バイクフィッティングは95%のサイクリストには必要ない、というオピニオン投稿を海外掲示板(Reddit)で見かけました。その掲示版では日頃から「バイクフィッティングはいいぞ、お金をかける価値はあるからやったほうがいい、やってもらったら完全に別世界になった」という「フィッティング推し」投稿が多いので、スレ主さんは違和感を持ったようです。
そのスレッドの前半では「世の中のサイクリストの95%は自転車フォーラムや掲示板なんかにやってこない、ここで質問したり発言したりしているのは、君の言うところの5%じゃないか」という「統計上の偏り」についての議論が展開されていました。その部分は、読者の方にはあまりおもしろい話ではないだろうと思ったので、割愛します。
バイクフィッティング自体について、個人的に「なるほど」と思ったコメントを4つほど、抄訳でピックアップしてみます。
- もし誰かが、週に2時間以下乗るような立ち姿勢のスーパーリラックス・バイクでもフィッティングが必要だ、と擁護するのなら、驚かされます。そういうバイクでの「フィッティング」は、ほとんど間違いようがありません。アグレッシブなロードバイクやTTバイクなら、話は全く別。そういう自転車をセットアップした経験・ノウハウがまったくないなら、たぶん助けてもらったほうが良い。雑な推測ですが、自転車に5000ドルかけられる人ならバイクフィッターにも少しお金を使う余裕はあるでしょう。私自身はハイブリッドなアプローチで、長いウェイトリストのあるフィッターに見てもらうのと同時に、自分でもポジションを研究します。いろんなパターンを試すのにその人のリグを使わせてもらえます。私の時間は有限ですし、私には大金の価値がありますから…(59いいね)
- 10人のバイクフィッターにポジションを相談したら、10の異なるポジションを提案されて終わるんだけれどもね(64いいね)
- (上の人に)それはその通りではあるんだけれど、だからバイクフィッティングは有効でない、ということにはならないですよ。というのも、自分に適したポジションは、1つ以上持てるからです。これはスレ主さんの意見と関連があり、バイクフィッティングが大部分の人にとって必要ないとしたら、たぶん自分で十分に良いポジションを見つけられるからです。私が思うに、フィッティングは次の2つの場合に意味があります。
- フィッティングに不安がある場合(乗っていて快適でなかったり、いきなり長時間乗ることを決意した時とか)
- 高額な新車を買おうとしていて、どれが自分にぴったりフィットするのかを知りたい時。これは特にインテグレーテッド・ハンドルやインターナル・ルーティングの場合により大事になってきます
(33いいね)
- バイクフィッティングはせいぜい疑似科学である、というところはたぶん同意です。10人の異なるフィッターを訪れたら、たぶん10の異なる結果が得られるでしょうし、そういう結果はまじめにDIYして得られたものと変わらないかもしれません。一方で、本当に多くの新人サイクリストが、加えて新人でもない人たちも、完全にデタラメなフィットになっているのを目にします。何もかもセッティングするのは複雑なことで、圧倒されるかもしれませんし、誰もがDIY(自分でやること)や自己査定が得意なわけではありません。少なくともはじまりのベースラインとしてはID Matchのような自動化されたシステム、サイクリストが空間中の全てのポイントやタッチポイントを理解できるようなシステムがもっとあればと思います。バイクや装備に数千ドルもかけながら、快適でなかったり多少とも最適化されていなかったとしたら、おかしな話です。それに加えて、怪我に適応する必要がある人、障害がある人のことを考えないといけません…(31いいね)
これらのコメントを少し消化してみると、次のようなことかなと思いました(私個人が上から理解したものです)。
- いわゆるママチャリのようなアップライトポジションの自転車では、フィッティングはいらないだろう。快適に乗れる正解の範囲は広く、居心地のよいポジションは自分で探せるだろう。ライド時間が短くても不快感は現れにくい
- 攻めたポジションのロードバイクやTTバイクであれば、「正解」の範囲は自ずと狭くなってくるし、調整するパーツも多岐に及ぶので、詳しくないのなら専門家に見てもらう価値はある
- バイクフィッターごとに別々のポジションを提案されることになるだろう。しかしそれが意味しているのは、正解は1つではないということだ
- たまに自転車初心者でもない人が、どう見てもおかしいポジションで乗っている時がある。だから初期に、最低限客観的な指標のあるシステムを利用して、おおまかなフィッティングを受けるのは良い考えかと思う
- ハンドルステム一体型・油圧ディスクブレーキのインターナルルーティングのバイクを買う時には、やっておいたほうがコスト(時間とお金)の面で後々楽だろう
さて当ブログ読者の皆さんはバイクフィッティングを受けたことはあるのだろうか、と思い立ち、昨日Twitterでアンケートを実施しました。ご参加・ご意見誠にありがとうございます。
スポーツサイクリング(特にロードバイク等の持久系)を週に2時間以上は行っている方にご質問。バイクフィッティングを受けたことはありますか? 必要性の有無についてのご意見・受けてよかった経験談などもよろしければ是非
— CBN (@cbnanashi) February 19, 2024
フィッティングも様々あるかと思いますが、ざっくり「受けたことがある」と回答された方はおおむね4割弱。「受けたことはない」方は6割強という結果になりました。個人的に「おっ、結構多いかも」と思ったのですが、私がロードバイクに乗りはじめた頃に比べて、量販店でも新車購入時に詳細なフィッティングの購入も提案されるのが普通になったからだろうか、とも思いました。
アンケートにお寄せいただいたコメントには、成長のステージに応じて正解は変わってくる、日によっても正解は違ってくる、唯一絶対の正解はないからあくまで参考値として捉える、その意味ではフィッティングは有益とは言える。という意見が多かったように見えました。先に紹介した海外サイクリストの意見とおおむね同じ方向だったと思います。
またフィッティングを受けたとしても1回受けたらそれでOK、ということには決してならないので、ポジションを改善する必要性を感じたら、自分なりに詰めていく努力をし、もし迷路に入ってしまったらプロのフィッターに相談するのが良い、という感じかなと思いました。
また、自分で自分のポジションの良し悪しを評価するのが苦手だ、という人もたくさんいるでしょうし、独力で何ヶ月も試行錯誤してみたけれど、どうにも身体が辛い・楽しくないからプロにお願いしたい。怪我がどうやってもなおらず、自分では気付いていないことが原因になっているからかもしれないから診てもらう。というのも十分にありですね。
身体の寸法が完全に一致する2人の人間がいたとしても、筋肉や関節の柔軟性、体幹の強さなどが違ってきたら、同じポジションにはならないと思います。客観的な指標なら、簡易なフィッティングで得られる。個々人の特性・能力を加味した上での正解は、自分で得られることもあるし、自己観察とプロの助言との合せ技で効率的に得られることもある、という感じでしょうか。