こんな機材(もの)に頼らざるを得んのは、
オレが未熟だからだ。
本当の小径乗りにはサスなど要らぬ。
偽物の戦士、nadokazuです。
やろう兄弟。
川の向こうに
登坂も向かい風もない
国をつくろう。
というわけで、本日の駄文はこちら!
走りに定評あり!ミニベロロード「タイレルFX」の強みは、弱みでもあった。
10年来愛用している、うどん県メイドの折り畳み自転車「タイレルFX」。走行性能の高さには定評のあるモデルですが、それを支えるひとつの要因が「剛性感」でしょう。
可動部が多くて剛性的には不利な要素しかないのに、ちっともヤワい感じがありません。ペダルを回した力を、一切損なうこと無く駆動力に変換してくれそうです。
それだけに、乗り心地は「ガッチリしている」という表現がふさわしい固さ。大きなものから小さなものまで、路面のデコボコによる振動がお尻と腰にダイレクトアタックしてきます。
個人的な経験をお話すると、購入して何度か走ったら腰を痛めました。いやマジで。慌ててカーボンシートポストに交換しましたが、乗っていて「ガッチガチだなー」と感じ続けるのは今も変わっていません。
特に長距離を走ると振動を受け止め続けることになるので、いくらカーボンシートポストで対策していようがお構いなしで身体はガタガタになります。
折り畳み自転車とは思えない、タイレルFXの剛性感。それは強みであると同時に、弱みでもあったのです。
フレームが固いのなら、シートポストを柔らかくすればいいじゃない!
10年乗ってもバリバリ現役で、ちっとも不具合なしのタイレルFX。ですが先日、私は円環の理に導かれるまま、上位モデルであるタイレルFSXの売買契約書にサインしてしまいました。
家計は破綻寸前のダメージを受けていますが、「理」には抗いようがありません。つまり、どうしようもないのです。仕方がなかったのです。
▼ 参考記事
それはさておき、タイレルFSXのフロントフォークはカーボンモノコック。しかも限定仕様(ドヤ顔)なので、ステアリングだってエアロ形状の一体型カーボンハンドルです。振動吸収性は、間違いなく向上していると言っていいでしょう。
え?お前みたいな貧脚に分不相応にもほどがある装備だって?仰る通りです…。
フロント周りが、ほぼカーボン製のパーツになる。とはいえFXに乗って感じ続けていた「高すぎる剛性感」は、もはやトラウマ級のネガティブ感情です。自分にとっての優先順位は、「速く走ること」よりも「ラクに走ること」。そこで本稿でご紹介する、サスペンションシートポストの導入に至りました。
社外品!だけど純正オプション扱い!!
KINEKT(キネクト)サスペンションシートポスト。KINEKT JAPANさんのサイトを拝見すると、東京サンエスさんの取り扱いのようですが、自分は車体と同時に純正オプション「サスペンションシートポスト&ステム アップグレードセット」として購入しました。
2023年モデルの仕様表からは消えちゃっているのですが普通に注文可能みたいですし、Amazonなどでも販売されているので普通に入手は可能。いずれにしてもメーカー(しかもアイヴエモーション社!)がオプションパーツとして純正採用するに足るだけの、機能性・信頼性は担保されていると考えられるはずです。
機構は複雑、動作はシンプル。
リンク機構によって縦方向の荷重を横方向に変換して受け止め、ショックを減衰する構造。ダンパーの役割を果たすスプリングは2本あって、そのテの素養が皆無な自分でも考え抜かれた設計だと感じられる複雑さです。
シートとステムの間にU字形状のスプリングを挟んだり、シートポストの中にダンパーを仕込む程度の単純な機構とは一線を画します。
素人からすると上下方向からの入力を横向きのスプリングで受け止めている時点で、もはや理解不能。どこがどうなって、こんな動きになるのでしょう?ごめんね さやかちゃん… わけがわからないよ。
ストロークするのは上下方向だけで、前後や左右に傾くといった妙な挙動は見られません。サドルの動きは、極めて自然です。
またプリロードボルトによる調整幅は大きく、効き方も非常に安定しています。レートの異なる交換用スプリング(ハード/ソフト)が同梱されていますから、好みの固さにセッティングするのは容易でしょう。
自分は初期状態のノーマルスプリングだと柔らかすぎると感じましたが、プリロードボルトで少し固めに調整すれば丁度いい感じになりました。
それと特筆すべきは、やっぱり見た目。ハイパーテクノロジーの急速な発展とともに、あらゆる分野に進出した汎用人間型作業機械の脚部パーツだと言われても無条件に信じてしまいそうなレベルのメカメカしさです。美しいカーブを描く複雑な造形のパーツが組み合わされていて、いくらでも眺めていられます。
で、効果はあるの?
いやもう、これはアリアリのアリ(個人の感想です)。桜のAACR 2023では、尻痛に悩まされることなく160kmコースを極めて快適に走り切れています。タイムだって、フルサイズのロードバイクで参加したときとほとんど同じです。
カーボンシートポストのタイレルFXで富山湾岸サイクリングロードを走ったときは、約100kmの走行で全身ズタボロになっています。
▼ 参考記事
AACRでは約1.5倍の距離を走って、ズタボロ具合は同程度かそれ以下。
これはやはり振動を受け止め続けることによって蓄積するはずのパフォーマンス低下要因を、サスペンションシートポストによる振動減衰でかなりキャンセルできていた、ということに他ならないと考えます。サスペンションを装備したタイレルFSXのポテンシャル、自分が思っていた以上なのかも。
ノーガード戦法で、サスペンションの威力を明らかに!
KINEKTサスペンションシートポストの効果を、桜のAACRで思いっきり体感しました。路面から伝わる振動の減衰によって、尻痛と疲労の蓄積が低減されている!と、断言できます。
なんですが、
「それって、ほぼASSOSのレーパンのおかげなんじゃね?」
という疑念が捨てきれません。
個人的に知りうる限り、最強クラスの臀部防御性能を誇る、ASSOSのレーパン。初めて使ったときに感じた「こんなに長距離走っても尻が痛くならないって、なんて素晴らしいんだー!」という感動は今も忘れられません。無駄に絶大な信頼を置いているだけに「ASSOSのおかげだ」と考えてしまうと、自分の中で反論の余地が無くなります。
そこで!
「普通のサイクルパンツと下着」つまり「尻痛に対して完全ノーガード」という状態で、いつもの道を走ってみることにしました。これなら、比較検証するときの変動要素は皆無。サスペンションシートポストの実力が、ハッキリするでしょう。
向かったのは家から5分のホームコース、鶴見川CR。その名の通り、鶴見川の河川敷に沿って整備されている歩行者・自転車道です。
鶴見川CRの路面は、新羽橋〜新横浜の一部区間を除くと割とデコボコ多め。ミニベロで走るには、特に厳しい状態です。そんな道に尻痛ノーガード状態で突撃するなんて、いくらサスペンションありとはいえ無謀かも。
そもそも、わたくし自転車乗りとしては全面的にへっぽこ&脆弱です。ASSOSじゃないレーパンを使っていた頃は、フルサイズのカーボンロードでも30kmぐらいで尻が音を上げたことすらあります。
それが!
サスペンションシートポスト装備だと、臀部はノーガード状態なのに距離50km以上をノーダメージで走り切れました。タイレルFXのノーマルシートポストでは、レーパンを履いていても腰イタタになるレベルで衝撃を喰らっています。それと比較すれば、もう隔世の感。
念のため、FXで使っているカーボンシートポストでも走ってみましたが、やっぱり身体に伝わる振動には明らかな差を感じます。
サスペンションなしだと、ゴツゴツという路面からの振動がそのまま身体を直撃。ですがサスペンションがあると、伝わる振動がかなりマイルドになってくれます。濁点が半濁点になるぐらいの柔らかさ、とでも言うのでしょうか。鋭角な突き上げの、角が取れちゃう感じです。語彙力皆無ですみません…。
いずれにしても、サスペンションの威力は絶大。人体実験の結果、これは完全に証明されたと言っていいでしょう。
デメリットはあるの?
あります!
なにしろサスペンションシートポストは、複雑な構造の金属製品。ノーマルのシートポストより普通に重いし、カーボンシートポストに比べるとさらに重量差は拡大します。
キッチンスケールに乗せて比べてみると、アリアンテVS+カーボンシートポストで約500グラム。
アリアンテVS+KINEKTサスペンションシートポストだと、約880グラム。
面倒だったので取り外していませんが、サドルは同じアリアンテVSなので条件は揃っている…はず。それで、実に400グラム近い重量差。手で持ってみても、サスペンションシートポストはズッシリ重いです。グラム単位の軽量化に、万札すら飛んでいく自転車機材の世界。この重量は、大きなデメリットであると言わざるを得ません。
また「サスペンション機構の分だけ、シートポストを下げられなくなる」という点は、輪行ゆるポタの民としては看過できません。せっかく折り畳み自転車で節約した輪行自転車のサイズが、装備のせいで大きくなってしまう。しかも重いときていますから、輪行時にポイ投げしたくなる衝動に駆られる可能性大です。
ですが、それでもサスペンションシートポストの絶大な威力を体験してしまうと、もうサス無しでの走行には耐えられそうにありません。人は、楽な方へ楽な方へと、流れてゆくのです…。
まとめ
サスペンションシートポストがあると、疲れ方が違います。走る距離が長くなると、そのぶんだけ顕著。レーパンが不要になるレベルで、快適性が担保されてしまいます。わたくし、もうサスペンションシートポスト無しではいられません。
それに、KINEKTサスペンションシートポストは機構や性能的な面はもちろん、加工や仕上げに至っても素晴らしく丁寧。「さすがタイレルが純正採用するだけあるなぁ」と、納得させられます。
見た目のスッキリさは完全に失われてしまいますが、マッシブでメカメカしい佇まいはスッキリとは別の味わい深さ。わたくし、もちろんそっちも大好物です。
そういえば「シートポスト径が一緒だから、ロードバイクにも転用できるんじゃね?」という浅はかな考えのもと換装を試みましたが、シートポストの突き出し量が全然足りない!
つまり、わたくし短足すぎ!!という悲劇的な現実を目の当たりにすることになりました。サヨナラ!(爆散)