CyclingTipsにCanyonのチーフ・テクノロジー・オフィサー、Michael Kaiser氏との独占インタビューが掲載されています。既報のようにCanyonはAeroad CF SLXとAeroad CFRのハンドルバーを交換することにしましたが、そのような決定を下した理由と、今後の具体的な対応が語られています。
出典 CT EXCLUSIVE: CANYON OPENS UP ABOUT AEROAD HANDLEBAR WOES, DETAILS PLAN MOVING FORWARD
非常に長い記事なので、本記事では私が読んで理解したことを要約してみます。
ハンドルは最悪な条件が重なってもあのように折れてはいけない
- (ファンデルプールのハンドル破損事故の後に)これがもう起こらないと言えるだろうか? と考えた時、私達はこれがもう起こらないと100%断言はできない、と考えました。そのため素早く、30時間以内に決断を下し、何が問題なのか明らかになるまでお客様とプロチームライダーにバイクに乗るのをやめるようお願いしました
- ファンデルプールのようなタイプのハンドル破損は、シフターをハンドルバーにオーバートルクで締め付け、かつ道路の穴や、クラッシュ後の初期ダメージで考えられるような大きい負荷をドロップバーエンドに同時に加えることで、ラボで再現することができました
- 今回のケースでは、ファンデルプールの(ル・サミン以前の)クラッシュそれ自体や(※ファンデルプールはル・サミン前にハンドルをクルマにぶつける事故を起こしている)、シフタークランプの締めすぎ、ベルギーのパヴェで並々ならぬパワフルなライダーがレース速度で走ること、それら単体ではハンドルバーを破損させるまでには至らないものの、それら全ての条件が重なってしまうと、こういうことが起こることがわかった(累積疲労)
- ファンデルプールのハンドルは、流通している1500台のAeroad(コンシューマーとプロチームが使用するモデルの合計)の中で、破損した唯一のハンドルである
- ハンドルバーでは、私達は(重量の)限界に迫ろうとしました。しかしハンドルバーは重量を削減する領域でないことを理解するべきでした。使い方に問題があったとしても、ハンドルは機能しなければならないからです
- 解決策としては、ハンドルバーの薄い部分をより厚く(そして少しだけ重く)して、より多くのダメージを吸収できるようにし、万一壊れてしまう時でもより危険でない壊れ方をするように改良する
- シフターが位置しているドロップバーエリアの厚みには十分な強度がなかった
- 既に厚みと強度のあるハンドルバーは開発してあり、テストも通過している
- Canyon独自の非円形クロスセクション用マルチピースクランプ(Shimano/SRAMレバー対応)は、社内テストで問題は発見されておらず、そのクランプは何千台ものGrail CFグラベルバイクで恐らく何の問題もなく使用されている
- しかし新型のハンドルはクロスセクションも従来の円形に戻るので、CaynonはShimanoとSRAMが提供する純正クランプを採用することになる
- 長さ調整式のハンドルバーには設計上の問題は全くない
- Canyonの今回のハンドルバー破損に関するコミュニケーションは急ぎすぎていたため、明確さに欠けていたことを同社は認めている
- 全てのバイクがドイツ・コブレンツにあるCanyon本部に返送されなければならない、という印象を与えてしまったが、実際はそうではない
- 現在Canyonは3つの選択肢を考えている。まず法的な問題は別として、カスタマーが送付されたハンドルを自分で交換する。またはVelofixサービスを利用する(この場合、利用料は勿論Canyonが負担する)。または地元のディーラーで作業してもらう(これも費用はCanyonが負担)
- Canyonがハンドルバーを用意できるようになるのは7月で、タイムラインをそれ以上早くすることはできない。気候の良い季節に乗れない代償として、Aeroad CF SLXオーナーには$1,200(米ドル)、Aeroad CFRオーナーにはUS$1,500相当の経済的補償を予定している(米国以外では現地での相当する金額)
- しかし補償を受け取れるのはバイクの修理が完了してからである。その理由はCanyonのバランスシートへの打撃を遅らせることが目的ではなく、第一世代のハンドルバーが市場に残り続けないようにするためである
- 1400〜1500台のバイクを修理し、キャッシュバックするとなると、費用は2百万ドル(約2億円超)に上る
- シートポストについては、交換対応は考えていないが、水や埃などの侵入を防ぐようなシールを考えている
- シートポストの摩耗は雨の多い国で多く発生している。フレームとシートポストの間に異物が入り込むことによって摩耗が発生する可能性がある。シールは既に開発済みで現在テスト中である。次のステップは製品化で、遅くとも今年の秋の提供を計画している
結局のところ、Canyonによるテストでは単にシフターをオーバートルクで締め付けたり、単にクラッシュさせてみたり、単に極端に大きい負荷をかけてみたりしても、それ単体ではハンドルは折れなかったようですが、それらの悪条件を重ねたところ(恐らくファンデルプールのハンドルのように)破損した、と認めています。
カーボンの累積疲労の結果起きたケースと考えているようですが、Canyonはファンデルプールのハンドルの「壊れ方」を問題視しているようで、どんなことがあってもああいう折れ方をするのはまずいだろう、という結論に至ったようです。
懸念されていたハンドルの交換方法ですが、ドイツ本国に送り返す必要はなくなりそうなので、このあたりは当該のAeroadユーザーにとっては朗報ですね。また日本円では少なくとも12万円または15万円の補償も受けられそうです。
なお余談として出ているシートポストの話ですが、ダイクレト・トゥ・コンシューマー販売の強みを活かして、シートポストの摩耗が雨の多い国で発生しているというデータを取れたというのはなかなか面白いと思いました。ちなみにこの記事で紹介したCaynonによる「しなるシートポスト」の特許は、将来的にエンデュランス系モデルで採用する計画はあるが、Aeroadのシートポストには適用されないとも語られています。