Transcontinental Race 2022(TCRNo8)に参加した選手たちがレース中に遭遇した様々なトラブルや、一風変わったエピソードなどをCyclingTipsが記事で紹介しています。中には危うく優勝が取り消しになりかねない「事件」など、面白い話がありました。
▼ 左は優勝者のクリストフ・シュトラッサー、右は6位のウルリッヒ・バルトルメス。道中2人は一緒にコーラを飲んだのですが、それが後に大きい問題に…!
出典 THE CAN OF COKE THAT ALMOST RUINED THE TRANSCONTINENTAL RACE 2022
参加者が経験した様々なトラブル
以下、記事の一部の抄訳です。
- ベルギーからブルガリアまで、ガヴィア峠(イタリア)のような有名な登りを含む4000kmのレースは9日間14時間で走った選手が勝利を収めたが、その勝利は1ユーロのコカ・コーラのせいであやうく台無しになるところだった
- このレースは7月24日の日曜日、ツール・ド・フランス・オムの閉幕から数時間後の夜10時にフランドル地方のGeraardsbergen(ヘラールツベルヘン)をスタート、241人のライダーが出発した
- 24時間とRAAM(Race Across America)の記録を持つ優勝者のChristoph Strasser(クリストフ・シュトラッサー)は、SRAMのバッテリーが壊れてしまったため、路傍に座ってYouTube動画で修理方法を学んだ
- Ulrich Bartholmoes(ウルリッヒ・バルトルメス)はCP2にたどり着くまでに、誰かに古い錆びついたナイフで刺されているかのような痛みを膝に感じていた
- 医師でもあるFiona Kolbinger(フィオナ・コルビンガー)はチェコのスケートパークで一夜を過ごしたが、目を覚ますとトラッカーと財布が盗まれていることに気づいた。幸い地元警察が財布を発見し、レース主催者も彼女の走行ルートを確認できたため、レースに復帰することができた
- シュトラッサーはイタリアを通過中、日中に野原でパワーナップ(短い仮眠)を取った。起きてみると芝に横倒しにしていたバイクのタイヤがパンクしていた。地元のショップで新品のチューブを買うのに40分かかった。店主は商売よりも、店に入ってくる客との会話に興味があるようだった
- 3500kmを走った後、シュトラッサーとバルトルメスはトランサルピナ峠に挑戦する前、ルーマニアのNovaci(ノバチ)という町のショップで初めてお互いの姿を見た。2人は既に必要なものを購入済み・補給済みであったが、これまでのお互いの健闘を祝福しようと考えた
- 2人は一緒にコーラを飲もうと考えた。この時バルトルメスの銀行カードが使えなかったため、シュトラッサーが彼のコーラのために1ユーロを与えた(このレースの最も重要なルールは「自助」であり、第三者や他のレーサーからの支援を受けてはいけないことになっている。そのためこれが後に問題になった)
- 6位でフィニッシュしたバルトルメスは45kmのグラベルセクションでリムにダメージを負ってしまい、歩かざるをえなかった。ホイル・ブランケットをレッグウォーマー代わりにして温めなければならなかったし、道を横切る動物をやりすごしたり、フェリーをキャンセルせざるをえなくなる等のトラブルにも見舞われた
- シュトラッサーとバルトルメスがルーマニアのブルガスにゴールすると、例のコーラの件について主催者側で違反かどうかの議論が行われた
- シュトラッサーは「私はウルリッヒの問題解決を助けたのではない。ただスポーツマンシップを持ちたかっただけだ。悪いことをしようという意図はなかったし、これがルール違反に近い行為であることにも気付いていなかったし、レースオフィシャルにも早い段階で知らせていなかった」と述べた
- 最終的には、シュトラッサーの勝利は確定した。「これは本質的には仲間のライダーによる外部からの援助となり、それ故にルール2に反するものだが、それまでのレースでのお互いの健闘を讃えたいという2人のライダー間での人間的な瞬間でもあった」とレース主催者は説明した
- 判断ミスであり、ルールへの注意力の欠如ではあるが、レース全体への影響はほとんどないか、まったくないタイプの出来事だった。この事件が起きた時すぐに報告があったら、もっと簡単かつ迅速に解決できていただろう
- バルトルメスが証拠として提示したクレジットカード明細からは、彼が当時十分な補給品を購入していたことがわかり、1ユーロのドリンクが必要品ではなかったことがわかった
- Fiona Kolbingerは女性では最速でフィニッシュし、全体でも8位。10日間13時間44分で走破した。15日目に開催される完走者パーティーには参加せず、その日は救急治療室で既に仕事していたという
- Daniele Fonelliは参加者中唯一の固定ギアのバイクでブルガリアにゴールした。「もともとこういう自転車からはじめた。ギアが1枚だと変速がある自転車より難しい。私は挑戦するのが好きだ」
- Michel Fontはゴールで規定されたルートの一部を走らず、それと並行する道を走っていたために記録が認められなかった。このベネズエラ人は90km余分に往復しなければブルベカードにスタンプは押せないと言われた。もはや1kmも走る力が残されていなかったFont氏は、この旅は既に自分のものとなったし、なされたことはなされたのだから、スタンプが1個もらえるかどうかはほとんどどうでも良くなった」と語った
クリストフ・シュトラッサー氏は下の記事によると予備のチューブを2本持っていたはずですが、パンクした時には既に使い果たしてしまっていたのか、それとも近くにショップがあったので予備には手を出さず調達しておこうと考えたのでしょうか。また直射日光のせいでタイヤがパンクしたのだろうか等、詳細が気になりますね。
下の記事で装備品を紹介したウルリッヒ・バルトルメス氏は、Lightweightのホイールがグラベルでトラブルを起こしたとインスタに投稿していたのですが当時は詳細がわかりませんでした。リムが破損したようですが、その後どうやって走行を続けられたのかも気になりますね。出走前に「Lightweightのホイールでもグラベルを走れることを証明したい」という主旨のことを語っていたので、真相は明らかにしにくいのでしょうか(同社にスポンサードされています)。
いずれにしても「コカ・コーラをおごった」件で2人が失格にならなかったのは良かったですね。既に十分に食べて飲んで必要な買い物も済ませていたので、そのコーラは「競技継続に必要なもの」とはみなされなかったからのようですが、クレジットカード明細がなかったらひょっとしたら失格処分もあったのではと思わされます。
チェコでの盗難事件も怖いですね。中欧・東欧での野宿など、もはやサバゲーの要素が入っているのではと思ってしまいます。