タイヤ・チューブ製品レビュー

Mavic Road USTは本当に使いやすい? 実際に試してみました

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MavicのRoad USTは、その要件を満たしている製品同士であればタイヤの着脱が従来のチューブレス系製品よりも断然ラク、と言われている規格です。このMavic Road USTがいかに素晴らしいものであるか、様々なメディアが伝えていますが、本当にそんなに簡単なのか。筆者が実際に試してみることにしました。

テストしたホイール

まず検体です。ホイールはMavic Cosmic Elite UST。これは筆者の家でほとんど使われずにストックされていたホイールです。入手時はYksion Eliteというクリンチャータイヤがチューブとともにセットされていました。カタログ重量前後1,770gのほぼ鉄下駄。とはいえクリンチャーで少し乗ってみた感じは数字ほど鈍重な印象はなく、酷評すべきところはありません。

Mavic Road USTは本当に使いやすい? 実際に試してみました

このCosmic Elite USTは、Road USTの実力を推し量る上で非常に良い立ち位置にある製品だと思います。というのもUSTラインナップの中でも安いほうの製品だからです。これより安いのはKsylium UST、その下にAksium USTがあります。一方、大メディアやショップ関係者がMavicの体験会で扱った製品はフラッグシップに近いモデルであるはず。

このCosmic Elite USTでもRoad USTはいいなぁ、ということになれば、その実力は本物と言ってもいいんじゃないでしょうか。メーカーの良心が試されるところです。本当はAksium USTで試せればもっといいと思うけど。

テストしたタイヤ

さて今回用意したタイヤはこちら、Yksion Pro UST 25Cです。現在のところMavic Road UST対応タイヤはこの1種類のみ。サイズは28Cもありますがここは普通に25Cをチョイス。タイヤレバーはIRCのものを使います。これはもともと持っていたもの。シーラントやバルブの話は今回、割愛します。タイヤのハメやすさ、ビードが上がりやすか、そこに話題を絞ります。

Mavic Road USTは本当に使いやすい? 実際に試してみました

チューブレステープなのですが、これもこの記事では詳細には踏み込みません。私のCosmic Elite USTは入手時、すでに純正テープが巻いてありました。これをそのまま使います。

Mavic Road USTは本当に使いやすい? 実際に試してみました

装着テスト

ではいよいよタイヤの装着にとりかかります。ビードとリムに石鹸水は…塗りません。なぜならMavicがそんなことしなくていいとあちこちで言っているからです。言われた通りにしてみます。まずフロントホイール。ビードをリムの片側にのせます。問題なし。次にそのビードを中央の溝に落としたあと、反対側のビードをリムにはめていきます。バルブ付近を最後に入れるようにします。

さて、ここでバルブ付近のビード、簡単には入りませんでした。魔法のようにパカッと入った、みたいなインプレをネットで多数目にしましたが、残念ながらそういう感じではありませんでした。素手では絶対無理。ただ手袋をして、IRCの赤いタイヤレバーを2本使って、ビードが中央溝に入っているのを確認して、落ち着いて攻めていったところ、まあまあ短時間でタイヤの装着が完了。

普通にハメやすいクリンチャータイヤを★★★★★とすると、Cosmic Elite UST + Yksion Pro UST 25Cの組み合わせは★★★★☆という感じです。ちなみにMavic本社の人はタイヤレバーなんか使わなくても入るよ、でもレバー使ってもいいんだよ、みたいな微妙なことをインタビューで語っているのを読みました(笑)。レバーの使用が公認というのはいいですね。

では今度はフロントホイールに空気を入れていきます。使用するのは至って普通のフロアポンプ、LEZYNE CNC FLOOR DRIVEです。クワハラのヒラメ付き。使用開始から今年で9年目になりますが全然壊れません。

シュコシュコシュコ…とポンプを押していきます。すると20PSIくらいまではプシュ〜、プシュ〜、と空気ばかりが漏れていく音がします。しかし力むことなく普通にポンピングを続けていった結果、普通にビードがあがり、そのまま7気圧、100PSIまで空気が入りました(※最大空気圧)。何の問題もありません。これは驚きました。

ビードが上がらないとか、ビードが上がる時にパンッっていうすごい音がするとか、都市伝説なんじゃないのか?

と思いましたよ。

Mavic Road USTは本当に使いやすい? 実際に試してみました

さて、同じ手順で今度はリアホイールにYksion Pro USTをハメていきます。これもややキツかったものの、タイヤレバーを使えば入れられました。ただ外出先でこのキツさだったらちょっとイヤだなとは思いました。慣れだろうけど。

そして同じように空気を入れはじめたのですが、今度は問題が発生しました。

20PSIまで入るのですが、それ以上全く入りません。プシュ〜、プシュ〜、と空気を継ぎ足すよりもはやく抜けていくのです。これが…これが「ビードが上がらない」というやつなのか! 入れても入れても抜ける空気。これは…山頂まで転がした重い岩がまた麓まで落とされてしまうというシジフォスの神話! 無間地獄!

これは困った、ということでホイールを観察。どうもバルブ付近からエアが大きく抜ける音がしています。そこでそのあたりをリム手前、向こう側へと押したり引いたり、グニグニします。そのあたりのビードがうまくシートに乗ってないんだろうと判断したからです。そしてこのあと空気入れを再開。

今度は40PSIまで空気が入るようになりました。でもそのあとは同じように無間地獄。ビードが上がりません。そこで今度はタイヤ全周にわたってビードをもみこみます。そして空気入れ再チャレンジ。すると…おお、今度はうまくいった! 7気圧まで入ります。

このあと、フロント・リアともにシーラントをバルブ口から注入。それから経過観察していますが、どちらも空気の漏れ方が半端ありません。ただこれは今使っているシーラントの話になると思うので本記事のスコープ外。割愛します。

フロントよりもリアのほうが空気を入れるのに苦労しました。それはビードが完全にハンプを超えきっていなかったからだと思うのですが、リアだけで少しつまづいた理由はホイールの個体差またはスポークの張力の違いにあるのでしょう(スポーク張力によってリム外周の長さが変わるため)。

ちなみにこれもUSTとは関係ないですが、シーラントを入れてから24時間以上経った今でもYksion Pro USTのタイヤサイドからは泡がプクプクと出ております。エア保持層のないチューブレスレディタイヤというのはこういうものなんですね。蟹かよw

Mavic Road USTは本当に使いやすい? 実際に試してみました

まとめ

Mavic Road USTの使用感をまとめます。使用ホイール、Cosmic Elite UST。使用タイヤ、Yksion Pro UST。

  • 石鹸水を塗らなくても良いというのは本当だった
  • タイヤはハメやすいとは言えないが、極端にハメにくいとまでも言えない。クリンチャーより微妙にハメにくい程度
  • タイヤレバーは必要だった
  • 普通のフロアポンプでもビードはあがった
  • 一発でビードがあがった個体もあれば、最初はやはりあがらない個体もあった

恐らく他のチューブレスシステムはもっともっと苦労するのでしょう。私はUSTでもリアでビードが上がらない経験をしました。最終的には何とかなりましたが、世の中にはCO2ボンベやコンプレッサーを使わないとビードが上がらない組み合わせもあるわけです。チューブレスの敷居は、USTがあるといえどまだ決して低いとは言えないな、というのが正直な感想です。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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