バイクパッキング・自転車ツーリングにおける荷物の積み方、使うバッグのタイプは本当に人それぞれなので、正解はありません。同じ人でも旅先や日数などによって装備は変わるでしょうし、1枚の写真を見て「それあまり良くないよ」と第三者が判断することはできません。海外掲示板を眺めていたところ、まさにこのことが浮き彫りになる議論を見かけたのでご紹介します。
出典 Update on first trip: this is awesome!
何を優先させるかは人によって違う
まずスレ主さんが上の写真を紹介しつつ、このスレッドでいろいろと有益な情報を教えてもらって、いま良い旅ができています、ありがとうございます、とご挨拶。
そこに、下のレスが付きました(以下、いずれも抄訳でご紹介)。
私が年寄りなのかもしれませんが、なぜラックにもっと物を置かないのか理解できません。これら全ての荷物は2個の小さいオルトリーブ・フロントローラー・パニアに入るでしょうし、するとフレーム前三角にボトルを入れる余裕もできてハンドル上もスペースが増えるでしょう。
(パニアなら)それでいて全体の重量を減らせて防水性もあり、取り外すのも簡単で便利な耐久性のあるバッグです。日帰りやホテルを使った旅行であれば〜11Lのサドルバッグと小型のハンドルバーバッグがよりエアロで、軽量になりうるということは完全に理解できるのですが(バイクにラックマウント用の穴がないなら、それが唯一の簡単な方法だったりもするでしょう)
これを読んで私は「ああ、俺もパニアバッグをよく使うから言いたいことはわかるけど…」と思うのと同時に、「でもこの人はこれでいまうまくいっているらしいのだから、あえてこういうことを言わなくてもいいんじゃないか」とも思いました。
読み進めると上のコメントに、さらにこんなコメントが付いていました。
(上の方に)あなたは正しいと思います、しかしCyclingAboutの実験では、重量は前方面積やエアロ性能ほど大きい問題ではないことが示されました。どちらのセットアップもうまく行きますし、2個のパニアは5個のバッグよりも(運用が)間違いなくラクです。
しかし私が同じキャンプ用ギアで両方を比べてみたとき、風力抵抗が少ないほうが大きいアドバンテージがあると気付きました。そのおかげで平均速度とバイクでの快適性が確かに増えました。バイクパッキングの文脈では… どのみち平均速度は遅いので、エアロはそこまで問題になりませんけれども。しかしより安定はするかもしれません
CyclingAboutはバイクパッキング系の人気YouTubeチャンネルです。挙げられている動画は私は視ていませんが、そういう結果になる状況も十分に想像できます。ここまでで、重さ・防水性・簡便さが大事だという人、いや空力抵抗が少ない方が良いですよ、という意見が2つ出たわけです。
ここでスレ主さんが次のようなコメントを寄せました。
(スレ主さん)私は旅の経験が豊富ではないので、様々なセットアップを比較してどちらが良いと言うことはできません。ただいまのところ、いくつかの理由でいまの用品で満足しています。まず、複数の小さいバッグがあることで、持ち物を論理的に振り分けることができます。たとえば夜用の装備だけ、デジタル製品・デリケートなアイテムだけ、服だけ持っていきたい時など、柔軟にやれるのです。バッグを1個取り外すだけで出発できます。
2つ目の理由は、この自転車は非常にバランスが良く感じられるので気に入っているのです。重量がフレームに沿って平等に分散されるように感じられるからです。端的に言って、これは何も付けていないバイクをより重くしたバージョンのようなものです。最後に、バッグをすべてインラインに配置することで、荷物がない時と同じように空間にフィットさせられます。たとえば昨日、私は岩や穴、大きい障害物だらけの泥っぽい道を走っていました。厳しい操縦も、ほとんど車道を走っている時のように快適でした。
その上で言うと、まだ5日間しかこれで乗っていませんし、パニアバッグを試したこともありません。いつか是非試してみたいと思ってはいますが、いまのところ用品を変えることはないと思います
これも「なるほど、わかる!」と私は納得しました。この方はスマホやモバイルバッテリーやケーブル類を入れたバッグ、ウェアを入れたバッグ、食料を入れたバッグといったふうに、カテゴリーごとに分類している。そして、それを取り出しやすいところに配置している。モジュラー式の整理・運用方法、という感じでしょうか。さらに横に張り出さないところも気に入っている。
バイクパッキングではどのような要素を考慮すべきか。紹介したスレッドにあらわれているものを抽出すると、少なくとも次のものが考えられるでしょう。
- 総重量(軽いほうが当然いい)
- 重量の平均的な分散(偏らないようにする)
- 空力抵抗(前方投影面積を減らす)
- バッグの着脱の簡易さ
- 防水性
- 荷物のカテゴリー化・モジュール化
- モノへのアクセス性
- 障害物のある道・悪路への対応
これら全てを満たすようなセットアップは、たぶんないでしょう。このうちのどれか、自分が優先するものをいくつかピックアップして組んでいくのが現実的なところでしょうか。
私も複数のドライバッグにカテゴリー別に整理したアイテムを入れて、パニアバッグにパッキングすることが多いのですが、取り出しはやはり簡単ではありませんし(私はライド中に多くのモノにアクセスしないのでそれでも困らないのですが)、旅先が変わるとパッキングもかなりやり直します。そのためスレ主さんの言いたいことはわかります。
スレ主さんの写真と投稿をあらためて眺めると、この方は自分なりのシステムを育ててきて、うまく行っているのだろう、という印象を持ちました。テントもすぐに取り出せるところに置いてあり、シートバッグのスタビライザーにもなっていて、テント不要なライドへの変身も早そうだ。使い手の思想が見える良いセットアップになっているなぁと思いました。
こういう方に「なんでパニアバッグ使わないのかね」と言うのは、たぶん余計なお世話でしょう。パニアバッグ推しの方のコメントがいちばん「いいね」数が多かったので、ちょっと気になったのでした(「自分はこう思うのだから他人もこう思うに違いない」というインターネット病のひとつのように見えました)。