シューズ製品レビュー

SHIMANO RP1をSPDで試してみた感想【SPD-SL&SPD両対応のベストセラーシューズ】

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ベストセラー商品の実力を検証するコーナーです。今回はAmazonのメンズサイクリングシューズカテゴリーで長らく1位の座に付いているシマノのロードシューズ「RP1」をレビューしてみます。

このシューズはSPD-SLとSPD両対応ですが、本記事ではSPDクリートでの使用感についてのみ紹介します

このRP1、現時点では事実上日本でいちばん売れているロードシューズと言って良いと思いますが、果たして本当に良いものなのか。どんな人に向いているのか、あるいは向いていないのか。早速見ていきましょう。

シマノの最安ロードシューズ

これがSHIMANO RP1です。シマノ公式サイトによると正確な型番は「SH-RP100」(ややこしいですね)。いずれにしてもシマノのロードバイク用シューズの中では最も低いグレードの製品であるようです。実勢価格は概ね8,000円〜11,000円。Amazonではサイズによっては¥6,877のものもあります(本記事執筆時点)。有名メーカー製ロードシューズとしてはかなりお手頃な価格と言えるでしょう。

SHIMANO RP1

SHIMANO RP1

アッパーは合成皮革、ソールはグラスファイバーコンポジットナイロン。BOAダイヤルやラチェット式ではなく、シンプルな2本ストラップタイプです。

公称重量はサイズ42で255g(筆者が購入したサイズ40は実測で229g/231gでした)。フラッグシップのRC9(SH-RC901)の公称重量が同じサイズで243gですから、十分以上に軽量なモデルと言えるでしょう。

インソールを取り出してみると、決して安っぽくはない、なかなか良い感じのインソールが出てきました。特に薄くも厚くもありません。

SHIMANO RP1

なかなか立派なインソール

下の写真でわかるようにシューズ先端はメッシュ状になっていて通気性を意識しているのがわかります。インソールの爪先付近にも空気孔が開けられています。最後にまとめでも触れますが、レースを含む運動強度の高いガチ走りで使ってほしいオーラが漂っています。

SHIMANO RP1

通気性の良さを狙ったモデル

逆に言うとロードバイクでのんびりポタリング、という用途にはあまり向かないでしょうし、冬は少し爪先が冷えるかもしれません(笑)。

SPD-SLとSPDに両対応するロードシューズ

RP1の特筆すべき点は、ロードシューズでありながらもSPD-SLとSPD、両方のクリートに対応しているというところです。エントリーモデルを選ぶ初心者の場合、どちらのクリートが自分に合っているのかまだわからない、ということもあるでしょうから、そうした場合のための配慮でしょうか。

SHIMANO RP1

SPD-SLとSPDの両方に対応

SPDクリートで試す:SM-SH56(マルチモードクリート)

SP1にはクリートは付属しません。別途SPD-SLまたはSPDクリートを用意する必要があり、SPDの場合はさらにアダプターを購入する必要があります(次のセクションで説明します)。本記事ではSPDクリートでの使用感を説明します。用意したのは「マルチモードクリート」と呼ばれるSM-SH56。

マルチモードクリートSM-SH56

マルチモードクリートSM-SH56を付けてみる

余談になりますが、シマノのSPDクリートには「シングルモード」と「マルチモード」の2タイプがあり、前者はかかとを外側にひねった時だけ外れる仕様です。後者はそれ以外にもかかとを真上や斜め上など、様々な方向にひねっても外れてくれます。

一般的に初心者にはマルチモードクリートが向いていると言われます。私自身は初心者ではありませんが、SPDクリートはマルチモードを愛用しています。

マルチモードの短所としては、外れてくれやすい反面、意図しない局面で外れてしまうこと。故にレースやテクニカルなコースを走るライダーにはシングルモードを好む人もいます。

いずれにしてもビンディング初心者の場合は、慣れるまではマルチモードのSM-SH56のほうが良いでしょう。

SPDクリートアダプター SM-SH40

さて、クリートの調達はこれでOK。なのですが、RP1にSPDクリートを取り付ける場合は別途「SM-SH40」という型番の「クリートアダプター」を取り付ける必要があります。下の画像の部品で、私は¥1,382で購入しました。

SPDクリートアダプター SM-SH40

SPDクリートアダプター SM-SH40

なおRP1をSPDクリートで運用する場合にこのアダプターが必要になることは、通販サイトの商品ページにも、シマノ公式製品ページにも記載がありません。RP1を購入して、箱の中の取扱説明書を読んではじめて知ることなので、このあたりは説明不足かなと思います。

このクリートアダプターをRP1のソールに取り付けるためのネジ2本と、クリートをこのアダプターに取り付けるための専用ネジ4本が付属します。この4本の専用ネジは普通のSPDクリートに付属するものより長くなっているので、失くさないようにしましょう(写真下参照。製品の箱の下に隠れているので注意)。

SPDクリートアダプター SM-SH40付属のネジ(写真上の左側)

SPDクリートアダプター SM-SH40付属のネジ(写真上の左側)

参考重量:クリートアダプターSM-SH40は固定ボルト2本込み・ペアで35g。クリート用専用ネジ4本で9gでした

さて、SPDクリートアダプターとクリートをRP1に取り付けると下の写真のようになります(この状態でRP1シューズ片側273〜274gでした)。

クリートアダプターSM-SH40とマルチモードクリートのSM-SH56をRP1に装着した図

クリートアダプターSM-SH40とマルチモードクリートのSM-SH56をRP1に装着した図

横から見るとこんな感じになります。

クリートアダプターSM-SH40とマルチモードクリートのSM-SH56をRP1に装着した図

クリートアダプターSM-SH40とマルチモードクリートのSM-SH56をRP1に装着した図

このクリートアダプターの役割は2つあります。1つは歩行性を高める(歩きやすくする)こと。もう1つは歩行時にクリートを直に接地させないことによってクリートの寿命を伸ばすことです。上の写真でわかりますが、SPDクリートがアダプターの内側に隠れてくるので少し歩きやすくなるのです。

アダプターが不要であると思いこんでいた筆者の話

ところで筆者は最初、このクリートアダプターSM-SH40が必要であることを知らずに、次のようにSPDクリートを裸で装着してこのシューズを使いました。

SHIMANO RP1

メーカーはサポートしないがSPDクリートの直付けでも使えることは使える。ちなみに左右のクリートがずれているのは調整幅をお見せするため

SPD-SLと同じように使うのだろう、と思いこんだのでした。当然、歩きやすくはありません。

SHIMANO RP1

これではまったく歩きやすくありません

しかし逆に言うと、歩行を重視しないのであればクリートアダプターSM-SH40を使わなくともSPDクリートは使えます。

とはいえ取扱説明書によるとSM-SH40の使用が前提であり、足を設置するたびに鉄のクリートが摩耗していくのは間違いないので、歩行を重視しない方でもSM-SH40を使うべきでしょう。

また、SM-SH40を使ったほうがクリートはキャッチしやすいように思った(リリースは逆に少し力が要る)のでやはりSPDではアダプターありきのシューズだと思います。

だがしかし(しかし、ばっかりな記事ですみませんw)!

このSM-SH40というクリートアダプター、非常に評判が悪いんです。これについては後述します。

ライドで使ってみた

ペダリングの感想

実際にRP1を履いて40kmほどの距離を2回サイクリングしました。舗装路の市街地、サイクリングロード、ちょっとしたオフロードライドです。クリートはSPD。合わせてみたペダルはシマノのSPDロードツーリングペダル・PD-ES600です。クリートキャッチはやたらと難しいながらも、超軽量な片面SPDペダルです(※扱いが難しいので初心者の方にはオススメしません)。

SHIMANO RP1シューズとPD-ES600

RP1シューズとPD-ES600


 

走り出してすぐに思ったのは、「これはのんびり走るためのシューズではなさそうだ」ということです。集中して短時間、きれいなペダリングで効率良く回して速く走るためのシューズ。ちょっとあの林に迷い込んで鳥の声を聞いたり野生のキノコを観察してみよう、という気持ちにはなりません。

個人的にはかなりタイトフィットな印象です。Amazonのレビューでは「ワンサイズ大きめを買ったほうがいい」という声が多く、確かにその通りという感じです。私はロードシューズもオフロードシューズもSIDIを愛用していますが、そちらはサイズ40がちょうど良く、それならやや厚手のソックスも履けます。

しかしRP1のサイズ40だと、薄手のソックス(今回はパールイズミ・サイクリングソックス46を使用)でも爪先の両端がやや圧迫される感じです。足の長さ自体はちょうど良いのですが、私には横幅が若干狭いかなという印象です。私の場合は最終的に40で問題ないと感じていますが、多くのユーザーがワンサイズ上を推奨する理由はよくわかりました。

2回目のライドでは足が慣れたのかアッパーが伸びれてくれたのか、圧迫感はだいぶ解消されていました

しかしそれはサイジングが特殊というよりも、このシューズの味付け、ということではないかと思いました。先にも書きましたが、これはのんびりライドを楽しむためのシューズではなく、1時間〜3時間といった短時間、集中して漕いだほうが楽しいシューズという感じです。

そう考えるとタイト目のフィット感は合理的なものに感じられます。ただ、アッパーの合成皮革は決して窮屈な感じはしません。また足首回りも固くてペダリングのたびに皮膚に当たって痛い、ということはありません。これは海外製の安いシューズとは大きく異る点でかなり好感が持てます。

ソールには「STIFFNESS:6」という表記があり、これはシマノのロード用シューズの中では最もコンフォート寄りの、柔らかい設定であることを意味しています。

SHIMANO RP1

ソール剛性は「6」でシマノのロード用シューズでは最も柔らかい

確かに踏んでいて「ソールが硬すぎて疲れる、足イタイ!」という感じはありませんでしたが、それでもロードシューズならではの「力、無駄になってない!エネルギー損失、極小!」という剛性感はしっかり感じられます。

歩行の感想

クリートアダプターなしのSPD直付け、クリートアダプターSM-SH40あり、両方のパターンで歩きやすさを検証してみました。

SPD直付け(メーカーが想定していない使い方)の場合は、SPD-SLほど滑りやすくはないものの、歩きにくさはどちらも似たようなもの。コンビニやトイレに立ち寄る程度なら問題ないにしても一定の距離を歩く場合は、オンロード・オフロードの区別なく、かなり大変です。SPD直付けでの歩行はオススメしません。

一方、クリートアダプターSM-SH40を付けた場合はどうだったかというと…

おっ、いいじゃん!!

SHIMANO RP1

クリートアダプターがあれば十分歩きやすいシューズでした

いや〜、思ったより全然歩きやすいです。雨の日に試しましたが、舗装路でもコンビニでも泥の中でも小さい砂利道でも普通に歩けます。ぬかるみではさすがに滑りましたが、普通の道では滑って転ぶような気が全くせず、しかも2kmほどバイクを押しながら歩いてみても疲れませんでした。

これ、いいシューズじゃないですか。

大きい砂利が転がっているような道や岩場などはさすがにやめておいがほうがいいと思いますが、普通のSPDシューズとして十分使える印象です。

これでRP1の評価は私の中でぐっと上がりました。最初はたまにエアロロードにSPD-SLで乗る時に使おうと思ったのですが、今では「サブのSPDシューズ」として使っていきたい、と思うようになりました。

SM-SH40は耐久性に難あり?

しかしです。それは、クリートアダプターSM-SH40が壊れない場合の話。このアダプター、両脇のラバーがすぐに剥がれてしまうことでかなり有名らしいんですね。Amazonの製品レビューでもかなり多くの不満の声が国内外のユーザーから寄せられていて、設計不良だろうとまで言われています。中には使用初日にラバー部が剥がれてしまった、という方もいます。

というわけで雨の中、トータルで4km弱、いろんな道をこのアダプターで歩いてみました…

クリートアダプターSM-SH40

すぐ壊れると言われるクリートアダプターSM-SH40

家に帰って確認してみましたが、私の場合はまだラバーが取れたりということはありません。もっとガツガツ歩くと壊れるのでしょうか。わりと遠慮なくあちこちを歩いたつもりですがとりあえず無事です。

クリートアダプター SM-SH40

いずれにしてもこのアダプターはプラスチックの土台の上に3mmほどの厚みのラバーが接着されている構造で、もし両側がポロッと剥がれたらクリートが露出するため、この歩きやすさは完全に失われるでしょう。

このラバーが取れてしまわないように、使用開始前にタッピングビスを打ち込むというハックが存在するようです。あるいはこのSM-SH40の使用を諦めてクランクブラザーズの製品を流用されている方もいらっしゃいます。

Twitterでこんな情報をいただきました(ありがとうございます!)。

シューズのソールにアダプターが密着するように裏側の凸部をカッターで削ると使えるようになるそうです。もしSM-SH40がダメになったら私もこれを試してみようと思います。見た感じ、クランクブラザーズのこのパーツは摩耗に強そうですよね。

ただしこのクランクブラザーズのアダプターのお値段は¥3,850もします。シュ、シューズの半額近いじゃないか…(汗)SM-SH40も¥1,382。

アダプターの耐久性が悪いとしたら、コストパフォーマンスはあまり良くないかもしれません。良いシューズだけにここはもったいないなぁ…

どんな人・どんなユースに向いているか

さて、このSHIMANO RP1はどんな人に向いているシューズでしょうか。

今回SPD-SLでは使っていないのでこの点については断言できませんが、SPD-SLの入門用シューズなら大きい不満は出ないのではないかという気がします。値段は安いですが、決して安っぽい感じはありません。硬さが適度なところも初心者向きだと思います。

予算が限られている学生の方や、ベテランの方でも「自転車通勤で使うサブの3穴クリート用シューズ」として良いものではないでしょうか。

レースで使う決戦用シューズ、休日の本気ライド用の高級シューズは雨の日に使いたくない、ということもあるでしょう。そんな時に活躍してくれそうです。

軽量で安価なSPDシューズとして価値がある

SPDシューズとして考えた場合ですが、値段のわりにかなり軽量なので「クリートはSPDがいいけど重いシューズはなんか嫌だ」という人にも面白い選択肢だと思います。私も今回久々に「うお〜足元軽いってやっぱりいいよね〜、最近この感覚を忘れていた…」とちょっと感動しました。

私がいまメインで使っているSPDシューズはSIDI SD15というモデルなのですが、これがSPDクリート込みで片側376〜383gあります。

SIDI SD15

超絶に歩きやすいSIDI SD15

関連記事:SIDI SD15 ペダリングよりも「歩き」を重視したオフロード対応サイクリングシューズ

RP1(サイズ40)はアダプターとSPDクリート込みで片側273gなので、ちょうど100gも軽いんですね。

SIDI SD15は火山弾が転がっているような道でもなんとか歩けてしまう立派なソールがあるので重くて当然なのですが、オフロードをガツガツ歩かないライドならオーバースペックとも言えます。

いつものSPDペダルのバイクでアーバンライドに出かけるなら、SHIMANO RP1のほうが軽量で軽快です。安くて軽いSPDシューズ、という価値が出てくるわけですね。単純にただ安いだけのシューズじゃないわけです。そのあたりが受けているのかもしれないですね。

SHIMANO RP1

安くて軽いRP1

品質的にも、これが8,000円程度なら非常に満足が行くものです。唯一の懸念点は先にも触れたクリートアダプターSM-SH40の耐久性問題。壊れないように補強するか、他社製アダプターを流用するなどの工夫が必要になってくるかもしれません。

サイズ選びだけ少し難しいところはありますが(基本はやはりワンサイズ上を選んだほうが良いでしょう)、安物にありがちなフィット面での違和感や痛みも感じません。

SPDアダプターの問題を除けば、コストパフォーマンスに優れる良いシューズではないかと思います。個人的にも「サブの良いSPDシューズを買えた」という感じで、これからも愛用していくつもりです。レビュー用に買ってみた製品には残念なものもたくさんありますが、このシューズは「当たり」でした。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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