先月、ペーター・サガンのNFTアートシリーズが発売されました。NFTの説明自体は省略しますが(Wikipedia参考記事)、サガンのレース中のパワーデータをデザインの要素として取り入れ、彼の好きなアメリカン・クラシックカーのモチーフと組み合わせたものなど23点の作品がNFTのオンライン・マーケットプレイスであるOpenSeaに登場しています。
最高額は19億円
作品は最も安い「Squeeze」と題されたもので$4,635.81(本記事時点のレートで¥618,586.26)、最も高価な「Champagne」では$14,595,974.60(約19億円)となっています。「Champagne」(画像下)は2012年7月1日、サガンの1回目のツール・ド・フランス出場、第1ステージでの初優勝、グリーンジャージ初着用等「1」をモチーフとした作品。
吹き上がるシャンパンは恐らくそのレースのパワーデータを基にしているのでしょうか。波形っぽいですよね。なおシリーズ最高額のこのNFTアートには、そのレースでのパワーデータファイル(とその所有権)と、このプロジェクトを企画しているFuerzaのHunter Allen氏によるデータ解析等が含まれるそうです。
Fuerzaはサイクルロードレーサーの生体メトリックデータを使用したNFTアートシリーズを他にも多く手掛けており、公式サイトにはマーク・カヴェンディッシュやゲラント・トーマス、イェンス・フォイクトやヴァンデヴェルデ等々、有名選手のパワーデータを基にした作品もあるのがわかります。サガンもこの波に乗ってみたわけですね。
サガンも予想外の反応?
しかしペーター・サガンのこのNFTアートへのファンによる反応は冷ややかなものが多く、作品を誇らしげに告知したサガンに対して「そんなもの興味ない」や「NFTのブームはもう終わっているし、乗り遅れたね」や「サイクリングとは何の関係もないじゃないか」というコメントが彼のInstagramやFacebookアカウントではよく見られます。
恐らくサガンは他の選手同様、アートの題材になりそうな面白いパワーデータのあった日を思い出してそれをProject Fuerzaに提示するだけで、後はアーティストが仕事をしてくれる、という感じで、特に労力もなく、損をすることもないだろうと踏んだのだと思いますが、発表から1ヵ月近く経った今でも作品はまだ1枚も売れていないようです。
そして面白い余談としては、この件を大メディアであるCycingTipsが”If Peter Sagan can’t sell an NFT, nobody in cycling can”(サガンのNFTが売れないのならサイクリング界の他の誰のものも売れない)と題した記事を1週間ほど前に公開していたのですが、後になって削除されています(検索すると海賊サイトによるものと思われるコピーはヒットします)。
その記事はやはり冷めた内容だったのですが、削除された理由はCycingTipsの親会社Outsideからの要請だったことを執筆者がフォーラムで明らかにしていました。Outside社もNFT関連のビジネスを展開しようとしており、傘下のメディアがそれを盛り下げるような記事を出してほしくない、という大人の事情があったことがうかがえます。