的に、改造はしていない。何故か。私はようやく理解したからだ。ブロンプトンという自転車は、改造が不要だということを。

勿論、何も換えていないわけではない。例えば、THEODORE CYCLE GRIPはCBNにもレビューを投稿したが、これは初期状態のスポンジグリップが破れてしまったから。破れなければ、買い替えていない。同じグリップを買おうと思ったけど、あまり流通していない。そこでこのレザーグリップを買った。結果的に純正のスポンジグリップよりも振動吸収性が良く満足しているが、別に純正グリップでも困らない。

THEODORE CYCLE GRIP。見た目もいいが振動吸収性もいい

ペダルもブロンプトン純正品をそのまま使っている。三ヶ島製作所のEzyシリーズや、シマノのSPDペダルを過去に使っていたことはある。でも純正ペダルで何の問題もない。むかしはダサく思えたリフレクターもそのまま。引き足は使えない。でも問題なく奥多摩の峠も越えられた。今ではなぜ輪行時にブロンプトンのペダルを外すなどという無駄なことをしていたのか、全く理解できない。

Brompton純正ペダル。左側だけ折りたたみ。これでいい、これがいい。

サドルもブロンプトン純正品をそのまま使い続けている。これは意外だった。さすがにこれは換えるだろうと思っていた。以前はBROOKS Imperial B17 Narrowでないとこの自転車で長距離は乗れないと思っていた。私の尻が進化したのか、それとも純正サドルが良くなったのかは不明だが、いずれにしても30kmの山岳ルートを含む100kmサイクリングでも純正サドルに不満を感じていない。今後も交換の予定はない。

東京東部の多摩湖貯水池にて。都心から輪行で西武線小平駅まで行き、多摩湖自転車道で向かった。

ではグリップ以外に交換したパーツがないかと言えば、実はそうではない。リアの「コロコロ」を「イージーホイール」という大径タイプに交換した。ただこれもブロンプトン純正のパーツ。そしてリア・マッドガードの端についている硬い小さいホイールを、回転の良いベアリングタイプに交換した。これは輪行時にたまに転がすために必要だった。そういうことでもなければ、必要ない。

Brompton純正イージーホイール

とにかくブロンプトンは、いや、「最近のブロンプトンは」と言うべきか。改造の必要がほとんど感じられない。ライトにしても昨年購入した私のブロには、CATEYE VOLT 300がブロンプトン専用のマウントと共に付属していた。リアライトも同社製TL-LD635-R (RAPID MINI)が純正サドルの後ろに、最初からスマートに組み込まれていた。昔のようにドイツ製のハブダイナモを組み込もうという気持ちにはならない。

輪行袋はどうか。これまでに様々なタイプのブロンプトン用輪行袋を試したが、やはり純正の「Bromptonカバー&サドルバッグ」がブロンプトン輪行において最も現実的な製品だと感じる。ただし、車体底面が露出するため一部の交通機関では使用できないのが残念なところではある。

バッグは今のところ2つを使いわけている。やはりブロンプトン純正の、S Bagとトートバッグ。S BagはSハンドルモデルで使える最もスタンダードなバッグだが、普段使いではややデカすぎる局面がある。これもCBNにBrompton TOTE BAGとしてレビュー投稿したが、普段は大体このトートバッグで間に合う。

このBrompton Tote Bagは外してこのまま美術館や映画館にも行ける。S Bagだとそういう場合、でかすぎ。

タイヤは交換したくはならないのか、って? うん、昔だったらそうだったかもしれない。でも私が去年買ったブロンプトンには、Schwarbe Kojakという軽量でスポーティーなタイヤが最初から装着されていた。これが現在の標準タイヤらしい。以前は、ブロンプトンオリジナルのタイヤだったり、シュワルベのマラソンだったように思う。コジャックは私がブロンプトンでいちばん使いたいタイヤ。替える必要がない。

ブロンプトン純正品以外で使っているものがあるとすれば、あとはCATEYEのサイコン・STRADA WIRELESSと、トップチューブに装着しているABUS Borde Lite 6050。この多関節ロックはロードバイクでも使用しているが、堅牢さと重量のバランスがとても良い。この鍵を破壊して盗むような窃盗団には、他にどんな対策をしても無駄だろう。これもCBNにレビュー投稿済み。

トップチューブにマウントできるBordo Lite 6050はブロンプトンに最適のロックと言って良い。これで盗まれたら諦めるしかな

Bordo Lite 6050は生産終了品ですが、現在はBORDO LITE 6055が後継モデルとなっています

あとは「C3 ブロンプトン用ドリンクホルダー/小物入れ」という製品も使っている。ドリンクを入れる。この商品、現在は「POTA BIKE ハンドルセンターポーチ ブロンプトン用ドリンクホルダー/小物入れ」という名前で売っているらしい。これ、ブロンプトン愛好家の個人の方が台湾か中国に発注して作らせた製品みたい。面白いね。

C3 ブロンプトン用ドリンクホルダー/小物入れ。長距離ライドで活躍。日焼け止めや小銭入れを入れておくのもいい

今後、もしかしたらライトをより強力なCATEYE VOLT 800に交換するとか、そういうことはあるかもしれない。ただ、コアな部分に手を入れることはないだろうと思っている。ブロンプトンというのは、小径車だけあって最初はあれこれ換えたくなる自転車ではある。ただあまりにも完成されているため、ペダルを交換したり、純正品でないホイールを使ったりすると簡単にバランスを崩して自立しづらくなったりする。

ライトやポーチやサイコンといったパーツも、装着できたはいいもののいざ折りたたみをする時に干渉してしまう、ということがよくある。とにかく折りたたんだ時に可能な限り小さいサイズになるよう設計されているから、ヘタな改造ができないし、する必要もほとんどない。これがR&M, KHS, Dahon, Ternといった他社の有名な折りたたみ小径車とは一線を画するところだろうと思う。

小径車では「持ちやすさ」が正義

そして最後に書いておきたいことがある。自転車においては、とにかく「軽さ」が正義だと言われる。軽ければ軽いほうが良い、と。だが、ブロンプトンについてそれはあてはまらない、と書いておこう。ブロンプトンよりも軽量な折りたたみ小径車は、他にいくらでもある。ブロのフレームは、スチール。アルミやカーボンの折りたたみ小径車は他にいくらでもある。そういうものも、過去に試してみた。

しかしブロンプトンは、とにかく輪行時にも持ちやすい。「担ぎ」が入る時でも、とにかくコンパクトなディメンションの中に収まっているため、重量があったとしても長時間持って歩ける。少しくらいブロより軽量であっても持ちにくい小径車では、こうはいかない。これは様々な小径車を乗り継いできて、はじめて理解した。折りたたみ自転車において「軽さ」は正義ではない。「持ちやすさ」が正義なのだと。

ロードバイク、シクロクロス、MTB。様々な自転車に乗っているけれど、まだブロンプトンを所有したことがない方に言っておきたい。この自転車は、いつの日か絶対に買ってみたほうがいい。きっと面白いと思うよ。もう自転車1台しか持っちゃダメ、と言われたとしたら、私は間違いなくブロンプトンを選ぶ。1台だけなら。他の選択肢は考えられない。そのくらい、この自転車の完成度は高い。

ところで先日、ブロンプトンでスーパーに大根を買いに行って返ってくる時、背後から”Brompton!”という声が聞こえた。停車して振り返ると白人男性がこちらを見て、親指を上に突き出していた。私は”Thanks!”と答えた。彼がイギリス人かどうかはわからないが、イギリス人なら誇らしく思ったに違いない。そしてこの自転車は、誇りにしていい自転車であるのは間違いない。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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