フレーム・完成車製品レビュー

VIGORE 山と旅の自転車プラス 何をやるにしてもフリーダムに楽しめる私のグラベルロード

皆様お久しぶりです。CBNレビュアーkazaneです。

実は私去年の春頃から「VIGORE 山と旅の自転車plus」なる自転車をグラベルバイクに仕立てて乗っており、愛車紹介ということでこの場をお借りして書かせていただくことになりました。

以前CBNフォトギャラリーに投稿させて頂いたシェイクダウンの時の写真。外見に関してはサドルバッグとリム以外は今もほぼそのまま乗ってます。

今回はグラベルバイクってこんな自転車なんだ、という風に読んで頂ければ幸いです。

なぜこのフレームを選んだのか

ディスクブレーキのレーシングロードバイクは出た当初から物凄く興味がありました。いつ鞍替えしようか、どんなホイールを組んでやろうか。そんな感じでいつもインプレ記事を読み漁ったり、手組ホイールの設計計算をしていました(※注 自作手組で実験するのが大好きな私に完組を買おうという発想は無い)。

しかし設計計算の途中であるショッキングな事実に気付きました。

ディスクブレーキ用の前輪をリムブレーキ並みに少ないスポーク本数で組むのは物理的にハイリスク過ぎて不可能。スポーク本数を限界まで減らしたとしても空力的に3割程度不利になる。

となると、平坦エンデューロを主戦場にする私にはレース用ディスクロードを導入するメリットが無い。”約3割”という数位を覆す方法も無い。

そんなわけで、そこから数年間はそれまで通りリムブレーキのロードであちこち走りに行ったりレースに参加したりしつつ様子見を決め込んでいました。すると、「バイクパッキング」や「グラベルバイク」なるジャンルが出てきました。

この新ジャンルに対する私の第一印象は、

  • 空力、重量、ポジション等をシビアに考えなくて良さげ。
  • 他人と競い合うことなく自分のやりたいように遊べるので気楽。
  • ロードでは気を使う荒れた路面や段差でも楽チン。
  • ディスクブレーキやスルーアクスル等の最新規格の恩恵を存分に受けられる。
  • 自作手組ホイールの空力性能以外の部分を研究する格好の素材。
  • ディスクブレーキの恩恵はひょっとしてロード以上では?
  • MTBとロードのコンポを混ぜられるのでパーツの選択肢が爆増。
  • ハブさえ合ってれいばリムもタイヤもコンポも自由。
  • 積める荷物が増えて自転車旅も楽々。
  • 舗装路はMTBより速く遠くまで楽に走れそう。
  • 前から気になってたあの道に入れる。

そして私は物凄く身近な所で自分の理想型と言えるフレームが開発されているのを知っていました。

古参の常連客の皆様に混じって試作品に試乗までしていました。新しい自転車であり、慣れ親しみよく知った自転車でもありました。

そこは私が10年前からお世話になっている京都岩倉に本店を置く老舗工房VIGORE。

京都岩倉に本店を置く老舗工房VIGORE

京都岩倉に本店を置く老舗工房VIGORE

常に新しい自転車遊びや新技術の模索開発をされている工房で、今では普通に見かけるTIG溶接のクロモリフレームを日本で最初に作ったのも、フルサスダウンヒルバイクを日本で最初に作ったのもVIGOREです。

グラベルバイクの開発も早く、「山と旅の自転車」 (~plusの前身の26インチカンチブレーキモデル)はグラベルバイク黎明期には既にリリースされていましたし、スルーアクスル規格やディスクブレーキ規格に対応するための試作品がお店の隅に置かれていることもありました。

それらは開店前に京都北山の古道や峠で試され、何年も掛けて改良を加えられていったと聞き及びます。

それが京都のVIGOREというショップがプロデュースしている「VIGORE 山と旅の自転車plus(略して「山旅車plus」)」という自転車です。

製品版に初試乗した時の記念写真。店頭のホイールを片っ端から試しつつ、複数のフレームサイズに試乗。どれも面白いなぁ…。これ、仕様決めるのに悩むパターンや。(汗)

山旅車plusに関して言えば、私もたまに古参の常連客の皆様に混じって試作品に試乗していたので、新しい自転車であり、慣れ親しみよく知った自転車という存在でもありました。

という訳でVIGOREさん今回もお世話になります!!

私の「山旅車plus」ーこんな風に仕上げてみました

カラー

VIGOREでオーダーする際、フレームカラーとパーツ構成は自分で決めます。

まず色に関しては、

  • VIGORE CrMoRacer(既に所有) ⇒ フェラーリの赤にランボルギーニの黄色を混ぜたら公道最強
  • VIGORE Super Rigid II(既に所有) ⇒ カワサキのライムグリーンに赤を加えたヤドクガエルカラー
  • VIGORE 山と旅の自転車plus ⇒ マクラーレンのオレンジにホンダのシルバーでマクラーレンホンダ

という自分でも若干よく分からない連想ゲームでコンセプトが決まり、自動車用色見本票から本田技研工業の高級セダン向けのシルバーを拝借。差し色にマクラーレンの企業カラーであるオレンジを入れた。

ブレーキラインのねじねじもオレンジ。シフトラインは敢えての黒にして整備時に分かりやすいようにした。ってよく見たら1個どっかに飛んでいってる!?(後で直しました)

コンポとメインパーツ

メインコンポはR7000系のShimano 105を選択。納車されてから数ヵ月後GRXが発表されたのだが特に載せ換えの必要性は感じていないのでこのまま使い続ける予定。

  • グラベルで使うのでペダルはDEORE XT PD-M8020。
  • ハンドルがDixnaのJ-FIT。
  • ヘッドセットはクリスキングのつや消しマンゴーレンジ。
  • ステムとシートポストはVIGOREオリジナルのブラック。

ここまではロードとMTBの経験からある程度使い慣れたものをチョイス。サドルが一番大迷走しましたが、最終的にTNIのSlimというモデルに決まった。

こちらがTin Slim。過去に投稿させて頂いた記事はこちら

TNI Slim 舗装路もグラベルも行ける良心価格の救世主
先に私のサドルに求める最低限の条件は、 サドル後部の丸みで骨盤を中央に導き固定すること 前部はペダリングを阻害せず脚の動きをガイドする程度の細さ コーナリング時にモーターサイクルのニーグリップの要領でバイクを容易にコント...

関連記事:TNI Slim 舗装路もグラベルも行ける良心価格の救世主

足回り

グラベルバイクでは一般的に650Bと700Cの両方の規格を1本のフレームで使用出来るようになっていることが多く山旅車plusもどちらも選べるようになっています。

私は「どうせ新ジャンルのバイクに乗るなら足回りも自分にとって未知の規格にしてしまえ」というノリと勢いで650Bを選択。

700Cのタイヤやホイールって、世の中にどんな製品があってどんな前評判で...ってロード乗りなら大体知ってるじゃないですか。それじゃ面白くないかなと(笑)

ホイールは105ハブのVIGOREさん謹製の手組。最初のリムはWTB KOM Light i23 32Hだったがガレ場を走って破壊(笑) 軽くてツーリングには良かったんですけどね~(^^;

現在はARAYA DM-650に換装して使用中。組んだのは私。いやー、いきなり自分の体重とリムの組み合わせの限界と重リムの有効性を学んだ(^^;)

タイヤはSOMA cazadero 650B×42Cです。グラベル寄りのタイヤですが実は微センタースリックなので舗装路も割りとイケます。テストで試した中では最も軽快とVIGOREさんもオススメ。

SOMA cazaderoのトレッド面

SOMA cazaderoのトレッド面。殆どブロックタイヤといった様相ですが、よく見ると真ん中に細いスリックゾーンが。これが案外大きな仕事をします。耐パンク性能もガラス片や植物の刺等よほど鋭いものを踏まない限りは問題なさそうです。

ハンドル周り

ハンドル周りは割とシンプル目。CAT EYE QUICKがお気に入り。気が向いた時に最低限の情報だけ分かれば満足というコンセプトのもと、私が初めて手に入れた同社のサイコンCC-ED200と同じ機能を持つこのQUICKを選んだ。

なるべくシンプルにまとめたハンドル周り。メーターを読んでるヒマがあるなら景色を見たいからサイコンの情報は最低限の方が良い。


 

山旅車plusに乗っている間はケイデンスや心拍はむしろ知りたくない。パワーメータなど以ての外だ。小さな画面をのぞく暇があったら怪しい小道や標識を探す作業を優先する。

ライトは私の所有する全自転車に使い回しで使用しているVOLT1700。ベルもキャットアイ製でこれも全車同じのが付いています。

こんな感じで走るバイクです。

最初にお断りしておきます。

500g越えのリムに470gのグラベル用タイヤを履かせてチューブドで運用しているので舗装路の加速とヒルクライムは期待しないで欲しい。

前後32hの手組ホイールは丸スポーク。フレームも丸パイプのクロモリ。清々しいまでにエアロ要素が皆無。GP5000辺りの高性能ロードタイヤにグリップで勝てる訳もないのでコーナーも遅い。

普通のロードについていくのは控え目に言って苦行。舗装路の速さ的な性能はガックンと落ちましたw

でもグラベルバイクはロードには無い新発見を私にもたらした。

重いリムが楽しい

まずは重リム。

安くて丈夫で財布に優しいからガンガン走れるうえ、グラベルで雑なペダリングをしても推力の変動にブレーキを掛けてホイールスピンを防止してくれる。それでも未舗装路を走る時は全身を使って前後のグリップバランスを微調整しつつ路面の凹凸を気にしながら自転車を前に進める必要があり、特に上りでは地面・タイヤ・自転車との対話をじっくり楽しむ事ができる。

重いリムは高性能だ、などとロードの世界だけの自転車人生を送っていたらまず気付かなかっただろう。

前述の通り加速は遅いが、タイヤの有効径が700Cより若干小さいのと、スルーアクスルの恩恵で重量の割りに軽い。逆に速度は落ちにくいので、ペダリングを止めさえしなければ楽に転がっていく感じはあります。

寄り道が楽しい

ロードより若干遅い巡航速度のお陰でロードバイクでは速過ぎて見逃していた色々な小道の存在に気付き入って行くことができるのも最高の遊び。

例えば、峠の頂上付近にあるこういった脇道。

ロードでは入りたくない程度には荒れている脇道。奥には何があるのだろう?

ロードでは入りたくない程度には荒れている脇道。奥には何があるのだろう?

峠とは坂の頂上であり、山の尾根の一番低いところでもあります。つまり尾根道に繋がっている可能性があるのだ。ロードだとここがゴール。あとは下るだけ。でもその日グラベルバイクに乗っていたとしたらここはスタート地点である。

また、どこにでもあるちょっとした雑木林でも、そこを一周または横断する散策路が付いていたりする。大抵短い区間で終わってしまうが、それらを探し、繋ぎまくっていくのもまた一興だ。

ロードではパンクに気を遣う荒れた旧道区間も、グラベルでは丁度いい遊び場。

ロードではパンクに気を遣う荒れた旧道区間も、グラベルでは丁度いい遊び場。

MTB程の走破性があるわけではないですが、砂利の農道や林道、荒れて舗装がめくれたアスファルト程度なら何の苦もなく走れます。街中の小さな段差に気を使う事も無くなりました。

でもフルリジッドなのでトラクションは自分の身のこなしで稼ぐしかないですし、障害物は抜重して躱すしかない。滑ったら即座にリカバリーする術も自然と身に付くので自転車に乗るという行為そのものがどんどん上手くなってゆく。この一連の流れが実に面白い。

重い荷物も余裕

ロードバイクで苦労していたちょっとしたツールや荷物の搭載が何のストレスも無く出来るので普段の日帰りツーリングでも心配事が減りストレスが軽減。今じゃ、「重くなるからどうのこうのとか気にすんな心配なら積んどけばいい。」とさえ思います。

記事の冒頭の写真の状態にフロントバッグを1個追加しただけで2泊3日のツーリングに余裕で対応。ボトルケージ3個標準装備は正義。

Q.そんな装備で大丈夫か?
A.大丈夫だ問題ない。これで2泊3日走った。何ならまだまだ積めるぞ?

マシン重量は増えたものの普通に輪行も出来るから行動範囲は格段に上がった。「山と旅の自転車plus」。本当に名前のままの自転車だ。

安定のダウンヒル

速くはないはずのグラベルロードが意外に得意なのがダウンヒル。

前述の通り別に速くはないのだが、BB下がりが大きいうえに太いタイヤを履いていてオマケに油圧ディスクブレーキの効きも追加されているので安定性抜群なのだ。

タイヤのグリップが無いのでコーナーに突っ込み過ぎるともの凄く怖いですが、この安心感は評価→★★★★★。

650B以外のホイールだとどう?

最後にホイールを換えるとどうなるのかというと。

700Cのロード用の軽いホイール(VIGORE本店の試乗用)で走ってみた感じでは、CrMoRacerの前後ハブ軸回りを筋肉質にした感じでバネ感はいい意味で同じです。スプリントも案外速くて高速巡航もイケる。要するに現代チックな凄く乗りやすいクロモリロード。

ファンライドやグルメライド、ブルベ、耐久レースといったイベントへの参加なら全く問題無いというかむしろロードよりグラベルバイク×ロード用ホイールの組み合わせの方が向いてるんじゃないかとさえ思う場面すらあります。

シクロクロス用のホイール(こちらもVIGORE本店の試乗用)もロード用と同じく軽快で結構速い。ロードのような軽快感も残しつつ硬いダートや砂利もイケる。

レースで通用するかどうかはシクロクロスのレースに出たことないので知らんけどシクロクロス的な遊びはしっかり出来る自転車になっている。

要するに普通に楽しい。

ハンドルを入れ替えればクロスバイクにもフルリジッドMTBにも化ける。

私の場合ロードっぽい事をしたかったらリムブレーキのCrMoRacerに乗るのでどっちのホイールも持ってないのですが、タイヤの選択肢を増やすという名目で700Cのグラベルホイールをコツコツ製作中ですw

まとめ

グラベルバイクはこんな人におすすめです。

  • 自転車を趣味にしたい or 趣味にしているけど他の人と競うのは好まない人
  • ポジションや重量を気にせずアバウトに楽しみたい人
  • 自転車旅が好きな人
  • 自転車で冒険したい人
  • 1本のフレームで何でもやってみたい人
  • 道具を組み換えて楽しむのが好きな人

阿蘇の大地を往く山旅車plus。私はこういう遊びがしたかったのだ。

という訳で何をやるにしてもフリーダムに楽しめるグラベルロード。

最初からレースに出ることを目的としないなら自転車趣味の最初の1台としても案外アリかもしれません。

著者
kazane

自転車の他、クルマと釣りを主な趣味とする技術職サラリーマン。自動車系学科で学んだ経験を自転車趣味にも流用し、ツーリングやレースを楽しみつつ機材の実験も並行して楽しむ、何でも自分で触りたいねん系サイクリスト。機械いじりは仕事で練習して趣味で本気出すのがモットー。関西人だけど訳あって熊本在住。

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