サイクリング産業におけるロゴの抽象化

コロンバスというメーカーがあります。スチールフレームの素材となる金属パイプや、近年ではカーボンフレーム、カーボンフォークも出している創業1919年のイタリアの老舗です。イタリア語の社名はColumbus Tubi、ミラノ近郊に本社があり、親会社のGruppo SPAにはチネリも属しています。

クロモリフレームの素材としては日本ならタンゲ、カイセイ、アメリカならレイノルズ等の名前が挙がりますが欧州でいちばん有名なのがコロンバス社でしょう。

コロンバスのハトのロゴ

そのコロンバスの企業ロゴはハトのマーク。現在では黒い縁取りがされた赤い楕円形の中に白いハトが飛んでいるモチーフ。このハトにどんな意味があるのか、調べてみたのですがこれといった起源は見つけられず。ただハトは西欧では一般的に平和のシンボルではあります。

ところで先日訪れた「2019ハンドメイドバイシクル展」のコロンバスブースで、同社のとても古いポスターが展示されていてじっと眺めてしまいました。

コロンバスのポスター

いい雰囲気ですねぇ!

TUBI RINFORZATI A SPESSORE CONICO
IN ACCIAIO SPECIALE AD ALTA RESISTENZA

テーパード形状の強化チューブ、高強度特殊スチール!

というキャッチコピーが添えられています。いつの時代のポスターかわかりませんが、戦前のヨーロッパを思わせます。そんなに古くはないかな?

しかし眺めていて気づいてしまいました。ハト…あのハトが…

コロンバスの鳩ロゴ

リアル鳩www 脚生えてるwwww しかも顔カワイイwwwwww

コロンバスの鳩ロゴ

いや〜、ロゴに歴史ありですねぇ。現在のコロンバスの鳩ロゴには脚もなく、くちばしもありません。羽毛のディテールなんかも完全になくなってます。長い年月をかけて次第に抽象されてきた結果現在のかわいらしいシンプルなハトマークに至ったのですね。

抽象化するロゴの世界

こういうロゴの抽象化は様々なメーカーに見られます。下はTREKのかなり古いロゴと現在のロゴ。ちょうどランス・アームストロングがTREKに乗ってグランツールで活躍していた時代はTREKの文字にはもっと凹凸がありました。4本線の模様(「T」をかたどっていた?)は上下逆になったんですね。

日本が誇る世界のサイクルウェア、パールイズミのロゴもだいぶ前に新型に変わりました。ちょうどCBNの「パールイズミ 401 コールドブラック アームカバー」レビューにLZPT2IBさんによるロゴの違いがわかる画像があったので掲載します。上が現在のロゴ、下が旧ロゴです。

写真:LZPT2IBさんの「パールイズミ 401 コールドブラック アームカバー」レビューより

コルナゴもピナレロもロゴは昔に比べてだいぶ変わりました。スペシャライズドのロゴも少しだけ洗練されモダンな感じになりました。

そうそう、スペシャライズドのあの赤い「S」文字ロゴのほうは書道を思わせる筆文字ですが、あの部分については現在でも筆書きの味わいを残している感じです。あれもいつか変わってしまうのだろうか…

抽象化が示唆するもの

ところでこうした企業ロゴの抽象化はサイクリング産業に限らず、様々な業界で世界的に発生しているものだと思います。流行、と言ってしまえばそれで終わりですが、たぶんグラフィックデザインをされている方はなぜ企業ロゴがこうした抽象化・洗練化の過程をたどっているのかお詳しいのではないでしょうか。気になるところです。

個人的には「非常に属人的であった個人商店」が規模を拡大していく過程で様々な「標準化」を推し進めていってエンタープライズ化したことと何か関係があるのではないか、と推測しています。ちょっと社会学が入ってきそうな気がします。

コロンバスの現在のシンプルなラインの鳩ロゴも可愛いので好きなのですが、初期の「リアル鳩状態」もまた不思議な人間味(ハト味?)があり、これはこれで悪くないなぁ、と思います。

時代が一周りして、メーカー各社が旧ロゴに回帰する時代もまたやってくるのかもしれません。

洗練と抽象化を拒否するあの会社の件

そうだ、このメーカーは永遠に個人商店のテイストのまま存続するような気がしますw サーリー。

もう鉛筆で殴り書きしたような、洗練を拒否しているかのようなロゴです。これがきれいなロゴになっちゃったりしたらそれはもうサーリーではなくなるような気もします。

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