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よみもの製品レビュー

ヘリノックスのグラウンドチェア:内と外の境界を溶かしてしまう不思議な折りたたみ椅子について

5.0

あなたはいま、リビングにあるいつもの快適なソファに深々と身を沈ませ大画面テレビを眺めているとします。映されている自然の風景は、人工的に記録・再現されたものであり、湿り気のある風も顔にあたらないし、潮風の匂いもしません。それは虚構であり、そこに実際の自然はありません。ある程度の没入感はあっても、それが現実でないことを心の底では承知しています。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

しかし、ある椅子を連れて出かけて屋外で座ってみると、意識はリビングのソファに座っている時の状態なのに、周囲の風景は「意識という舞台上に再現された外」ではなく「本当の外」に置き換わります(だって、本当に外にいるのだから)。私はいま、どこにいるのだろう。「内」なのか、「外」なのか…

そんな困惑的な体験をもたらしてくれる椅子をご紹介します。ヘリノックス(Helinox)のグラウンドチェアといいます。

低い 深い 地面に近い

ヘリノックスから出ている様々な折りたたみ椅子の中でも、このグラウンドチェアはとにかく「低い」のが特徴(座面高22cmで同社製品中最も低い)。ちょうどスクワットした時くらいの低さなのですが、身体はほぼ完全にリラックスできます。この「脱力できる低さ」は、私的空間にあるロー・ソファや「人をダメにする系ソファ」で実現できても、屋外ではあまり得られないものです。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

座った感じは、椅子というよりハンモックに深く沈みこんでいる感覚に近い。ずっと座っていられるし、ずっと座っていたい。ちょっと休憩します、ではなく、長時間休憩します、当分動きません。という気分になります。仮に雨が降ってきても、全然構わない。降るのかな? 降るのか。じゃあ、このまま濡れるか。という感じで、そのまま座っていられるし、座っていたい。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

しかし日差しが強いとやはり堪えるので、良い感じの木陰を探したくなります。いつもの自転車散歩に「ヘリノックスで座って気持ち良さそうなところはないかな?」と探す楽しみが加わります。まぁまぁ良い景色で、木陰で、完全に平らでなくとも良いけれど極端に傾斜もしていないところ。そんな場所を探します。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

屋外で視線をこれだけ低く保ったまま長い時間を過ごす機会は他にはまずないため、見えるものも違ってきます。ハトもこちらが気になるのか寄ってきます。足元の草の葉を観察していると、そこにトンボが飛んできて停まったりします。手を伸ばすと、草に触れます。それがテレビを見ているリビングとの大きい違いです。

ヘリノックス・グラウンドチェアから見たハト

軽量で、組み立ても分解も簡単なので、設置場所がちょっと違うな、と思ったら設営地を気軽に変えられるのも良いところです。

構造

この椅子の構造を見てみましょう。座る部分はポリエステルの生地1枚で、両サイドがメッシュになっています。通気性の良さは当然として、個人的にはここにも「内と外」の境界を曖昧にするこの椅子の特徴が現れているようで面白く感じます(心理的にも開放感がある)。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

座面を取ると、フレームはこのような姿をしています。長いポールが背面側、短いポールが足側に来ます。強度的には全く不安を感じないアルミ製フレーム(耐荷重は公称120kg)。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

ポール内部にはバンジーコード(パラコード)が通されていて、組み立てる時は「どの棒をどれに入れるのだろう」と迷うことがありません(テントのポールでよくある仕組み)。このコードは消耗品で、数年経つと(特に保管状態のまま放置していると)伸びてくるようですが、シンプルな構造なので自分で簡単に修理できるそうです。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

組み立てたフレームに座面を取り付けるのも直感的。4つある穴にポールの先端を入れていくだけ。すると座面にほど良いテンションがかかり、それによって絶妙な座り心地の良さが生まれます。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

ひっくり返すとこんな姿をしています。見た目はかなりシンプルですが、フレームのパイプの形状やジョイント部を観察すると、知的財産の塊のように思えます。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

長い時間をかけてこうなったんだろうな、と思わされます。自転車に喩えるならブロンプトンのような完成度、というと通じるでしょうか。

しまう時は、剥がした座面の座るほうを上にして両脇をたたみ、ばらして束ねたポールをこうやってのせます(ポールを束ねている白い紐は出荷時に付属していたゴムで、特に使う必要なし。無駄な手数になるので捨てちゃった)。あとはコロコロと巻いていくだけでOK。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

巻いたあとは付属のポーチに入れます。このポーチのサイズがまた素晴らしく、入れるのに苦労するほど窮屈でもなく、ブカブカでもなく、ある程度雑に巻いても入ってしまうサイズ感です。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

低い視線の面白さ、快適な座り心地、シンプルな構造、組み立てと分解の簡易さ、メンテナンス性の高さ。どれを取っても有名ブランドの製品だけあって「枯れてるな…!」という印象です。本記事時点で、私が今年買って良かったものランキング・堂々第1位。使うたびに「こりゃすごいわ」と感心します。文句なしの星5つ評価。

自転車での運びかた

さてこのヘリノックスのグラウンドチェア、当然自転車で運べます。実測重量はポーチ込みで651g(公称値640g)。リアキャリアがあれば天板に載せても良いし、パニアバッグに入れても良いし、Topeak VersaCageのようなエニーケージに括り付けても良い。ブロンプトンならフロントバッグのフラップの上にポンと置いてゴム紐で縛って雑に運んでも良し。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

嬉しい驚きだったのが、Ortlieb Fork Packの大きいほう(5.8L版)にも収まったこと(フチは2回ロールできます)。ペットボトルの水1本強くらいの重さなので、常に入れておいても全く苦にならないですね。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

内と外の境界が溶けていく

チェアリング、という言葉があることは知っていたのですが、これほど気持ち良いアクティビティだとは思っていませんでした。気持ち良い、というか、冒頭に書いたようにプライベート空間と公的空間、内と外、意識と自然、といった対立しがちな概念がお互いを侵食して崩れていく感覚があり、それが新鮮で個人的にいちばん魅力に思うところです。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

ハイキング中に自然の中で休憩する時は、なんとか座れそうな場所、座れそうな木や石を探して座ることがあり、それはそれでゴツゴツしていてリアル自然感たっぷりで良いのですが、この椅子を外で使う時は「すみません、これ完全にチートで自然界から見るとアウトな物体なんですけどこれはこれで人類が何万年もかけて到達した何かなので広げさせてもらいます」という感じです。

Helinox(ヘリノックス) グラウンドチェア

そして座ったあとは「ふぁぁぁぁぁ…」と、静かな至福に包まれます。と言ってもドーパミンがもたらすような大げさな報酬系快楽ではなく、セロトニン系の穏やかな癒やし。副交感神経優位。低下する心拍、消えていくストレス…

さて、人類の叡智の結晶であるかのような工業製品に身を任せ、自分と世界との境界が溶けていくこの感覚。ここまで書いてふと思ったのですが、この感覚、何かに似ているんじゃないか。

そうか、自転車と少し似ているのか。

静止しているか、移動しているかの違いはあれど、ヘリノックスの椅子に座ることは、そもそもサイクリングとよく似た体験なのかもしれません。

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著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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