昨年夏に愛車をフロントシングル(1x)化しました(紹介記事をCBNブログに投稿しております。写真下にリンクあり)。ギアは前40t・後11-30tという構成です。
一般的にはロー側のギア比がきつくなるのを防ぐため、スプロケットを40tとかに巨大化させて釣り合いを取ります。しかし坂嫌いなのにそうはしませんでした。
その理由やメリットデメリット、カスタムに使えるコンポの選択肢について紹介していきたいと思います。
愛車は実質4速だった…?
カスタム前はクラリスの2×8速。前50/34、後11-28tという構成です。レースもヒルクライムもしないしこれで十分…と思っていたのですが、4~5000kmほど走っているうちにあることに思い至ります。
実質4速か6速(4通りか6通りのギア比)しか使ってなくね…?
リア | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 13 | 15 | 17 | 19 | 21 | 24 | 28 | ||
フロント | 50 | 4.5 | 3.8 | 3.3 | 2.9 | 2.6 | 2.4 | 2.1 | 1.8 |
34 | 3.1 | 2.6 | 2.3 | 2.0 | 1.8 | 1.6 | 1.4 | 1.2 |
当時、平地巡航で調子がいいときのギア比が2.6(表のオレンジ)でした。ケイデンス90で30km/h出る計算です。貧脚だから…じゃなくて安全のため(?)、追い風や下り坂でもこれ以上トップ側を踏むことはあんまりなかったです。ギア比の間隔も離れてくるし。
ロー側は、向かい風だと2.4(黄)。信号待ちだとフロントをインナーにして2.3(青)、上り坂では2.0(緑)…とシフトしていました。ただ、都内の自宅発着で数十km程度のライドだと、ギア比2より軽いギアを使うこともあまりありません。
あれ。じゃあ自分が常用してるギア比って4~6種しかない…?
これだけなら「ほぼ街乗りだしまあそんなもんか」で流しますが、このギアレンジはフロント変速を多用することになるのがうんざりポイント。しかもコンポはクラリス。悪くはないがストレスフリーとは言い難い。
かといってアウターローやインナートップに近い変速をすると、フロントディレイラーとチェーンが微妙に刷れますし(←調整が下手くそとも言う)。
さてどうしたものか。
足し算ではなく引き算
まず考えたのが、ジュニアスプロケットです。トップが14tからでちょうどよさそう…と思ったのですが、誤算がありました。
シマノで14-28tの11速だと、歯数は
14,15,16,17,18,19,20,21,23,25,28
という構成ですが、これだと結局、自分があまり使わないギアレンジがクロスレシオ化するだけなんですよね。フロント変速を多用する羽目になる、という点は解決されない気がしました。
とすると次の手は、クランクのさらなるコンパクト化です。
シマノのグラベルコンポ「GRX」はフロントダブルで46/30というクランクがあります。
ありますが、フロントディレイラーもGRXに交換が必要→レバー(STI)も変える必要がある→GRXのSTIはディスクブレーキ用→愛車はリムブレーキ、で詰み。
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そこで頭上に電球がピコーンと光りました。
フロントシングルでよくね?
そもそもロードバイクとはレース用の機材です。フロントがダブルなのは40km/hで巡航したり、斜度10%を超す激坂を延々上ったりを1台でこなす必要があるためです。私の脚力や用途に適さないのはむしろ当たり前。
あらゆるシーンに適応させる「足し算」ではなく、必要最低限までスペックを「引き算」することで、フロント変速から解放され快適性が向上し、パーツが減って軽量化も果たせるのでは―ということで、フロントシングルを試すことにしました。
上れないなら上らなければいい
フロントシングルの場合、歯数は前が38~42、後は30~40(←最もロー側のギアで)ぐらいが通例のようです。愛車は前40・後11-30t。これはギア比の最大最小だけで言えば、フロントダブルの前50/34t、後14-25tにほぼ相当します。
この構成にした理由は、後述するGRXのフロントシングルクランクのラインナップが40か42なので軽い方にしたこと、105のリアディレイラー(ss)で使える最大が30tだったことからです。
繰り返しますが私は上りが(下りとスプリントも)苦手ですが、この仕様でも斜度10%が百メートル以上続くような区間がなければ問題ありません。1度出たブルベも平坦基調だったので無事完走しました。
ただ、雑誌「バイシクルクラブ」のウェブサイトによると、UCIワールドツアー最古の歴史を誇るスペインの強豪、モビスターチームが今季使うバイクは前が50/37、後が10-33Tとのこと。世界トップクラスのチームでもロー側のギア比が1に近いことを考えると、割と攻めてる仕様かもしれません。
ではどうやって坂を攻略してるのか!?
…
……
………
…………そもそも峠とか行かんし。。。
出オチかよと石を投げたくなったみなさん、少し待ってください(陳謝)。
下のスクリーンショットは、国土地理院ウェブサイトで関東地方の地図を3D化し、高低差を実際より10倍強調して示したものですが、首都圏はほとんど真っ平らです。
もちろん2点間の標高差が少なくても、コース次第で獲得標高はいくらでも伸ばせます。とはいえ、そうやって〝意図的に〟坂を行くのではなく、適当にライドするだけなら、東京発着コースで激坂に死す心配は薄いと言えるでしょう。
フロント変速が嫌い? ならシングルにすればいい。
上りが苦手? じゃあ上らなければいい。
趣味の世界なんだから、困難に直面しても克服せずに全力で避ける戦略だっていいじゃないですか。峠の絶景が見たくなったらe-bikeをレンタルします。
実際どうだった?
結論から言うと大満足です。
実は、よく使うギアレンジ自体がクロスレシオ化されたわけではないです。
リア | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 17 | 19 | 21 | 24 | 27 | 30 | ||
フロント | 40 | 3.6 | 3.3 | 3.1 | 2.9 | 2.7 | 2.4 | 2.1 | 1.9 | 1.7 | 1.5 | 1.3 |
しかしフロント変速なしでトップ~ローまで使い切れるのは想像以上に快適。あとトップ側のギア比の間隔が狭まったので、以前だと「もう1枚重いギア踏めそうだなあ…。でもどうせ維持しきれないしなあ」と躊躇していた場面でもシフトアップするようになり、「風になる」感覚を楽しめるシーンが増えました。
フロントシングルにしてからの方が、ダブルの時より使うギア比はむしろ増えた気がします。
向く人向かない人
とはいえフロントシングル化(しかもリアがクロスレシオ)は万人向けのカスタムとは言えませんので、向く人・向かない人の例をざっくり記します。
向く人
- 車体が重いので軽量化したい
- BB周りの掃除やフロントディレイラーの調整が面倒
- 近所に坂はないし、坂が好きじゃない
- 押し歩き上等
- 今のバイクに乗り飽きたんで安く改造したい
総じてセカンドバイクのカスタムによいかもしれません。
ちなみにスプロケをでかくすると、不要になったフロントディレイラーやシフトワイヤーの分が帳消しになるくらい重くなります(11-30tと11-40tで重量差が200gくらいある)。なので、軽量化志向の方はご注意。
向かない人
- 平地はギア比3以上で巡航できる
- 峠大好き
- 電動変速
- 押し歩きは士道不覚悟で切腹
乗り手とバイクのいずれかまたは両方がハイスペックだと、わざわざピーキーなカスタムを施す必要が薄いです。
シマノ?スラム?
せっかくだから俺はフロントシングルロードを試すぜ!という方に、パーツの紹介です。
スラム
ロード用コンポはエントリー~フラッグシップまでフロントシングル対応。メリットは、左レバーにシフト機構がない専用仕様があること。デメリットは、シマノに比べて取扱店が少なく価格も高めなこと。
シマノ
ロード用のクランクアームに、サードパーティ(ウルフトゥースなど)製のチェーンリングを装着するのがコスト的に最もお手軽。歯数も純正より幅広に選べます。クランクの型式によっては、グラインダーで一部を切削しないと付けられないとされるのが難点。
クランクだけGRXのシングル仕様を装着するという手もあります。自転車雑誌では「GRXはシングルのクランクはMTB用スプロケ、ダブルはロード用と組み合わせることが推奨」と紹介されていますが、シマノに問い合わせたところ、シングルのクランクにロードのリアディレイラーやスプロケを組み合わせても問題ないとのこと。
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METREAにもシングル仕様のクランクがラインナップされています。見た目はかっこいいですが、高価かつ重いのが難点です。
その他
CBNマスター様がたびたび紹介しているSENSAH EMPIREシリーズにフロントシングルverがあります。
私は現物を試したことがないので、シマノとちゃんぽんにできるのか、そもそも単品売りがあるのかなどは分かりませんが…。でもフルセットで買っても安いですね。
とっても長文になりましたが、一言でまとめると
フロントシングルはいいぞ!
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