Bikerumorが2021年のスポーツ自転車産業を予測する記事を出しています。
「製造・出荷・原材料・配送・人員確保等々、すべてパンデミックの影響で滅茶苦茶になってしまったが、その本当の影響はまだ見えはじめたばかりである。大規模な品不足から、耐え難く思えるほどの遅延まで、2021年は非常に奇妙な1年になるので心の準備をしておこう」という内容です。
本記事ではその一部を抜粋・ざっくりとした抄訳で紹介します。
出典 2021 Predictions: What’s coming for the cycling industry this year
何もかもが品不足になる
多くのバックオーダーを抱えたブランドは次のバイクの発送は12-18ヶ月後だと言っているし、しかもそれらは既に完売済みでもある。
ニューバイクはほんの少ししか発表されない
ビッグブランドでの製品開発サイクルは2〜3年単位であり、今年発表予定のモデルは2018年か2019年頃に着想されているはずなので、いくつか新しいバイクは出るだろう。
だが小規模ブランドからの工場へのオーダーは、一般的に発注数が少ないため後回しにされることがある。彼らが最も苦戦するだろう。
NAHBSやPhilly Bike Expoに出展しているParleeのようなブランドは、原材料とコンポーネントの確保を心配するだろうが、極端な遅れは出ないだろう。全般的に言って2021年は大小問わず多くのブランドが数週間・数ヶ月も新製品の発表を延期するだろう。
新しいブランドの立ち上げも少ないかもしれない
スタートアップ企業がアジアの工場で生産ラインを確保しようとしても、既に工場と関係を持っている他の会社の先約が入っているからだ。
国内産パーツでさえ入手困難になるだろう
White Industries, Chris King, Industry Nine, One Up, Wolf Tooth, Cane Creek, Push Industriesのようなインハウス生産のサイクルパーツも、原材料とサプライチェーンに依存している。
大部分が完全な生産レベルを取り戻しつつあり、原材料のサプライヤー(特に国内から調達している業者)も追いついているのは有利な点だが、海外の競合製品が売り切れ・バックオーダーになっていることから、これらのブランドの需要は2020年に爆上がりしてしまった。
その影響で彼らの製品にも売り切れているものや、バックオーダーになっているものがある。なおCampagnolo, Rotor, Masonのようなブランドも「国内製造ブランド」だ(=だから同じような状況だ)。
ブレグジットのせいで(UKとEU間の)物事が複雑になる
UKでサドルを生産しているBrooks EnglandはUK内の顧客への販売を一時的に停止せざるをえなくなった。彼らのサドルはまず物流拠点のあるイタリアに送られ、そこからUKに送り戻されるからだ。
オンラインショップはようやく旧型バイクの在庫処分ができる
これはどちらかというと推測だが、JensonUSAやCompetitive Cyclistで25%〜40%OFFになっている1〜3年前のロードバイク・グラベルバイク・MTBはついに売り切れになるかもしれない。新しいバイクは手に入らないので、数年前のものでも完璧に良いことに人々が気付くかもしれないからだ。しかもほとんど半額となれば!(規格が最新のものかどうかは注意しよう)
日本への影響は?
上の紹介では端折りましたが、ブレグジット完了後のUKとEU間の貿易ルールは大枠が策定されたものの、その実際の運用でまだ明確になっていないものが多く、非常に混乱した状況です。
その影響で、昨年12月の話ですが、UKの港に荷物を下ろすはずの貨物船が現場に滞留してしまったり、引き返して他の国に荷物を置いて去ってしまうといった事案もありました。
UKのブランドがEU諸国のカスタマーに対してモノを売る、あるいはUKのカスタマーがEU諸国からモノを買う場合に混乱と遅延が発生しており、一見すると日本のサイクリストには直接的な影響はないようにも見えます。
しかし英国国内での原材料調達費や物流コストの増加も発生してもいるので、いずれ日本国内で販売されているUKブランド製品にも皺寄せが生じて、納期が遅れたり、価格が上昇するのは避けられないような気がしています。