Red eTap AXSに続いてForce eTap AXSをリリースしたSRAM。これらの製品のマーケティングにはこれまでにない特徴があったようです。
Bicycle Retailerの記事によると、Red eTap AXS・Force eTap AXSともに「発表」と「発売」(パーツ及び各社からのeTap AXS搭載完成車)が同時だったところが新しいそうです。Force AXS eTap搭載の完成車は同コンポの発表と同時に150ものモデルがいきなり販売開始されていました。
事前リークでバズらせる手法の弊害
ここ数年の新製品のマーケティングは、事前に意図的に情報をリークしたり、ティーザー広告を出すなどして発表前にバズらせて消費者の関心をひく、というパターンが多かった。
しかしSRAMはeTap AXSについてはそういうことをやらず、たとえばForce eTap AXSの場合は「2019年4月3日」というターゲットを決めて、その日に発表と発売を同時に行えるようかなり入念なプロジェクト管理をしたようです。
ではなぜSRAMは「意図的な事前の情報リーク」をあまりやらなかったのか。
いくつか理由があるようですが、ひとつは小売店の保護。数ヶ月あるいは1年後に新しいコンポが出る、という情報を出すと当然現行モデルの在庫がだぶついてしまいます。売れなくなる。これについての苦情が小売店側からずっとあった。
さらに新製品がいよいよ正式発表になる頃にはバズった効果もとっくに薄らいでいて、みんな関心がなくなっていた、という事態が発生しうる。これは先月発表されたCampagnolo Super Record EPS 12 speedのことを思い出すとたしかにそういうケースだったように思われます(みんなちょっと「ふーん」という感じの反応だったような…)。
今回SRAMが採った戦略は”show and ship”(発表と同時に出荷)と呼ばれるものらしく、これはApple社がよくやりますが、言われてみると自転車業界では確かにあまり前例がなかったような気がします。
ただ情報を隠そうとしてもなかなか難しく、プロライダーのバイクに搭載されたプロトタイプの写真はSNSにリークされる、公開特許情報が発見される、そしてeTapのような無線搭載機器は認証機関への登録でバレる、等々、「2月6日にRed AXSをドン!」「4月3日にForce AXSをドン!」というのは大変だっただろうと思います。
あとこういう「いきなりドン!」のもうひとつの目的として「消費者は欲しいと思った時にすぐに買いたい」と思うので、そういう欲求を満たしたい、ということもあったようです。
消費者にとっても販売網にとっても良いことだ
SRAMのシニアPRマネジャー、マイケル・ゼルマン氏は次のように語っています。
人々は製品について耳にした時点で買いたくなるものです。我々は過去にこうしたことをやったことがありませんでしたが、これは自転車店が求めていることであり、OE(完成車メーカー)が求めていることであり、ライダーが求めていることなのです。
(中略)我々のゴールは消費者にエキサイティングなものを届けることです、しかし販売網にはダメージを与えずに。
さてここで冗談タイムです。この記事を読まれているあなたがForce eTap AXSを買ったその24時間後にRival eTap AXSが発表・販売されるらしい! でもポケットはもうからっぽさ!
この驚愕リーク情報に街の人は:
- 頼むやめてくれ
- 俺はApexまで待つぞ
- これだから俺は固定とシングルスピードしか乗らないんだ
- SHIMANO 105は来年念力で変速できるようになるらしいぞ
まあ欲しいと思った時に買うのがいちばんです。新製品が出ても悔しい思いをする必要もないでしょう。出たばかりだと高いし!
Red eTap AXSとForce eTap AXSの主な違い
最後にRed eTap AXSとForce eTap AXSの主な違いを付記して置きます。
- Force eTap AXSのグループセットはRedに比べて1,000ドル安く、300g重い
- この2つは大まかに言って互換性がある
- Force eTap AXSには28mmクリアランスのリムブレーキキャリパーが用意される(Redのリムブレーキは25mmまで)
- Redに用意されている最大チェーンリング50/37TはForceでは用意されない
- オプションのQuarqパワーメーターはForceの場合、チェーンリングを交換できる
- Redの場合、チェーンリングが摩耗したらスパイダーとパワーメーターをまるごと交換する必要がある