本日は超小ネタ記事、「林道サイクリング中に見てはいけないものを見たシリーズ(?)」の第3回です。前回に引き続きイノシシに遭遇したのですが(詳しくは下の記事をご覧ください)、今回は数の多さと距離の近さに結構身の危険を覚えました。

早めに気付いて良かった
猛暑日が続く8月のなかでも、比較的過ごしやすかったとある日のお昼頃のこと。普段ならグラベルバイクで高速で駆け抜けるのが楽しい、砕石の林道。しかしこの日は遠くから動く黒いものが見えたため、減速。昨今はいつどこでツキノワグマと遭遇してもおかしくない状況なので、緊張が走ります。
停車してよく観察すると…む、群れェェェーッ!!!
3頭…、いや左側にもいるし… よ、4頭も… 東ヨーロッパやバルカン諸国ではこうした場合、野犬であることが多いとよく見聞きしますが、ここは日本。
左側の個体が道を横切っていきます。やっぱりそうか、ウリ坊か… 完全に行く手を阻まれました。距離は何メートルくらいあったかわからないのですが、このレンズは35mm換算90mmのポートレート距離(12-45mmズーム。150〜300mmくらいのレンズが欲しいところですが、このズームは風景・自転車パーツ・動物までなんとなく1本でカバーできるので便利なのです)。
上の写真の部分拡大です。このサイズの子イノシシであっても、本気で突進してきたら落車して大怪我、ホイールはポテチになると聞きます。山の斜面と道のあいだの渇いた沢のようなところで何か夢中で食べているようでしたが、構わずに突破しようとするとサイドから頭突きを食らいそうで怖いです。
そのうち、白い矢印で示したウリ坊がどんどんこちらに向かって歩いてきました。この写真を撮っている時はこれらのイノシシが大人なのか子どもなのか判断が付いていなかったので、ここで震え上がりました(遠かったせいもあるものの、冷静に観察できていなかったと思います)。
ここで私は意を決し、こちらもヤバいケモノであることを示すことにしました。両手を天に向け、腹の底から地獄のような声を絞り出します。
ウゥゥゥ〜 アガァァァァ〜〜〜 Üghaaaa….æææ…grrRRRRRRuargh… WowhoaaaaaaAAA ODDORERAAAAA IDEMAUZOGORRUAAA!!!!
グォーアオーゥ ア゛ー アウアウ
するとウリ坊たちは私に恐怖した…という感じには全くならず、「なんかバカで面倒くさいやつがいるから退散しよう」という完全にナメた態度で、しぶしぶゆっくり山の中に消えていったのでした。
本当の危機はその後に起こった
ウリ坊たちが姿を消してから、私は低速でゆっくり先に進むことにしました。横から何か飛び出してこないかどうか、よく観察しながらポタリングの速度で走ります。
もう大丈夫だろう。と思った、その時でした。
山の右手側から下のサイズの大人イノシシが飛び出し、私の目の前を飛んだのです(下は別の日に撮影した個体)。
ドッ、という轟音が一瞬聞こえ、巨大な肉のかたまりがスローモーションで宙を横切ったのです…(当然写真はありません)。
私は驚きのあまり、フレームにまたがってハンドルを握ったまま金縛りにあったようになりました。冷や汗が吹き出してきます。どうやら先ほど見たイノシシの群れはすべて子どもで(遠くからだとその時はわからなかった)、親が近くで私の様子をうかがっていたようなのです!!
左手の藪の中からは「グワッ、グルルルルッ(意訳:コ◯ス)」という、明らかに私を威嚇していると思える唸り声が聞こえてきました…
動物に遭遇しやすい天気とは
この日、「狩りをする時は動物の気持ちを考えると良い」という主旨の、サバイバル登山家・服部文祥の話を思い出しました。こういう天気の日はシカがエサを求めて出てくるのではないか、といったことが肌感覚でわかるようになる、という内容だったと思います。
その話は以前どうもピンとこなかったのですが、ここ最近サイクリング中に野生動物と遭遇する機会が多くなって、なんとなくその意味がわかるようになってきた気がします。
野生動物と遭遇した日はどれも、猛暑が続いた後だったり、大雨が続いた後の「過ごしやすくて気持ち良い日」だったのです。つまり「サイクリング日和」にイノシシやカモシカやウサギやタヌキといった動物に遭遇していました。
私達が「今日は気持ち良い天気だな〜、こんな日はサイクリングが最高だよ」と思って自然の中にライドに出かける日は、恐らく動物たちにとっても「今日は過ごしやすくていい天気だな〜、ずっと藪の中で暑さに耐えて寝てたからメシ探しに行こう」という日になるのではないか。
そして、そういう日は主に朝方や夕方に主に活動する、いわゆる「薄暮性」といわれる動物も、どんな時間帯でも活動しているような気がします。