クラウドファンディングのIndiegogoで今年4月にスタートしたe-bikeプロジェクト、The Babymaker。e-bikeに付きものの「巨大なバッテリー」が見えない「セクシーなアーバン・トランスポート」として話題になり、2020年にローンチしたIndiegogo案件では最高額の400万ドル以上の資金を集めることに成功しています(プロジェクトは現在も継続中)。
しかしこのバイク、北米やオーストラリアを除く地域への発送が遅れているだけでなく、メーカーからの情報アップデートも途絶えがちで、クラウドファンディング・プラットフォームにおける新たな「事故案件」に終わるのではないかという危惧が持ち上がっています。
参考 The Babymaker – Stealth Road eBike With Belt Drive | Indiegogo
参考 Meet the Babymaker, the terrible e-bike that just raised 4.7 million dollars
The Babymakerのスペック
このBabymakerは$1,049の「スタンダード版」と$1,337の「プロ版」があります。フレームのジオメトリは両者ほぼ共通でアルミ製、しかしIndiegogoに掲載されているジオメトリデータは十分ではないどころか、チェーンステー長をボトムブラケットとして表記し続けているところなど、コアなサイクリストからすると不安な点がいくつかあります(サイズは2つのみ)。
350Wのハブモーター搭載のe-bikeで、ブレーキはスタンダード版(ブルホーンのみ)がTektroのキャリパーブレーキ、プロ版はブルホーンまたはドロップハンドルが選択可能で、ブルホーンならMaguraの油圧ディスクブレーキMT30、ドロップバーならTRP HY/RD。スタンダードはチェーンドライブ、プロがCarbon Gatesベルトドライブという構成。シングルスピードのe-bikeです。
重量は14.5kg。PROの1,337ドル(約14万弱)という価格は、もしこれが高い耐久性と本当に快適で楽しいライドを保証するスポーツタイプのe-bikeであるなら、なかなか魅力的に映ります。
欧米とオーストラリア以外の国に配送されていない
しかしこのBabymaker、商品が配送されない・連絡しても返事がもらえない、というクレームが増えています。Indiegogoのコメント欄を読むと、ヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアの一部のバッカーはバイクを受け取れているものの、「その他の国」では受け取れている人が非常に少なく、メーカーのFLX Bikeは最新のアップデートで「その他の国」への配送は2021年の第2四半期になる、と記しています。
以下は寄せられているコメントの一部。
- 「その他の国」への配送が2021年Q2だって? 少なくとも1年は待つなんて思ってもいなかった。
- サポートにメールで質問を送ったけれど返事がない。祝日明けには(クレジットカード会社に)チャージバックを依頼するつもりだ
- 配送のための運送会社を全く確保していないように見える
- この自転車をまだ配送できていないのに、また新しい自転車の早期割引案内メールが来た!
- このプロジェクト全体が冗談で詐欺だ
- この人達と関わってしまったことを本気で後悔している。彼らは私の問い合わせに返事もくれないし、自転車も受け取れていない。…受け取りが1年後と分かっていたら私達はこのバイクを買っていただろうか?
- 「その他の国」への遅配がすごい。払い戻しはしてくれるんですか?
- このサイトにテスラを注文したことのある人がいないといいな。何年も待って配送延期が繰り返されると誰でも頭はおかしくなるよ
- (上の人に)テスラを注文するときは全額前払いはしないだろう?
FLX BikeにとってIndiegogoでのクラファン案件はこれが初めてではなく、過去には全ての商品を配送しているという記述もありますが、
我々がその気になればバイクの受け渡しは10年20年後ということも可能だろう・・・ということ・・・・!
というカイジ的な暗雲が立ち込めているようにも見えます。コロナ第三波の影響で貨物船の入港が制限されていることも原因ではないかという見方もありますが、数億円も出資金を集めたプロジェクトとしてはマネジメントがあまりにずさんではないか、という指摘が目立ちます。
FLX Bike/The Babymakerプロジェクトを「詐欺」と断定することは誰にもできませんが、大規模案件でこうした(もしかしたら意図的に配送遅延を織り込み済みの)トラブルが連発する場合、IndiegogoやKickstarterではいずれクレジットカード決済ができなくなるんじゃないか、という気がしないでもありません。
クラウドファンディングは出資される側も出資する側にもリスクがあります。しかしこのリスクを悪用するタイプの、文字通りの「自転車操業」タイプのプロジェクトがこれから出てこないか少し心配ではあります(The Babymakerがそういうプロジェクトであるとは言っていません)。
私がKickstarterでバックしたRoute Werksのハンドルバーバッグはちゃんと届くだろうか…