Tips & How-toタイヤ・チューブ

シーラントを入れたタイヤやチューブにCO2カートリッジは使ってはいけない?

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チューブレスタイヤの普及にともない、MTBはもちろんロードバイクでもシーラントを扱うようになった方が増えてきていると思います。チューブラータイヤ愛用者の方は昔からお馴染みかと思います。

Stan's No Tubes, Finish Line Sealant

しかしこんな話を聞いたことはないでしょうか。「シーラントを入れたタイヤやチューブにCO2カートリッジで空気(※)を入れてはいけない」と。

CO2カートリッジに入っているのが「二酸化炭素」だとすると「CO2カートリッジで『空気』を入れる」というのは、実は適切でない表現かもしれません

シーラント+CO2カートリッジはNGか

さて、それは本当なのでしょうか。

ロードチューブレスも最近は25C以下ということはあまりありません。28Cは当たり前、そしてグラベルロードなら35mmや40mmは普通, 太いタイヤなら650Bx47というものまであります。空気圧は低くとも、エアボリュームがでかい。

WTB BYWAY TCS 650BX47C

これだけエアボリュームが大きくなると、パンク時にハンドポンプで空気を入れるのは大変な作業。

というわけでまずはCO2ボンベで… ということになると思いますが(CO2ボンベにもロード用と大容量のMTB用があったりします)、果たしてこれは「良くない」ことなのでしょうか。

ハンドポンプ

使えるものなら使いたいですよね。

ビッグメーカー2社の回答

この問いに対し、VeloNewsの2014年の記事で”Zinn & the Art of Road Bike Maintenance“の著書で知られるレナード・ジン氏が回答しています。

まずこういう質問があります。

Stan’s No Tubesのシーラントを使っています。彼等はCO2インフレーターを使ってタイヤを充填することにはっきりと反対しています。シーラントがボール状にかたまり、使い物にならなくなるからだそうです。

– 質問者

これに対するジン氏の回答は以下。

CO2ボンベや、シーラント入りのインフレーターで充填した後は、概して同じシーラントを長期間にわたって使い続けないほうが良いでしょう。以下はシーラントメーカーからの回答です。

– レナード・ジン

ここで彼はエフェット・マリポーサのファウンダー、アルベルト・デ・ジョアニーニ氏のコメントを紹介しています。

ラテックス・シーラントがCO2カートリッジの使用で硬化する理由は物理的なものです。熱ショックが大きいため、シーラントの重合反応(polymerization)がしばしば発生するのです。

それを避けるには通常、充填する前にバルブを12時の位置にしてシーラントを6時の位置に流しこむようにすれば十分です。こうすることでシーラントは冷たいガスに直接さらされなくなります。

また、充填速度を遅くすると(最近の大部分のCO2アダプターならこれが可能です)温度の低下を防げるので、シーラントにとって良いです。グローブをしていないのならあなたの手にとっても良いです。

— Alberto De Gioannini, Effetto Mariposa 創始者

さらにStan’s NoTubesの中の人のコメントも紹介しています。

CO2はあなたを森の外に連れ出してくれはするが(=緊急時には役に立つが)、シーラントの寿命を短くすることに我々は気付きました。

— Peter Kastner, システムマネージャー, Stan’s NOTUBES

最後にジン氏はシーラントを長持ちさせるための一般的なアドバイスを提供しています。

シーラントはバルブを閉じている限り、非常に長いあいだ液体の状態を保ちます。オフシーズンで空気が入っていない状態で保管している時でも。

私はラテックスチューブでCaffelatexしか使ったことがありません(そしてチューブラーのみです)、というのもDugast(※訳注:タイヤブランド)が自社のチューブラーのラテックスチューブに使うことを推奨しているシーラントがそれだからです。

この結果シーラントは2シーズンほど持ちました、バルブをちゃんと閉じている時であれば。

– Lennard Zinn

CO2カートリッジは応急処置

ところで上で紹介したVeloNewsの記事では、「CO2カートリッジ使用の是非」と「シーラント入りインフレーターを他社製シーラントが既に入ったチューブやタイヤで使用すること」の2点について論じられているのですが、この記事では「CO2カートリッジ使用の是非」のみに焦点を当てて紹介しています。

LEZYNE CO2 Refill

実用的な結論としては、シーラントのビッグブランドであるStan’sとEffetto Mariposaの回答を見る限り、「シーラントを入れてあるチューブやタイヤにCO2を充填するのは推奨しない」ということになりそうです。

しかしレースやロングライドの出先で速やかな復旧が求められる局面では、CO2を充填した後に、自宅に帰ってからタイヤを空っぽにして、フロアポンプで空気を充填し、バルブの口をしっかり閉じておく、というのが良さそうです。

ところでCO2カートリッジを使うとなぜいけないのか? これについては、英語圏のネット掲示板の各所で主に次の2つが根拠として挙げられているのを見かけます。

  • CO2カートリッジ使用時の急激な温度差がシーラントを硬化させる
  • CO2とシーラントが化学反応を起こすことでシーラントが硬化する

ただ、いずれも推測の域は出ていないようで、科学的な根拠をきっちり示している投稿は見かけません。化学の専門家がいない、というか、いたとしても実験データを知っている人はいないようです。というわけで経験則や推測にとどまっています。

いずれにしても投稿に共通しているのは「CO2カートリッジを使うとシーラントが硬化し、ボール状になってしまう」という報告です。

この事象の正確な原因を知るにはラテックスと空気の関係、ラテックスと二酸化炭素の関係、などを詳細に調べる必要がありますが、我々一般ユーザーにはなかなか難しいものがあるでしょう(この件について知見のある方がいらっしゃいましたら是非ご意見をお伺いできれば幸いです)。

一応シーラントの大御所・Stan’s NoTubesが「CO2はシーラントの寿命を短くする」と言っているので、それを信じたほうが良いとは思いますが、同社のウェブサイトのFAQを調べてみても、なぜかCO2の使用についての言及は一切ありません。

この記事を書いてからだいぶ後に、Stan’sのサイトのFAQに次のような内容が追加されました(2021年6月現在)。

Is Stan’s sealant compatible with CO2?

CO2 is best used in an emergency situation. If you have no other means to get your tire to seat, you can use CO2. However, we recommend that you let the CO2 out either after your ride, or after setting up your tire, and replace it with regular air. Prolonged exposure to CO2 can cause the sealant to separate and/or decrease the life of your sealant.

Stan’sのシーラントはCO2と一緒に使ってもいいですか?

CO2は緊急時に使うのが最良です。タイヤを乗せるのに他の方法がないのなら、CO2を使っても良いです。しかし、ライドの後や、タイヤをセットした後にはCO2を抜いて普通の空気を入れることをオススメします。CO2に長時間触れさせると、シーラントは分離したり寿命が短くなる場合があります

というわけで、Stan’sはやはりCO2はあくまで一時的な使用に留めることを推奨しています。

FINISH LINEの「チューブレスタイヤシーラント」は、ボトルに”CO2 compatible”と明確に書かれているので、CO2カートリッジを使っても問題ないのでしょう。私はこのシーラントでうまく行かなかったので使っていませんが、この製品はラテックスを含んではいません。

私がFINISH LINEのシーラントをやめてStan’s NoTubes に戻した理由
FINISH LINEのチューブレスタイヤシーラントは昨年夏、鳴り物入りで登場した新製品です。一般的なシーラントで使用されるラテックスを含まず、主成分のポリエチレン・グリコールにデュポン社のケブラー繊維を配合。液体状態を長く保ちつつ、高いシ...

CO2はラテックスを硬化させるのか。硬化させるとしたら、特定の温度で硬化させてしまうのか。このあたりのデータ、ネットで探してみましたが今のところ見つかりません。

ただ経験則的には

  • CO2カートリッジはバルブを12時の状態にしてから使うこと
  • 緊急時に使ったら、帰宅後にエア抜きをして普通のフロアポンプで空気を入れるように
  • バルブはしっかりしめておくこと

ということになりそうです。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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