アメリカ・テキサス州ヒューストンでやや情報量の多い不思議な事件が発生しました。7月4日・独立記念日の午後、地元でサイクリングをしていた2人の男女のうち、男性が自動車のドライバーに向けて銃を発砲。しかし逮捕されたのはそのサイクリストではなく、クルマのドライバーのほうでした。何故でしょうか?
自転車は車道を走るな
事件の概要を下の動画の後にまとめます。ヒューストンのKHOU-TVが報じています。
- ある夫婦が日曜、ジェファースン・ストリートで自転車に乗っていたが、その時ダッジ・チャージャーを運転する男が2人を轢こうとした
- 2人によると運転手の男は、彼らが車道を自転車で走っていることに怒っていた
- 男性が自転車を降りると、運転手は「自転車は車道を走っていてはいけないだろう」と罵ってきた
- 男性は警察に電話したが、チャージャーを運転する男性は一度現場から離れた後、すぐに戻ってきて芝生を乗り越え男性の妻にクルマで追突した
- この時、夫は運転手に向けて3回銃を発砲した
- 自転車がクルマの下敷きになっていて、運転手がひっくり返っているのが見えた。本能的に撃たなければならないと思った、と男性は語っている
- 運転手は26歳のホセ・アンヘル・エルナンデスで、致命的武器(=deadly weapon, 凶器)による加重暴行の罪で起訴された
- 警察はその「武器」は「クルマ」であると発表している
- 運転手は顔の左側と肩を負傷し入院したが、水曜日に出廷することとなった
- 被害にあった2人は毎日のように自転車に乗っているが、今後はそうはならないだろうと語る
- 2人によるその地域でのサイクリングは、ドライバーがサイクリストに注意を払わないため危険だという
- 人々が辛抱強くなり、サイクリストと道路を分かち合うことを学んでほしいと夫婦は言う
- 男性はすぐに自転車に乗りたいと考えているが、妻はいつ自転車に乗る気持ちになるかわからない
海外の反応
上で紹介したYouTube動画へのコメントからいくつか抜粋します。
- ドライバーは戻ってきて女性を轢いたんだろう、殺人未遂じゃないか
- ドライバーはまさか相手が対等な敵だとは思わなかっただろうな
- テキサスではサイクリストも銃を持っているのか!
- 人々はもう辛抱強さや同情心を持っていない
- サイクリストが武装していたのは良かったと思う。今日では、人は相当注意深くないといけないし、必要な時に自己防衛するために銃の扱いを覚えないといけない
銃も凶器、クルマも凶器
この事件で興味深かったのは「クルマ」が凶器であり、それを使用して暴行を加えたとして逮捕されたのがドライバー、というところです。少なくとも報道の事実だけから考えると、警察の判断は適切なものだったのではないかという気が個人的にはします。
テキサス州ではこれまでもライセンスがあれば一般人が銃を所持することが認められていますが、9月1日からは21歳以上であれば免許不要で銃を所持・携帯することが可能になる法案が同州のアボット知事によって署名されたばかりです。
アメリカでは車道を走るサイクリストを敵視するクルマのドライバーが意図的にサイクリストを攻撃する事件がたびたび発生していますが、攻撃が可能になるのは「自転車よりクルマのほうが強い」という考えがベースにあると思います。しかし、良し悪しは別として、自転車に乗ったテキサスの一般人が今後銃を携帯する機会が増えてくると、こうした事件は少なくなってくるのかもしれません。
ちなみに今回の事件、犯人のドライバーは名前からヒスパニック系の人であることがわかりますが、被害にあった2人も動画を見るとヒスパニック系の方に見えるので人種問題的な背景はなさそうです。
アメリカでは銃犯罪も増加傾向にあり、ニューヨークでは7月の3連休中、銃による死者数が新型コロナウィルスによる死者数を上回っています。ひょっとしてコロナによるストレスで人々が暴力的になってきていたりするのでしょうか。
日本でも、もともと狭い車道にさらに狭い自転車レーンが設置されてきていますが、こういう事故が起こらないことを希望します。