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ロードプラスという提案について調べてみた

ロードプラス(Road Plus, Road+)と呼ばれるものがあります。グラベルロードの世界で2016年に登場したものですが、果たしてこれは何なのか。一種の「規格」として紹介されることもあるようですが、規格・標準というよりは「提案」(またはアイデア)という言葉のほうが近いような気がします。


ロードプラスという提案

タイヤやホイールやフレームに「ロードプラスという標準規格」があるわけではなく、「ロードプラスという提案」に対応した製品群がある、と考えたほうがわかりやすいように思います。

最初にこのアイデアを提唱・提案したのがタイヤメーカーのWTBで、それは「650b x 47サイズのタイヤをドロップハンドルの自転車で使ってみよう」というものだったようです。

650bのタイヤということはホイールも650b、あるいはMTBで使われる27.5インチのホイールが必要になります(外径はどちらも同じ)。そして幅47mmのタイヤ(実際には空気圧次第でそれより細くなったり太くなったりする)を入れてもフォーク・シートステー・チェーンステーに干渉しないフレームが必要です。

そのため普通のロードバイク、ディスクロードなどでは「ロードプラス」を試すことはほとんどの場合できません。

なお「650b x 47」はWTBが最初に提案したサイズですが、「ロードプラス」は規格ではないので必ずしもその太さである必要はなく、欧米ではタイヤ幅は605b x 42〜50程度のものも「ロードプラス的なもの」として認知されているようです。

ロードプラスがもたらすメリット

さてこの「ロードプラス」はなぜ提案されたのか。「650b x 47」のホイール外径は「700c x 30」と大体同じになります。700c x 30のホイールが入るグラベルロード、シクロクロス、ツーリング車に650b x 47を入れると、700c x 30で運用している時のハンドリングに近い感覚で別のメリットが得られる、と言われています。

どんなメリットか。

まず圧倒的なエアボリュームによる乗り心地の良さ。同じホイール外径を保ったままリムが小さくなるぶん、タイヤの高さが出ます。エアボリュームが増えます。しかも低圧で運用できます。快適。さらに接地面が増えるので荒れた路面でのトラクションが向上する。ということです。

このことからわかるように、ロードプラスという提案はロードレースやクリテリウムやタイムトライアルといった競技者向けのものではなく、いわゆるグラベルなどの荒れた路面をより快適に走りたい人やツーリング向けです(もちろん段差の多い街中を快適に走るコミューターで使うのもありでしょう)。

ロードプラスの定番タイヤ

ロードプラスのタイヤとして流通しているものはWTBの他にCompass, Panaracer, Maxxis, Teravailといったメーカーからも出ていますが、本家とも言えるWTBによる有名なロードプラス・タイヤには次の3つのものがあり、調べるとどれも海外での評価は高いです。

WTB Road Plus Tyres

©WTB

(※価格情報は記事執筆時のものです)

この3つのタイヤは見てすぐにわかる特徴があります。Horizonはスリック。舗装路での使用もかなり意識したモデル。トレッド面に大きい突起はありません。

Bywayはトレッド面は平坦ですがサイドにノブがあり、荒地でより大きいトラクションを得られるようになっているようです。

Senderoは大きいノブでほとんどMTBタイヤのようで荒地メインのタイヤ、という感じです。いずれも使用されているケーシングやコンパウンドは一緒でトレッドパターンだけ違うようです。

アメ色のスキンサイドがカッコいいです。ブラックオンリーが好きだ、という人もいるかもしれませんが個人的にはこれ大好き。

ロードプラスに対応したフレーム・完成車

ロードプラスに対応したフレームにはどんなものがあるでしょうか。

WTBは自社のWTB 650b x 47タイヤと互換性があるフレームの一覧を同社のサイトにアップしているのですが、長いリストなので日本でもよく知られているメーカーのモデルだけいくつか抽出してみます。

  • 3T Exploro LTD &Team
  • Cannondale CAAD X
  • Jamis Renegade (アルミ・スチールモデルに限る)
  • Kona Sutra
  • Masi Speciale Randonneur
  • Soma Grand Randonneur
  • Specialized Sequoia
  • Surly Straggler/Straggler 650b

これらのフレームならWTBのロードプラス、650b x 47タイヤが干渉せずに使えますよ、という話です。最近はロードプラスサイズのタイヤが使えるフレームも完成車もどんどん増えてきていて、WTBのロードタイヤ付きの完成車も目立つようになりました。

ただ「これはロードプラスのバイクです!」という感じの宣伝・マーケティングはあまり大々的に行われている印象はない感じです。上のMarin Nicasioも「700C x 30mm-40mmまたは650B x 47mmが入る」という説明はありますが「ロードプラス」と謳っているわけではありません。

ちなみにツーリング車やシクロクロスバイクではもともとロードプラスのタイヤが問題なく入るものが多いようです。

グラベルロードでは700cも楽しいけれど650bホイールでロードプラスタイヤを使って乗ったほうが圧倒的に快適で楽しかった、といった話をたびたびSNSで寄せていただきました。私も両方使っていますが、650bはのんびりライドを楽しむサイズ、700cは軽快で速さを楽しむサイズ、という印象を持っています。

MTBの27.5ホイールとグラベルロード用650bホイール

ところで個人的に気になっているのが、グラベルロード用に開発されている650bホイールと、MTBのクロスカントリー用27.5インチホイールとはどちらが楽しいんだろうか、という問題です。

例えばMavicは2018年、Allroad Elite Road+ というグラベル・ツーリング・アドベンチャー対応の650bホイールを出しました。

それを27.5インチのCrossmax Eliteと重量・リム内径・推奨タイヤサイズを比べてみます。

モデル 重量 リム内径 推奨タイヤサイズ
Mavic Allroad Elite Road+ Disc 1740g 25 mm 28 – 62 mm (1.1″ – 2.5″)
Mavic Crossmax Elite 1635g 22 mm 28 – 62 mm (1.1″ – 2.5″)

どちらも推奨タイヤサイズは同じです。リム内径はAllroad Elite Road+のほうが広いです。これが重量増につながっているのだと思いますが、Crossmax Eliteのほうが100gほど軽量なんですね。しかも実勢価格ではこちらのほうが1.2万円ほど安い。なおいずれもUST(要チューブレステープ)。

となるとCrossmax Eliteのほうがいいんじゃないか、とふと思ったのですが、これは人によって違ってくると思います。Allroad Elite Road+のほうがきっと耐久性が高い。リアキャリアの両サイドにパニアバッグを積んだような乗り方、そして長距離走を想定しているのはこちらのほう。

Crossmax Eliteはやはりクロスカントリー用のホイールなので、両者のうちではこちらのほうが軽快な乗り味ではないかと思うのですが、耐久性重視の方はMavicに限らずロード用650bホイールのほうがいいのかもしれません。あとMTB用ホイールは高圧での運用を想定していないのも大きい違いでしょうか(高圧で使う人はいないだろうけど)。

私はグラベルロードで重い荷物を積む予定もなく、自分にはクロスマックスのほうが合っているかな、などと考えています(旧モデルをむかしMTBで愛用していたせいもあり、また使ってみたくなっています)。

…と、ここまで書いて気付いたのですが、Mavic Crossmaxをはじめとするクロスカントリー用MTBホイールのフロントシャフトは大部分が15mmスルーアクスル(その多くがアダプターで9mmクイックリリースも使用可)だということ。フォークエンド12mmスルーアクスルの場合、普通には使えません!

650b x 47のロードプラスタイヤは試してみるつもりなので、いずれ記事で700cのFulcrum Racing 3 DBとの比較使用感などを紹介する予定です。

(2021年6月11日追記)MTBホイールとグラベルホイールの違いについて、専門家による見解を下の記事で紹介してあります。こちらも是非お読みいただければ幸いです。

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著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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