FOCUSのグラベルバイク「ATLAS」のカーボンフォークにフロントラックを付けて走っていたところ、ボルトの一部が破断してラックが外れてしまって大怪我をした。という投稿を海外掲示板で見かけました。「カーボンフォークにフロントラックを付けるのはまずいのでは」とピンときた方も多いと思いますが、これは少し紆余曲折のあった事例のようです。
出典 PSA: Focus Atlas Gravel bikes
以下、スレ主さんによる投稿の一部抄訳です。アイルランド在住の方のようです。
私がFocus Atlas 6.7グラベルバイクを買った主な理由は、フレームにもフォークにもとても多くのアタッチメントがあって、フォークにもフロントキャリアを付けられると思ったからです。私は2023年9月末、フィンランドでのバイクパッキング旅行中に非常に深刻な事故にあい、右の鎖骨の骨折、肩甲骨の挫傷その他の怪我で、フィンランドの病院に入院しました。私が使っていたのは7Roadsのフロントラックで、Focus Bikesのソーシャルメディアの投稿や動画で多く見られていたものです。グラベルでダウンヒル中、フロントラックを取り付けていたフロントフォークにビルトインされているナットが破断し、ラックが前方に落ちてホイールをロックし、私はハンドルバーの向こうに投げ出されました。Focus Atlasのオーナーと、これから買うかもしれない方に向けて注意喚起するために投稿します…
話が少しややこしいのは、Focus自体は元々、このカーボンフォークでフロントラックを使ってはいけないと言っていたらしいことです。ブレードの3ボルトはAnything Cage系やオルトリーブのフォークパックなどのためにあり、フォーク上部のアイレットはライト用とのこと。
しかしSNSで一部の「インフルエンサー」が、Focus Atlas 6.7にフロントラックを付けた写真を多く投稿し、Focusも一時期はそれを再紹介していた時期があったように思われます(現在は検索してもそういう写真は出てきません)。上に掲載しているFocusのインスタ写真は、何らかの事故があった後、5月頃に注意喚起として投稿されたもののようです。スレ主さんはこのFocusの投稿を知らなかったようです。
一般的に、フロントラックやローライダーラックの取り付けが公式に認められているカーボンフォークは非常に少ないです(私もそういう製品が欲しいと思ってかなり探した経験があります)。
カーボンは狭い範囲への応力集中に弱いため、許容値を超えた負荷がかかると鉄系の素材よりも一気に、破局的に割れてしまいます(スレ主さんの場合、壊れたのがフォーク本体なのかナットだけだったのかは不明ですけれども)。しかもフロントラックの場合、ロッドが長くなり荷物の位置も離れ、テコの原理が効いてしまいます。3アイレットのエニーケージはフォークそのものに近いところで3点に分散して支える構造で、耐荷重も片側3kgくらいと控えめなものが多いですね。
先日下の記事で紹介したWilier Adlarはこの意味で珍しいバイクで、3アイレットのカーボンフォークなのに純正のローライダーラックオプションがあります。しかしこれはフォーク両側に少し飛び出したスルーアクスルに荷重させており、フォーク側のアイレットは補助的な役割にとどめることで実現しているようです。
FocusがSNSで「フロントラック付きのAtlas 6.7」の写真を積極的に紹介していたかどうかは私は確認できなかったのですが、もし過去にそれを見てなんとなく「フロントラックもいける」と思われた方は、念のためご注意ください。フロントラックやローライダーラックを使いたい場合は、基本的には鉄系のフォークのバイクになるでしょう。